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増え続ける不登校、「本当の声」を知っていますか?――学校に行かない子どもたちが語る“本音”と希望のストーリー
――2025年2月時点の最新調査から見えてきた声とは?
はじめに:現状と調査概要
文部科学省の最新調査(2022年度)によると、不登校状態にある小中学生は34万6482人にのぼり、過去最多を更新しました。年々増加し続けるなか、SNSや匿名掲示板、さらにはメディアのインタビュー等で、不登校当事者の子どもたち自身によるリアルな声が数多く発信されています。
本調査では、Twitter上のハッシュタグ「#学校ムリかも」を含むSNS投稿、不登校経験者の発信、不登校児を持つ親の相談掲示板、当事者インタビュー記事などを幅広く調べました。そのうえで、子どもたちが胸の内に秘めている「本音」を、以下の4つの視点でまとめています。
学校への思い
(本当は学校に行きたいのか? 行きたくないのか? どんな学校なら通いたいと思うのか?)親や社会への本音
(親や大人に理解してほしいこと、普段言えずにいる気持ち)学び方の希望
(オンライン学習やフリースクールなど、どのような形で学びたいと感じているか)将来への不安
(進学や就職、社会との関わりについてどんな不安や考えを抱えているか)
とくに、親御さんが「えっ、そんな気持ちを持っていたの?」と驚くような意見や、普段はあまり表に出にくい切実な本音に焦点を当てました。実際の投稿やインタビューの抜粋を交えながら、子どもたちの声をまるごとお伝えしていきます。
1. 学校への思い:「行きたいけど行けない」の裏にある本心
不登校の子どもたちが抱える学校への思いは、本当に十人十色。ただ、今回の調査から、いくつか共通したパターンが浮かび上がってきました。
「本当は行きたい」の建前と「行きたくない」の本音
一見すると「行きたいけど行けない」と語っている子どもも、心の奥では「行きたくない」と思っている場合が意外と多いようです。
ある小児科医のブログによれば、子どもたちは「学校は行くもの」という強いプレッシャーから、とりあえず“行きたい”と言うものの、実際には行きたくないはっきりした理由があるケースがあるのだとか。
「小学2年生の時点で明確に行きたくない気持ちがあった」という当事者の回想も出ています。
無理やり登校を続けさせられていた子の中には「毎日死にたい思いがあった」と語る子もおり、“行かなければならない”という状況自体が子どもを追い詰めてしまう実態が見え隠れしています。
なぜ「行きたくない」?──子どもたちが感じる学校の苦痛
「学校に行きたくない理由」は本当にさまざまですが、多くの子の場合はいじめ、人間関係、学校環境への強いストレスが背景にあります。
いじめやスクールカーストの悩み
「教室で笑い声がすると、全部自分の悪口に聞こえる」という投稿がSNS上に多く寄せられました。実際、「いじめられるのは陰キャ(陰気なキャラ)と呼ばれるスクールカーストの底辺」「周りの目が怖くてつらい」という声には、多くの共感が集まっています。理不尽な校則への違和感
「個性を尊重するって言うわりには、校則で個性を潰しているのでは?」という不満も少なくありません。こうした指導にモヤモヤを募らせる子どもたちは増えています。「学校=つらい場所」という認識
人間関係の不安や校則によるストレスが積み重なると、「とにかく学校が怖い」「教室にいるのがしんどい」という感情が大きくなります。
教室の雰囲気への過敏さ
ある男子生徒(当時小5)は、新任の担任教師が毎日のように怒鳴っているクラスの雰囲気に耐えられず、夏休み明けから登校できなくなったといいます。
「自分が怒られてなくても、怒鳴り声が飛び交うのがハラハラして怖かった。外で大声で怒られる経験もなかったし、慣れていなかったから余計に嫌だった」
そうして、「学校=もう行きたくない場所」という認識になってしまったそうです。
友人関係の悩みから、「行きたくない」への転落
別の女子生徒は、小4のときに不登校ぎみのクラスメイトAさんと仲良くするよう周囲から促されたものの、逆に他の女子から「男好き」呼ばわりされ、いじめを受けていました。
小5でクラス替えがあっていじめっ子とは離れられたものの、「今度は誰と付き合えばいいのか分からなくなった」と一気にパニック状態に。
頼りにしていたAさんとも離れてしまい、積み重なった人間関係の負担が限界を超え、足が教室に向かわなくなったそうです。
「実は学校に行かなくなってホッとした」
興味深いことに、学校を休み始めた途端に気持ちが安定したという子もいます。
不登校経験者・Oさん(小2で不登校)は「休む決断をしたら、めちゃくちゃ明るくなった」と振り返っています。毎朝の親子バトルがなくなり、「学校に行かなきゃ」というプレッシャーが消えただけで表情が生き生きして、好きなことに没頭できるようになったといいます。
親としては「学校に行かないなんて大丈夫なの?」と心配になるのも当然ですが、子どもによっては行かないことで初めて心が軽くなる場合もある、というのは意外なポイントです。
「行きたい学校」への希望
では、逆に「こういう学校なら行ってみたい!」と感じるのは、どんなところなのでしょうか?
