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治療家がセルフケアのためにしていること・銭湯編

いくら技術が上達しても、絶対にできないことがあります。
それは、自分自身に施術をすること。セラピストの仕事は、相手あってこそ。自分の施術がどんなものか、身をもって知ることはできません。

そしてお客さんに言われるのが「先生はどうやって体に気をつけているんですか?」
この質問を投げかけられると、モゴモゴと口を濁したりしてきました。

よくある例だと、
・知り合いの施術を受ける
・とにかく寝る
・自分でストレッチする
…とまぁ、こんなところでしょうか。

私がしていることのひとつに【銭湯へ行く】があります。今回は、私の経験とお気に入りの銭湯について綴ります。


銭湯の効能はどれほどか

古くから湯治は健康法のひとつです。
日本最古の温泉といえば愛媛県の道後温泉。湧き出るお湯につかって体を温めれば健康になることを、先人は経験的に知っていたのでしょう。

温泉のよくある効能として神経痛、リウマチ、胃腸病、皮膚病などに効果があると言われます。もし、そのような病気がなくってもいわゆる『ととのった!』的な爽快な気分になれるのがいいところです。

私が銭湯に行く理由は、アタマを休めること、体を温めることと筋肉を柔らかくすることの3つです。自宅の浴槽でもいいのですが、やはり大きな湯船につかって肘や膝をのびのびと伸ばしていると体の芯からホカホカとしてきます。

肘や膝といった関節のまわりには血管が表面にあるからです。わきの下や足のつけ根(鼡径部)なども温めると血液循環がよくなります。

そして、血液がスムーズに流れることによって全身の細胞に酸素と栄養が行きわたるため、新陳代謝が盛んになります。腕や肩など日頃よく使っているところは浴槽のなかで動かして、筋肉に十分な血液が流れるようにしています。

どれくらいの頻度で銭湯に行くのか

東京都の公衆浴場であれば1回520円で入ることができます。(2024年2月時点)

自宅にお風呂もあるので、さすがに毎日とはいきません。できれば週1回入れるといいのですが、いつものルートからちょっと寄り道をして銭湯に行くのであれば月に2回がいいところでしょう。

今度の金曜日になったら銭湯に行こう!と目標を決めることで、仕事に張り合いもできます。それはお湯につかるという直接的でない、精神的に前向きになれる効果も与えてくれます。

そういう意味でも週1回または2週間に1回は銭湯に行きたいところです。

そしていつ行くのか?を考えたときに、私が土日に銭湯に行くことはほとんどありません。理由は単純で混んでいるから。
銭湯は浮世の憂さを忘れるために出かける場所なので、空いている平日の夕方(15時~18時)が狙い目です。

銭湯でどんなふうに過ごすのか

1回行くと約1時間。
体質的にのぼせてしまうので、サウナは必要ありません。

サッと体を洗ったら湯船につかってボーっとします。
なにも考えず、立ち上る湯気を眺めています。または、炭酸泉のある銭湯であればプクプクと湧いてくる泡を眺めています。
一定のリズムで不規則な動きをする湯気や泡は、アタマのなかを空っぽにしてくれます。

熱い浴槽につかっているときは意識してふくらはぎを動かします。
手で揉むと疲れるので(笑)足首をうごかしたり、となりに人がいなければバタ足のように足全体を動かします。

そうすることで筋ポンプ作用が働いて、さらに血行を良くしてくれます。これがセルフケアを目的に私が銭湯に行く理由の一つ、自宅の風呂でもできるのでお勧めです!

