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田舎暮らし、だろうか
信州上田に住むようになって、
山が間近にある生活になった。
これが思いのほか心地良い。
山のある景色を眺めることで、
こんなに安らぎを得られるとは知らなかった。
実家は埼玉県の荒川沿いの市だし、
社会人になってからは東京で生活していたので
山を見るには天気の良い日に
遥か遠くの富士山を眺めるぐらいしかなかった。
それぐらい、平坦な土地に暮らしていた。
それが、上田は盆地なので、360度、山。
しかも土地の起伏が激しく坂道ばかり。
自宅も小さな山の麓なので、
ちょっと歩けばすぐに入山できる。
今まではちょっと歩けば
コンビニに入れる、だったのに。
*
街育ちのわたしが、
いきなり信州の山間に越してきて
暮らし始めたわけだが、
抵抗とか違和感とか疎外感とか
そういう負のものを抱えることがまるでなく
スポンジに水が吸われるように
この土地に自然に吸い込まれてきたことには、
何か理由があるのか、考えてみた。
*
まずは、環境が変わることが好きだということ。
その環境に合わせてしなやかに生きたい。
それに、新しい環境には新しい発見がある。
そうして経験値を積むことが、楽しい。
それから、上田に越してはきたが、
田舎で暮らしているという実感がない。
確かに歩いてコンビニに行くには遠いが、
無いわけではないし、少し車を走らせれば
スタバもイオンもブックカフェもある。
ネットでなんでも買えるし届くから、
不足感がない。
それにデザインの仕事をいただくクライアントが
ほとんど東京からなので、
あちらの空気もなんとなく伝わってくる。
*
上田に初めてきたのは、15年ほど前のことだ。
まだ恋人同士だった時の夫が、
家族に紹介したいからと正月に連れられてきた。
新幹線を降りて、
上田駅の改札を出た時のことはよく覚えている。
空気が冷たくて清々しく
山が間近ある景色にびっくりし、
ああ、ここに住んでもいいなあと、自然に思った。
まだ付き合いたてで、
結婚するかどうかも分からないというのに。
(けっきょく結婚したし、住むことになるのだが)
長野県に根付いているスーパー
「ツルヤ」に初めて入って、
その広さと綺麗さにまたもやびっくりした。
埼玉や東京にはない類いのスーパーなのだ。
今ではしょっちゅう利用していて、
飽きることなく、ツルヤは大好きだ。
*
上田は都心に比べれば田舎で、
いわゆる「田舎暮らし」的な
畑で採れた新鮮な野菜を食べられるし、
ちょっと散歩、にしては登山に近い。
イノシシもタヌキもうろついている。
でも、ネット社会のおかげで、
いい具合にどことも繋がっている。
今のわたしにとっては、
ちょうどいい田舎での暮らしだ。