She's Goneに関するあれこれ
去られた者の悲しみ
ストーリー性がある分かりやすい曲です。
Island Recordsから発表された曲の中で男女の「別れ」をテーマにしたナンバーはCry to Meとこれだけです。
別れから立ち直った男性が愛する人を失ったばかりの女友達を慰めるというややこしい設定のCry to Meとは違い、このナンバーはパートナーに出て行かれてしまった直後の主人公(ボブ)の哀しみをストレートに歌っています。
Who Is She?
何が起きたかのか、具体的ないきさつは一切出てきません。
誰と別れたのか、「彼女」とは誰なのかもナゾです。
曲が作られたタイミングから判断しておそらく当時真剣に付き合っていたCindy Breakspeareのことだと思いますが、ふたりの交際は1981年5月にボブが天国に召されるまで長い間続きました。
そんな訳でふたりの関係とこの歌詞は合っていません。
口論することもあったと言われているCindyとボブはくっついたり、離れたりを繰り返していた様子なので、ロンドンで暮らしていた1977年に起きた「一時的な喧嘩別れ」を扱った曲なのかもしれません。
そのへんに関しては残念ながら現在ネット上で入手できる情報がありません。
推測するしかないので、ボブにこのナンバーを書かせた「別れ」について詮索するのはやめておきます。
別れが生んだ曲の数々
魅力的な女性と出会い、そして彼女と別れ、次の恋愛へと向かうというパターンを繰り返したボブには明らかに「恋愛依存症」的なところがあると思います。
Island Recordsと契約する以前の苦労が多かった時期には愛した女性との「別れ」をテーマにした作品をいくつも残しています。
まずはそんな作品の数々を紹介していきたいと思います。
最初はこれ。
次はこの曲。
こんなのもあります。
こっちはもう少し知られてるかも。
ハッピーなメロディなのに悲しい歌詞です。
別れは人を詩人にするとよく言われますが、ボブも恋愛すればするだけ心が耕され、大事な人を失うことの意味を見つめ直し、ソングライターとしてレベルアップしていったのかもしれません(推測です)。
少年時代との別れ
別れは恋愛だけに限りません。
訳者<ないんまいる>が一番好きな「別れの曲」は突然やってきた少年時代の終わり=幸せとの別れをテーマにしたこれです。
哀しみを叩きつけた感じの弾き語りバージョンもあります。
感じるものがあった方は歌詞も味わってみてください。
母子家庭で育ったボブは12歳の時に母親セデラ(Cedella)に連れられて生まれ故郷ナインマイル(Nine Mile)からジャマイカの首都キングストン(Kingston)のスラム地区トレンチタウン(Trench Town)へと移住しています。
ナインマイルは山の中の田舎町です。
豊かな自然以外これといって何もないのどかな場所です。
ナインマイルについては知りたい方はこちら↓もお読みください。
一方、キングストンは大都会です。
そこは仕事を求めて地方から出てきた大勢の人たちが雨露をしのぐ場所をなんとか確保し、できる仕事ならなんでもやって必死で命を繋ぐ犯罪と隣り合わせのコンクリートのジャングルでした。
トレンチタウンについては過去にも書いていますので↓ご一読ください。
生活環境と人間関係の激変を体験したボブは故郷ナインマイルに間違いなくあった「幸せ」を失いました。その心の痛みを歌ったのがI’m Hurting Insideです。
ゲットーで暮らし、様々な体験を重ねて一時期ホームレスになってしまったりもした↓若き日のボブの心からの叫びです。
矢が刺さった人たち
ボブのレパートリーの中では決して有名なナンバーではありませんが、知ってる人は知っている「隠れた名曲」のひとつです。
誰もが知る有名曲ではなく、この刺さるナンバーを選んでカバーしてる人たちも大勢います。
もちろんレゲエアーティストも取り上げてます。
必殺のコーラスが耳に残るMarciaのバージョンが個人的には一番好きです。
以上、今回は去っていった彼女の謎、別れをテーマにした曲の数々、母親の都合で故郷での幸せな時間を終えるしかなかった少年ボブの心の傷に関してあれこれ書いてみました。それじゃまた~