恋愛小説 ⑪

それから時は過ぎ3月、僕は無事、高校を卒業した。 
高校を卒業してから、大学に入学するまでの期間は、とてつもなく流動的。
本を読んだり、英語の勉強をしたり、資格の勉強をしたり、運転免許を取りに行ったり、一人暮らしの準備をしたりetc。
とにかく、これまでの学校生活ではあまり体験できないようなことを経験できることも多い。
そんな中、今日は休日。
しかも、父も母も仕事でおそらく夜までは帰ってこないし、兄は数年前、大学進学を機に上京したこともあり、実質1人という有様。でもずっと家に引きこもるのもつまらないため、僕はひとりで散歩にでも出かけようと決めた。
「ちょっくら5キロくらい歩いてこようかな。」
僕はパジャマから、外に出ても恥ずかしくないような服装に着替え、外に出た。
散歩に行く時のお決まりのコースを、音楽を聴きながら歩く。
鼻唄を口ずさみながら歩いていると、
「ガシッ」
突然、後ろから両手を掴まれたような気がした。そして、その直後に腕を引っ張られたのかのようなか猛烈な痛みが僕に走った。
「痛い。ちょ、誰だよ。」
必死に抵抗する僕。
しかし、腕を引っ張られた衝撃で、僕の足元はふらつき、完全に体制を崩した。
倒れ掛けた頭が相手の胸に当たる。それが思ったよりもかなり柔らかい感触を覚えた。
「もしかして、女性?」
しかし、そんなことを考える間も無く、僕は相手の掌で目元を覆われ、一気に視界が塞がれる。
そして、そのまま僕はヘルメットを被らされ、近くに置いてあったバイクに乗らされた。そして、僕の目の前の運転席に相手もまたがった。
「ちょっと、一体何をするんですか?」
訳のわからない状況に僕は憤るしかない。
「まぁ、あと少ししたらわかるから、とりあえずしっかりハンドルに捕まって。」
対して質問をはぐらかす相手。
「だからなんなんですか!。」
「言うこと聞かないと落ちて死ぬよ。」
その言葉に僕は黙って従うしかなかった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?