リアクティベーション®️と骨格基準の身体操作
リアクティベーション®️とは
リアクティベーションとは"再活性化"を意味します。現代の私たちの體は、人体工学的視点から考えると過剰とも思える負荷がかかる運動や、化学物質が多く含まれる食事、より複雑怪奇になってしまったストレスフルな社会生活で被るメンタル不調とホルモンバランス異常など、外的な環境要因によって不活化しています。
人間にはホメオスタシス(恒常性)が備わっており、神経系、内分泌系、免疫系が作用することで内的および外的の環境因子の変化にかかわらず體を一定の状態に維持しています。さらにアロスタシス(動的適応能)という、外的刺激を与えることによって體が適応して体力を向上させていく能力も備わっています。これが運動強化ということになります。
本来は、ホメオスタシスで安定させアロスタシスで強化していくというバランスが人を強く逞しくしていくわけですが、前述の通り現代社会はあまりにも外的要因が悪化しているのでホメオスタシスだけでは安定した體を維持できなくなっていると考えています。その結果、不安定な體で運動強化するようなプロサッカー選手やそれに準じた育成年代の子どもたちは知らず知らずのうちに生体内における不調の芽が多くなっているように感じています。
たとえば、怪我の低年齢化はプレー強度が高くなっていることが原因ではなく、プレー頻度の増加とそれに伴って増やさなければならいケアや休息が不足していることと、栄養改善をより重視していく必要性が認知されていないからだと確信しています。怪我の直接的な原因は我々が『筋拘縮』と呼んでいる硬く縮こまって機能しない不活性化した筋組織の増加と蓄積ですが、これがなぜ増えていくのかは別の記事で詳細に触れているのでそちらをご高覧ください。
こうした不活性化している筋組織が蓄積していくと血流が阻害されホメオスタシスの機能不全を引き起こします。さらに、最も重要となる"骨格の構造"を歪めることになり、骨が削れたり関節自体に不具合を生じさせるなどの器質異常をも引き起こすことになります。ですから、この不活性化した筋拘縮を解除し、筋肉を再び活性化させることで怪我や不調を未然に防ぐことができると考えて提唱しているのが『リアクティベーション®️』です。
リアクティベーションには、筋拘縮を自分で解除する『セルフ筋肉チューニング』や、骨格の機能的利点にフォーカスした身体操作によって省エネで、かつより高いアイジリティを発揮させる骨体操をベースとしたエクソサイズなどがあります。また、ワラーチランニング、裸足トレーニング、一本歯下駄トレーニングなどサッカー選手のパフォーマンス向上に劇的な効果が期待できる「足の再生」を目的としたトレーニングも含まれています。
硬く縮こまった筋肉を再活性化させるセルフ筋肉チューニングは、全身の筋肉にそれぞれアプローチする方法があります。代表的なものに大腰筋のセルフ筋肉チューニングがあります。腸腰筋という筋肉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは大腰筋と腸骨筋を合わせた呼称です。大腰筋は股関節屈筋群の中心にあるインナーマッスルですが、この筋肉に筋拘縮が蓄積していくと姿勢が前傾になり慢性腰痛や椎間板ヘルニアの原因となります。サッカー選手は腰痛持ちが多いですが、日頃から大腰筋のケアを習慣化しておくべきでしょう。
人体のテンセグリティ構造
テンセグリティをご存知ですか?サッカー選手やトレーナー諸氏には馴染みが薄い話かもしれませんが、人体工学を考える上では多くの着想やヒントを与えてくれる概念なので簡単に触れておきます。テンセグリティ(Tensegrity)とは、バックミンスター・フラーによって提唱された概念で、テンション(Tension:張力)と インテグリティ(Integrity:総合)とを合成した造語です。テンセグリティは構造システムが破綻しない範囲で、部材を極限まで減らしていったときの最適形状の一種とも考えられています。工学の世界でもまだ詳細な原理が解明されていない概念ですが、全身の連動性や筋膜の機能などを考えると、必要なものしか備わっていない人体がテンセグリティ構造になっているという仮説は的を得ていると考えています。百聞は一見に如かずなので下記の画像をご覧ください。
左:LEGOブロックはなぜ支柱がないのに浮き上がるのか?
右:人体模型はなぜ棒とゴムで立てるのか?
