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通訳案内士・プライベートツアーの知られざる面白さ

プライベートツアーのガイドがどのようなものか、ご存じでしょうか?
 
それは、一度に1つの少人数グループに限ってご案内するもので、複数のグループの方々を一緒にするということはありません。主に、ファミリーやシニアカップル、また単独での旅行という方も時々いらっしゃいます。
 
プライベートツアーの良いところは、お客さんの希望にそったツアーを計画できることや、たとえ当日であっても旅程を柔軟に変更することができる、という点にあります。団体ツアーではこうはいきません。
 
中には、とてもユニークなリクエストを受けることもあり、そういう変わったツアーの方が、普通の観光地巡りよりも、記憶に残っているものです。今回は、そのような記憶にのこるツアーを幾つかご紹介します。


都内の中古レコード店をくまなく巡る!


それは、オーストラリアのご夫妻からの要望でした。「東京に3日間ほど滞在して、その間できるだけ多くの時間を、中古レコード探しに充てたい」と言うのです。これは私にとっても、初めてのリクエストでした。
 
調べてみると、東京は世界No.1の中古レコード市場で、マニアの間では有名だそうです。中古レコード屋の数もさることながら、売られているレコードの品質が良いということで、コレクターはまず東京を目指すのだそうです。
 
まず、インターネット調査から始めました。するとあるある、マニアックな店舗が特定の地域に集中していました。それは、西新宿、渋谷宇田川町、お茶の水、下北沢、高円寺、吉祥寺近辺です。
 
店名と住所のリストを作り地図にマッピングして、実際に下見するのですが、これが大変。小さな店が多く、入り口不明のビルの一室みたいなものばかりなのです。恐る恐るスチールの扉を開けると、突然レコードが雑然と並び、クセのあるオヤジが座っている…こんな店ばかりでした。
 
訪日客の方が単独で行っても、行き着くことができないだろうと思います。そういう意味で、ガイドとしての役割はありました。お客さんは、お目当てのレコードを見つけると、スマホで相場をチェックして、購買するかどうかを即断。3日間で20枚ほどお買い上げでしたが、中にはレアものもゲットできたようで、大変満足して帰国されました。

アニメの聖地へ。そこまで行くか!


これも、オーストラリアのご家族からの依頼でした。コロナ禍がやっと落ち着き始めた頃に、娘さんの誕生日にある日本のアニメ聖地を訪れる、という計画です。最近は、アニメ聖地巡りが訪日客にも人気で、江ノ電の鎌倉高校の踏切などは大変なことになっています。
 
場所は、岩手県軽米町と、その近くにある金田一温泉。これで何のアニメかわかりますか?ちなみに私は全く知りませんでした。金田一だから名探偵コナン…ではありません。ここは、ハイキューという、バレーボールアニメの聖地なのです。JUMPショップに行くと、売り場がありますよ。
 
お客さんは、聖地の一つである「おぼない旅館」を予約しようと、旅館にメールまでしたのですが、なかなか通じず、困って頼ってきたのでした。軽米へは、東北新幹線で岩手の二戸駅に行って、そこから車で25キロほど行く大旅行です。付き添いは足代と宿泊代とでかなりの金額になるのですが、何のためらいもなく、全額負担して頂きました。
 
別件があって私は東北巡業のお相手は出来ず、知り合いのガイドさんにお願いしました。彼女は、軽米だけでなく、仙台の体育館(これまた聖地らしい)も調べ、お連れしてくれました。私はというと、東京体育館(ここも聖地)でのプロバレーのチケットを予約して、ご家族と一緒に観戦して楽しみました。主役の娘さんも大喜びで、私も大変うれしかったです。

和解の旅。捕虜収容所で見つけた祖父の写真


最後の話も、オーストラリアのお客さんです。こちらはファミリーで、なんと新潟県直江津にある、捕虜収容所跡に連れて行って欲しいとのこと。調べてみると、確かに収容所跡に小さな平和祈念館が建っています。これは北陸新幹線で上越妙高に行き、在来線に乗換えです。片道2時間半は余裕でかかります。
 
背景は、お客さんの祖父にあたる方が、太平洋戦争時にシンガポールで捕虜となり、日本に移送されて直江津の収容所で過ごされたと。多くの捕虜の方が厳しい生活を強いられ亡くなった中で、祖父の方は戦後に無事帰国されました。ただ、収容所生活の話は生涯されなかったので、亡くなった後、遺品を整理していた時に初めて分かったそうです。そのため、一度家族で訪問することにしたと。
 
祈念館は地元の方が世話をされている、小さな手作り感満載の施設で、壁には多くの資料や写真が飾られていました。そして、訪問時になんとその写真の中に、祖父の姿を発見することができ、一同たいへん感動したのでした。私も全く知りませんでしたが、こうした捕虜収容所が全国各地にあったそうです。悲しい歴史があったのですね。
 
それでも、こうした案内を日本人である私に依頼してくれたことや、祈念館の世話人の方々と熱心に会話しているのを見ると、過去の歴史の清算というか、和解ができていることを有難く思うのでした。プライベートガイドをしていると、こうした新しい発見や、心揺さぶられる体験があります。

まとめ


「プライベートガイドをしていると、思いがけない新しい発見や、感動の瞬間に出会うことがある。」 でした。
 
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