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OPECプラス やはり協調減産目標達成できず…

6月5日WTI価格は73ドル代まで下落している。
主な原因は6月2日のOPECプラス会合で減産継続が決定した事による弱気な需要に対する弱気な観測と米ガソリン在庫の増加でしょう。



この記事でわかること


OPEC加盟国「イラク」の原油市場における立ち位置と原油市場に対する影響力についてわかります。

昨今、イラクはOPECプラス内で割り当てられた「協調減産」の枠を上回るパフォーマンスを見せており、5月も日量5万バレルの増産をしたとの情報があります。

そのため、筆者は今後エネルギー市場・原油市場を分析する上で改めてイラクを注視する必要があると考えたのでまとめます。

イラクの経済状況


イラクの経済は主に原油収入に依存しており、原油は同国のGDPの約60%、政府収入の約90%を占めており、同じOPEC加盟国のUAEとは全く異なる状況と言えます。この様な経済体制のため、「原油生産量を抑える=減収」という構図が容易に確立してしまいます。
また、インフラの老朽化や失業率の高さも深刻な問題となっています。2021年の全体の失業率は約16%・15~24歳の失業率は35%に上るとの情報もあります。
筆者としてはイラクは「今後産業の多角化」が進まない限りは失業率の改善や経済は圧点は難しいのではと思ってしまいます。
更に、イラクは経済発展だけでなく戦後復興の目的として石油収入を最大限確保したいという背景があると考えられます。

イラクの原油市場における立ち位置


イラクは世界第4位の原油埋蔵量を持ち、言わずと知れたOPECの主要メンバーの一つです。また、同国は日量約450万バレルの原油を生産能力を有しており、これは世界の原油供給の約5%に相当します。

最近のイラクの動き


やはりイラクは前述の通り経済状況が厳しく減産維持が困難なのではないかと考えます。
直近では先月11日、同国のアブドウルガニ石油相が「さらなる減産に同意しない」と発言し、翌12日に同氏は発言を「OPECが下す決定を遵守する」と撤回しました。
その矢先に5月も協調減産枠を5万バレル上回るという情報がでました。
また、協調減産で指定された減産枠を遵守しなかったのは今回だけではなく、1〜3月も同様に生産枠を守ことができませんでした。
国内経済の状況と昨今の動向から筆者は今後も生産枠を守るのは難しいのではないかと考えます。

今後の動向予想


4月の初め頃から同国は「過剰生産分を帳消しにする措置を講じる」との情報があるが、5月もその様な様子はなく、増産した。
イラクは2003年の米国主導で行われたイラク戦争以降、内部の宗教対立やテロリズム、政治腐敗など様々な問題に直面しています。シーア派、スンニ派、クルド人の間での権力分配が難航し、これが政府の機能不全を引き起こしています。また、2021年に行われた議会選挙でも政治的不安定さが露呈し、新政府の樹立に時間がかかりました。更にこの様な状態の中で高い失業率であるところ、前政権の「サダム政権のほうが良かった」という意見もあるそうです。同国としては自国の利益を優先したいはずであることから今後も協調減産で決められた生産枠を遵守することは難しいと筆者は考えています。


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