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「街の子」 竹久夢二 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

ジャッキイ・クウガンの映画があるらしい。

春太郎はお姉さんと共に見にゆきます。

母と死に別れて、さまようが、最後には実の父に出会う話。

その映画を真似して自分の人生を空想する春太郎。

悲劇と感動を妄想で体得してみるけど、親はお仕事行っているんだっけ!

ふと気づくともう校舎の前だった。

(感想)

物語は、スラスラと読めますし、特に何も考えないで、ああ、親子の愛情はいいなあ、というすなおな感想をもつお話だと思います。

なので、以下はちょっと蛇足気味なところがありますが、どうぞ知的好奇心を満たすと思って読んでください。

最近の大人は子どもに油断しがちで、「子供に戦争のことなんかわかるか!」なども言ったりしますが、(省略)、(ぼくたち子どもは)大人の話を聞いていれば戦争の状況も大人の正体もわかりました。

最後の講義 映画とはフィロソフィー 大林宣彦 主婦之友社

映画は世間の疑似体験ですよね。日本の大人は、子供を子供のままにしておこうとしますが、実際の子供たちは背伸びをするものです。子どもは大人たちの喋るのを聞いている。そこから何かを得ようとします。また、さまざまなコンテンツからもそうでしょう。春太郎は、ジャッキー・クーガンの映画から何を得たのか?

そもそも、ジャッキー・クーガンは、チャップリンの「キッド」という代表作の一つでブレイクした子役です。その映画は、子どもへの大人による愛情が賛美されたものでした。

作中で、そのようなシンボルとして俳優は登場したのかもしれない。

本編において、春太郎が映画に行きたいと言ったとき、お姉ちゃんと行きなさい、と親は答えます。なんだか、守ってるよ、という優しさを感じるのです。

そして、春太郎の見たジャッキーの映画も親への信頼を増すお話です。天涯孤独の主人公が、愛情深く実の父親に受け入れられるのですから。

また最初に引用させていただいた映画監督の大林氏は、小さいころ、おばあちゃんがいつもお菓子をくれてうれしかった、のですが、ある日、おばあちゃんに会いにいくと、さっとお菓子の入れ物を隠したのだ。自分が食べるお菓子と孫にやるお菓子に格差があった……。誰もが、成長していく中で、人のがっかりする面を見るでしょう。

この短編には、幸せだけがある、親に完璧な信頼がある子ども時代のお話です。とても、朗らかな気持ちになれますよ!!

毎日のお仕事や学業でストレスありますよね。そんなとき、とことん幸せを語るこの短編を読むのはいいかもしれません。あなたが、親を好きならば、ですが。

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