筋肉が鎖(ゴム)で骨がブロック(棒)です。あるべき骨格をあるべき筋肉の張力でバランスしているからブロックは浮き上がるし、棒の人体模型が立つのです。もし、筋肉の硬さによって張力が変われば、バランスを取るために骨格が歪みます。骨格が歪めばさらに筋肉は硬く縮こまります。これこそが怪我やパフォーマンスの低下の原因であり、どちらか一方を解決すれば良いという話ではありません。リアクティベーション®️では、筋肉と骨の両面からアプローチすることで崩れてしまった人体のテンセグリティ構造を再生していきます。この時に障害となるのが筋拘縮の異常な蓄積です。つまり硬くなり過ぎた質の悪い筋肉です。
昔の人(江戸人あたりまで)は、機能性が高くなり過ぎた靴を筆頭とする人工的補助が少なく、自転車もなく徒歩で移動し、畳の上で生活していました。様々な所作が人間にとって極めて合理的だったので骨格の歪みが少なく多少の筋拘縮も自然に解除できていたのでしょう。食も質素で過剰な化学物質がなかったので筋肉の質も良好だったと思われます。
それに引き換え現代は、筋肉の異常な硬さと簡単には矯正できな骨格の歪みに悩まされている人の多いこと…。サッカー選手はさらに過酷なトレーニングを積み重ねていますから、怪我を繰り返しているような選手はテンセグリティ構造の再生に本腰を入れないと悪循環から抜けられないという現実を目の当たりにすることになります。
土台となる足の再生
サッカー選手のコンディショニングをサポートしていく上で私たちが一つの大きなテーマに掲げているのが「土台となる足の再生」です。なぜ足からなのか?人体を構造物と捉えると直立二足歩行を可能にしているのが土台となる足の機能性です。一つの足に26本ある骨と3本(4本)のアーチ。この複雑な構造が人体の重心を保ちどんなに太った人でさえも普通に二足歩行できる機能を担保しています。(*体重200kgの人を高層マンションに例えると…建造物なら倒壊しそうです)
しかし、この土台がプレー経年と共に徐々に崩れていくと様々な代償行為が常態化することになります。つまり人体のテンセグリティが崩壊に近づくというイメージですね。
サッカーは足関節(足首)に最も負担のかかるスポーツです。これを言うと驚かれますが、一回のキック自体が打撲と同じですから、これを数千回、数万回と繰り返すことで足首周りの筋肉に筋拘縮が蓄積し可動域はどんどん狭くなっていくのは当然です。さらに、人はそもそも高頻度の加減速を行う動物ではないですから、そうしたステップワークも負荷として蓄積していきます。この結果として足部の血流は滞り老廃物や炎症物質が蓄積していきます。もう一つの問題点は、足を極度に締め付けるスパイクを履いてのプレーです。足趾が自由に動かないスパイクでプレーしていれば足は縮こまっていき扁平足になり歪んでいきます。まだ20代前半の若さでも足の甲や足首がボテっと浮腫んでいる選手は決して少なくありません。浮腫をただ浮腫んでいるだけと軽くみている選手がほとんどのようですが、これこそ老廃物や炎症物質を排出できてない不活性化の象徴のようなものですです。足底筋膜炎、中足骨骨折、距骨や踵骨にできる骨棘などはまさにこれらの影響と考えるべきでしょう。
崩れた足を再生するためには、セルフ筋肉チューニングとトーガ(TOE−GA)など足趾を動かすようなエクソサイズを習慣化することです。即効性はないので一朝一夕では叶いませんが、日々10分程度のリアクティベーションを習慣化していけば3ヶ月程度で足の形が変わってきます。
こうしたリアクティベーションの裏技が、当社が開発した『Growith 有機ゲルマニウムバーム』を膝下全体に擦り込み軽くマッサージして足を温めてから実施するというものです。このバームは天然成分のみで調合生成された逸品に、稀少元素の有機ゲルマニウム(アサイゲルマニウム)を微添した世界唯一の自信作です。バームを硬く縮こまった筋肉全体に擦り込み経皮吸収させることで、エネルギー代謝を促進します。リアクティベーションの効果が上がるのは副交感神経が優位な状態にある時です。バームはリラクゼーション効果も期待できますから、本当に相性が抜群なのでぜひ一度お試しください。
怪我予防だけではなくパフォーマンス向上という観点でも、直立二足歩行を可能にする精緻な足を再活性化し土台を取り戻すことはとても重要だと考えています。足の重心は"足心(そくしん)"と言い、中趾から5cmほど中心にあります。足心に重心をおき、足趾をしっかり動かしてスパイクのスタッドに頼らない自然のグリップを使えるようになると、筋力に頼らず骨の構造利点を活かした身体操作によってアジリティが驚くほど高くなるのです。足心の重心を身につけるために推奨しているのが、ワラーチランニングや裸足トレーニングです。一本歯下駄トレーニングを取り入れてみるのも良いでしょう。日本のサッカー選手は裸足を禁忌とされているようですが、ブラジルの子どもたちはいまでも裸足でサッカーをしています(笑)
