冬期限定ボンボンショコラ
ずいぶん前に読んだのですが、感想を書いたらマジで小市民シリーズが終わってしまうので二の足を踏んでいました。
でも、書かない選択肢はないですから書きます。
小市民シリーズは春、夏、秋、巴里と来て最終章の冬までやってきました。
『冬期限定ボンボンショコラ』は最終章と銘打たれているとおり、おそらく最終巻となるでしょう。
あるいは、巴里の続きで短編が出る可能性もありますが、とりあえず本筋はこれにておしまい、かな。
私は知り合いにおすすめされて2ヶ月足らずで駆け抜けてしまったので、他の小市民シリーズ好きに比べると浅いでしょうが、それでもどこかさみしく思います。
また読み返したい。
冬期限定は現実時間でのひき逃げ事件と、3年前のひき逃げ事件が同時に進行するちょっと変わった構成です。
この2つの事件は発生した場所も内容も同じで、現在の事件を解決する糸口になっているような、なっていないような感じ。
読めば開示されるのであえてここでネタバラシをするつもりはありませんが、思った以上に入り組んでいて米澤穂信って感じでした。
また、冬期限定には2つの事件が同時に進行するギミック以外にもうひとつ、面白い要素があります。
今回のジャンルは安楽椅子探偵ものです。
物語の冒頭で常悟朗が事故に遭ってしまって入院しているので現場を調べたり、関係者に話を聞くことができません。
謎解きの鍵になるのは過去の事件と、お見舞いに来てもすれ違ってしまう小佐内さん。
小佐内さんは常悟朗のお見舞いには来ているようなのですが、常悟朗が眠っているときにしか来れないようで直接話をすることができません。
常悟朗の手元にあるのは、お見舞いの品として置かれているボンボンショコラとオオカミのぬいぐるみ。
これが解決の鍵を握るのですが、それもすべて病床の上でのみ展開されます。
や、車椅子の上のときもあるのですが、まあそれは病床と同義としてもよさそうですかね。
それから、過去の事件についても。
過去の事件は常悟朗の同級生・日坂君がひき逃げに遭ってしまうというもの。
日坂君は事件に首を突っ込まないでほしいと言うけれど、当時の常悟朗は事件の真相を解き明かそうとしてしまいます。
それから反省を経て今の常悟朗に到達しているのですが、これまでのシリーズではその真相は詳細には明かされませんでした。
ただ、常悟朗が小市民を目指さなくてはならなくなった理由がある、ということだけ仄めかし続けていました。
それが最終章で明かされる。
なかなかどうして辛いのですが、これを秘匿したままで小市民シリーズは終われないですね。
これまでのシリーズのとおり、完全にスッキリ最高!な読後でないのもまた良いです。
とはいえ常悟朗と小佐内さんの関係がどんな形であれ続いていくことを願うばかりです。
小佐内さんのいろんな情報はまだ隠れているものも多いので、ぜひ大学生編なんてものがあれば読みたいですね。