浴槽につかって体が温まったら、こんどは水風呂に入ります。

まずは膝下まで、次に腰まで水につかり、最後に気合いを入れて鳩尾まで体を沈めます。この間、だいたい1回2分くらい。
肺や心臓を急に冷やすと血圧が上がりやすく負担が大きいので、冷やすのは鳩尾までで十分です。

そして、熱い(またはぬるい)浴槽と冷たい水風呂を交互に3セット、入ります。温 >水 >熱 >水 >熱 の順です。

そして最後に皮膚を引き締めるためにぬるいかちょっと冷たいくらいのシャワーを浴びます。アタマの先から体の前後ろ、足先までをひと通り流して終了です。
…とここまで書いて、もうひとつ治療家特有のしていることがありました。

それは体を観察すること。湯船につかってボーッと壁を眺めていると、目の前を横切る人の姿が見えます。

あ、ちょっと猫背だなとか、左肩が下がってるなとか、外科手術の痕ってこんな感じなんだ、など裸だからこそ見えてくるものがあります。これも私が銭湯に行く理由の2つ目。

背中の丸め具合いや膝の曲がり方、足の運びを観察するのは、もはや治療家の宿命です。もちろん、ジロジロ…と凝視してはいけません。一瞬で目に映る姿かたちの特徴を捉えます。

そして、あ!この人はここの筋肉を緩めるといいんじゃないか、とか。
この姿勢になるのは、あの骨がこんなふうに捻じれているかじゃないか…などと考えます。ついつい仕事スイッチが入ってしまうのですが、それもまた治療家のサガということで。

マイ・フェイバリット銭湯

ここからは、私の好きな銭湯をいくつか記しておきます。

基本的に交互浴を愛してやまないので、どれも水風呂のある銭湯です。
お近くの方や東京に来て銭湯に入りたいという場合は、ぜひ足を運んでみてください!

その壱)第三玉の湯(新宿区・神楽坂)
水風呂はもちろん、ジェットバスに電気風呂、炭酸泉まであるのがお勧めです。炭酸がプクプクと湧き上がってくるのを眺めている時間は、日常を忘れさせてくれます。

その弐)宮下湯(豊島区・巣鴨)
なにより嬉しいのは【ヒートポンプ浴槽】があること。
最初はそれ何?と思ったのですが、説明書きを読んでみると…

水質の変化がなく肌に優しいソフトな湯感が特徴です。
時にぬるく感じられますが通常の浴槽より実際には温度を高めにしてありますから、身体の芯から温まり… と書いてあります。

http://www.heiwayu.net/gallery.php

たしかに、ほかの銭湯に比べても短時間で体の芯まで温まるのが体感できました。これはとても嬉しい!!

その参)松の湯(新宿区・落合)
松の湯という名称の銭湯は東京都下に10箇所あります。

そのうち、こちらは2023年11月26日にリニューアルオープンしました。
そして何より推したいのが、銭湯建築で有名な今井健太郎建築設計事務所の手によるもの!!

今井氏の設計は銭湯ごとにコンセプトが明確になっており、松の湯のテーマは「無」…いいじゃないですか!

間接照明を使っているので浴場内はやや暗め。そのため湯気の動きまでくっきりと目に映ります。ペンキ絵はなく、白い湯気と濃紺のタイル壁のコントラストが疲れた目を休めてくれます。

浴槽は手前から水風呂、中温の浅い浴槽、中温の深い浴槽、露天風呂の熱湯と4つを楽しむことができます。とくに中温の深い浴槽につかっている時間は泳いでいるように体が浮かんで楽しい限りです。

今井氏が関わっている銭湯では、万年湯(新宿区)、巣鴨湯(豊島区)もお気に入りです。

おまけ)小杉湯(杉並区・高円寺)
私があれこれ記すまでもなく有名な小杉湯。東京で有名な銭湯を2つ挙げるとしたら、小杉湯と改良湯ではないでしょうか。

小杉湯をおまけにした理由は、いつ行っても混んでいるから。
となりの人との距離が近いため、気を遣ってしまう私には向いていないのだと思います。治療院から近いのにね、ちょっと残念です。

ちなみに、改良湯も今井氏の手によるものです。

さて、最後まで読んだあなたはすっかり【ととのう】準備ができたはず。
平日でも週末でも1時間くらい余白の時間ができたら、ぜひ銭湯に足を運んでみませんか。

physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。