溺愛したりない。(試し読み7)

『遅刻しない。約束する』
    高良くん、昨日はああ言ってくれたけど・・・・・・今日は来てくれるかな・・・・・・。
 朝。学校に向かいながら、高良くんのことを考えていた。
 もし、高良くんが教室にいたら・・・・・・楽しくなりそうだな・・・・・・。
 高良くんが登校してきてくれたら・・・・・・おはようって言ってもいいのかな・・・・・・。
 私は休み時間に話すような友達はいないし、挨拶をする友達さえいないから、そういうのに憧れがあった。
 というか、改めて友達がひとりもいないっておかしいよね・・・・・・。
 地味で内気な性格の私と友達になりたがるような子はいないと思うし、自分から誰かに話しかける勇気なんてないから、この先の高校生活もずっとひとりぼっちかもしれない・・・・・・。
 そう考えると、寂しい気持ちになった。
 友達が欲しいなら、自分から動き出さなきゃダメってわかってるけど・・・・・・。
『お前みたいな奴と仲良くしてくれる物好きな奴はいねーから』
 過去に岩尾くんから言われた言葉を思い出した。
 ずきりと、胸が痛む。
 あの言葉を言われた日は、その通りだなぁって納得して、そんな自分に悲しくなって泣いたんだ。
『ま、まあ、俺は仲良くしてやってもいいけど?』
 岩尾くんはああ言ってくれたけど、意地悪なことをさえるのが目に見えていたから、恐怖でしかなかった。
「たーま」
 廊下を歩いていると、低い声が聞こえてびくりと大きく肩が跳ね上がった。
 きょ、今日も、逃げるのを忘れてたっ・・・・・・岩尾くんのことは考えてたのにっ・・・・・・。
 高良くんのことで、頭がいっぱいになってる・・・・・・。
「お前、何ぼーっとしてんだよ」
 岩尾くんにそう言われて、ドキッとした。
え・・・・・・そ、そんなことないです・・・・・・」
「そんなことあるだろ。なんだよ、何があったか言えよ」
 なぜか不機嫌そうに、眉間にシワを寄せている岩尾くん。
「ほ、本当に何もないですっ・・・・・・」
「嘘つくな」
 た、確かに嘘だけど、岩尾くんに言うようなことじゃないし・・・・・・関係のないことだから。
 なんて言ったら怒られそうだから、言えないけどっ・・・・・・。
「話せよ」
「は、話すほどのことじゃないのでっ・・・・・・」
「うるせーな、話せって言ってんだから話せ。お前のことは把握しておかないと気が済まねーんだよ」
    ど、どうしてっ・・・・・・。
 暴君ぶりを発揮している岩尾くんに、困り果てて一歩後ずさる。
 に、逃げなきゃ・・・・・・でも、今日はいつも以上に不機嫌で、逃がしてもらえそうにないっ・・・・・・。「ーおい」

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