とは言え、いきなり裸足はハードルが高いでしょうから、まずはワラーチから始めてみるのはいかがでしょうか。まだ私の周りだけでしょうが、徐々にサッカー選手の間でワラーチが広まり始めました。最初は1kmのスロージョグから。足裏や鼻緒の部分に痛みがあれば、それは接地部位に問題があったり、足趾が使えていないということになります。3kmのランニングができるようになればそれを継続すれば良いと思います。拇趾球と小趾球での接地や足心への重心が体感できるようになってくるはずです。ワラーチランニングに慣れてくると開放感と共に足の感覚が蘇ってくるという感想をもらいます。
リアクティベーションのエクソサイズやトレーニングは多岐に渡るのでMTR Method Lab™️の公式Instagramで紹介していきます。足の再生については最後に裸足トレーニングと脱力について触れておきます。リアクティベーションの実践で意識しているのは"脱力"です。力を抜く技術の習得は、特に競技志向でのプレーが長い選手にとっては難しいようです。なぜならプレー経年で筋拘縮が蓄積している體では脱力ができないからです。トレーナー諸氏が選手たちに「力を抜いてプレーしろ」と指導しても、物理的に脱力できないのが筋拘縮の蓄積量が閾値を超えた選手たちの體なのです。だから、リアクティベーションではセルフ筋肉チューニングで問題のある部位の筋拘縮を解除したり、リラックスした状態でのエクソサイズで表層の筋拘縮を緩めていきます。
裸足トレーニングでは、力が入ったままの状態では衝撃が強すぎて足の裏の痛みが尋常ではありません。いかに脱力して衝撃を吸収するかを身をもって体感していきます。裸足で階段の1段から2段程度の高さをジャンプして飛び乗ったり降りたりを繰り返します。その時に意識すべきは着地音です。音がしないように着地するためには膝関節を中心に體全体の脱力を意識します。筋拘縮の解除と共に、脱力する動作を覚えるという二段構えがリアクティベーションの本質ということになります。
この膝抜きからのボールキャッチを実践してみてください。この時の注意点としては、腕でボールを追わず、膝関節の脱力を利用して屈曲しボールに追いつくということです。太腿が硬い、臀部が硬い、腿裏が硬い、内転筋が硬い、もちろん膝裏が硬いなどの選手にとってはなかなか難しいエクソサイズになります。見た目ほど簡単ではないと思います(笑)日々のトレーニングのウォーミングアップに数回やってみるのも怪我予防には効果があるかもしれません。
骨盤コントロールと股関節
土台となる足の再生が順調に進んでるようでしたら、次は膝を通り越して骨盤に目を向けてください。骨盤は上半身と下半身をつなぐ重要なポイントです。「最近のサッカー選手は骨盤が動かない。背骨も動かない。肋骨なんてもっての他、動くわけない。」これが率直な感想です。よく聞く話では骨盤の前傾や後傾が問題となりますが、ことの本質は前傾や後傾ではなく前後に動かすことができない固定されている状態です。骨盤コントロールとは、あらゆる動作においてそれに見合うよう合理的に前後傾させることです。
骨盤が固まる原因の一例です。(これだけではありません)
・サッカーをプレーする時の歪んだフォーム(外重心)
・捻挫で足首が機能不全(可動域制限)になって重心線がズレる。
・間違ったウェイトトレーニング
・怪我からの回復時の負荷を誤ったリハビリ
・育成年代からの日々のケア不足
骨盤が前後に動かない人の特徴として、寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)と仙骨のつなぎめとなる仙腸関節が全く動きません。1mmから3mmほど僅かに動くと言われている仙腸関節が動かない人は股関節の機能を最大限発揮できないという弱点を抱えていることになります。最高峰のアスリートの股関節屈曲をご覧ください。仙腸関節(仙骨)を活性化させるエクササイズを実践すれば徐々に骨盤がコントロールできるようになってきます。おじぎ股関節体操やジャックナイフストレッチを併用してハムストリングが十分に使えるようになったら、日頃からメッシ選手のように「股関節を折り畳む」という所作を身につけてください。トレーニングではワイドスクワットや四股立ちなど股関節屈曲からの出力を練習すると良いと思います。
