吐くことを覚えてしまった #9 【摂食障害のお話】
吐くことを覚えたのはいつだろう。
高校生の頃だ。
学校帰りの図書館で、摂食障害の本を見つけた。
見てはいけないような気がして
でも気になるので恐る恐る手に取ったのを覚えている。
誰にも見られないよう
こっこりとその場でページをめくる。
ダイエットをきっかけに
食欲が抑えきれなくなった人の体験談などだ。
まるで私のことだった。
食欲のコントロールができなくなる人が
自分以外にもいることを知った。
それが病気だと知って
少しだけ安心した。
だが、それと引き換えに
食べた物を吐き出す人がいることを知ってしまった。
こいつは厄介だった。
食べたことをなかったことにすることで
病は治りにくくなるという。
後に、安易に試してしまったことを悔やむこととなる。
パンは吐きやすいとか。
水を沢山飲むとか。
菓子パンが好きだった。
ふわふわとやわらかくて甘くて
幸せな気分になる。
美味しくて一瞬でたいらげてしまう。
その後すぐに
なかったことにする。
代償行為というそうだ。
吸収されるより前に!と
急ぐ。
そんな類の多くのことは、本から学んで実践した。
その行為を繰り返してやると、
指に吐きダコというのができるらしい。
ただでさえ、憎き悪習慣に加えて、
吐きだこまで出来たら…
想像しただけで吐きそうだ。
そうならないように
指ににテッシュを巻きつけて工夫した。
そのティッシュが喉につまりそうになって
死ぬかと思ったことがあるので、おすすめは出来ないが…。
う蝕になりやすいと言うので
よく歯を磨いた。
おかげで嘔吐によって
う蝕が増えることもなかった。
だが、その頃の写真に写る私は
痩せ型ではあったが顔は浮腫んで
目はうつろだった。
これは高校生の頃の話だ。
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