そして、骨盤コントロールができないということは、そこから連なる最高の機能美を誇る背骨が使えないということです。もう一度、人体をLEGOブロックのテンセグリティの構造物と捉えてみてください。骨が支柱で筋肉が鎖。一方を蔑ろにしてそこばかり鍛えているとどうなるかという話なのです。「どうしても筋肉トレーニングしたいなら、骨エクササイズもセットでやるべし」のが先に述べたテンセグリティの道理です。そして、骨はただの柱ではなく様々な機能がそなわっています。そこには梃子の原理も備わっている神の領域を思わせる仕組みが隠されています。
背骨を操る異次元のパフォーマンス
背骨(脊椎)は尾椎ー仙椎ー腰椎ー胸椎ー頸椎と連なる重心線です。背骨が機能通りに動かない選手は、上半身と下半身の連動性が低いので負荷がかかる時に様々な筋肉の代償行為でプレーを続けている可能性が高いです。立位や歩行でも必要以上に負荷がかかっています。これを続けていけば重心線の崩れがテンションのバランスを崩壊させて大怪我につながるという原理です。テンションのバランスが崩れれば当然のように筋拘縮が蓄積していきますから、怪我の原因が一向に減っていかないというジレンマに陥ります。私たちがサッカー選手のフォルムを見ればどこに問題があるかだいたいわかってしまうのは、人体をテンセグリティの構造物として捉えているからなのです。
一方、テンセグリティ構造が機能している體はどれだけの力が発揮されるのか?を考えてみましょう。大型契約を締結し今シーズンからメジャーリーグへ活躍の場を移すロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手が参考にしたという有名な画像です。
特別に何か鍛えてわけでもない女性が米俵を担ぐ。筋力に頼っていないのは一目瞭然ですが、おそらく筋肉の質が良く、足を土台とした骨格構造がしっかりと整っているから重心線がブレていないのでしょう。「最小限の力で最大限の効果を発揮する」これこそが人体がテンセグリティ構造であろう所以です。この画像にヒントを得た山本由伸投手は、ウェイトトレーニングをせずに日頃から骨格構造に則った身体操作性を高めるエクササイズを実践しているのは有名な話です。身長が178cmというのは投手としては決して恵まれた体型ではないですが、球速がMaxで157km、怪我が少ない逞しくしなやかな體をつくり上げました。
このローリングブリッジは機能美としても素晴らしいので多くのアスリートに参考にしてもらいたいと思います。肩甲骨や肋骨も巧みに動いています。左右差もなく體のしなり具合が身体美とも表現すべき素晴らしい仕上がりですね。筋拘縮が蓄積していて怪我なしでシーズン通してプレーできないようなサッカー選手は骨格の歪みもあると思います。いきなり高難易度のローリングブリッジをやるとそれこそ怪我につながります。まずは足と足関節(足首の再生から始めてみてください。最後に、毎日実践してほしいリアクティベーションを載せておきますのでご参考まで。
脱力の極めつけは肩と腕
リアクティベーション®️のKeywordの一つに「脱力」があります。全身が脱力したニュートラルの状態を担保することが0%から100%の最大出力を生み出すわけですから、自然な状態でいるはずなのにどこかに力が入っているとパフォーマンスは半値八掛けになりかねません(笑)
「肩に力が入る」「肩肘を張る」⇔「肩の力を抜く」
全身の強張りや脱力を表現する象徴的な言葉では「肩」が使われます。四つ這いの赤ちゃんが1歳になると立ち上がります。徐々に手を使うようになるので肩関節の役割が増えますが、当然のように機能性も高まっていきます。この肩関節と密接に関わっているのが胸郭です。上半身だけを鍛えるようなウェイトトレーニングをする場合は特に注意が必要です。発達させ過ぎた大胸筋の持ち主はえてして胸郭が狭く縮こまっています。筋拘縮が蓄積して歪みを生んでいるのです。肩甲骨が肋骨に張り付いて動かず、いつも肩に力が入っているような人は胸郭の動き悪いのは構造的に容易に想像がつきます。
・肩甲骨と肋骨が張り付いて動かない。
・鎖骨と上腕骨が連動しない。
・肋骨が上下に動かないので呼吸が浅くなる。
メッシ選手やネイマール選手はどうでしょうか?肩に力が入っていますか?肩が落ちてやや猫背です。肉体的に逞しいと言われるハーランド選手もご覧の通りです。ゴールパフォーマンスで坐禅を組んだりしていましたから、身体操作の極意を知っているのかもしれません。肩を怒らせて胸を張るというのが本当に良い姿勢なのか疑問が湧いてきますよね。