Oさんはフリースクールに通い直し、中学卒業までそこで過ごしました。そこでは「一人ひとりに合わせた対応」「自分の好きなことができる」「誰にも怒鳴られない安心感」があったといいます。
通信制(定時制)の高校に進んだときも、「明るく伸び伸びした雰囲気があって、本当に楽しかった」とのこと。
ほかの不登校経験者も「見学してイメージが変わった通信制高校を選んだら、自分に合ってた」「自分に合う場所ならもう一度学びたい気持ちになれた」など、少人数や自由度、安心できる雰囲気を好む傾向が目立ちます。
2. 親や社会への本音:理解してほしいこと・本当は言いたいこと
不登校の子どもたちは、親や大人に対して複雑な気持ちを抱えています。けれど「本当はこう思ってるけど、言えない」という声がたくさんありました。
親には本音を隠しがち
子どもたちは、
親を心配させたくない
正直に言っても理解されないんじゃないか
理由を言うと先生を責めることになるかもしれない
などと考え、あえて黙り込んだり、ただ「分からない」「楽しくない」などと曖昧に言うことが多いようです。
小5~中3まで不登校だった男子生徒も「先生個人は優しい人だったから、理由を言ったら先生を責めることになると思い、うまく説明できなかった」と打ち明けています。
「とにかく責めないで」「無理強いしないで」
多くの不登校経験者が口を揃えるのは、「頭ごなしに『学校へ行け!』と言わないで」ということ。110名へのアンケートでも、
「学校に無理やり行かせないでほしい。今は休むべき時だから心配しすぎないで」
「親も悩んでると思うけど、子どもの方がもっと悩んでる。そっと見守って」
「面倒になって行かなくなることもある。でもまずは無理に行かせないでほしい」
といった切実な声がたくさん集まりました。
実際、ある女子生徒はお父さんに「学校行け!」と毎日怒鳴られ、「お母さん毎日泣いてるぞ」と罪悪感をぶつけられて、怖くなって押し入れに隠れるようになったそうです。
ところが両親が話し合い、「もう学校のことは言わない」と接し方を変えた途端、少しずつ安心して外に出られるようになったといいます。
「行きなさい!」と責めるのではなく、黙ってそばにいる・日常の小さなきっかけで気分転換に誘う……そんな対応が子どもをホッとさせるのです。
「普通に接してくれるのが一番」
たとえ不登校でも、多くの子は「特別扱い」されたくありません。
ある女子生徒は「家族が、不登校の私を隠すどころか、買い物やプールにも連れ出してくれたのが救いだった」と述懐。
逆に「学校に行かない子」として腫れ物扱いされると、さらに自己否定感を強めることになるようです。
また、「説教や将来の話はしないでほしい」「放っておいてほしい」という声も非常に多いのが特徴。
親としては不安な気持ちから、つい勉強や今後の進路などを話題にしたくなりますが、子どもにとっては「今はそっとしておいて」が本音だというのです。
「自分を信じて見守って」
子どもたちは、けっして怠けたいわけではありません。何をどうしたらいいか分からないまま、苦しんでいるのです。
小学校を休み始めて3ヶ月後にフリースクールへ通った男子生徒は、「ずっと『○○は大丈夫』と信じてくれる親の姿勢が、自分の自信につながった」と語っています。
「あなたならきっと乗り越えられる」という親の信頼が、言葉以上に子どもの力になるというわけです。
「サボっているわけじゃない」──子どもたちの自己弁護
社会からは「家でだらだらしてるだけ」「怠けてるだけ」と見られがちですが、SNSやインタビューを見ると、子どもたちはむしろ自分を守るために家にいることが多いと訴えています。
「外に出るのが怖い」
「学校の嫌な記憶が甦るし、できない自分を直視するのがつらい」
「ずっと何もしないと苦しいことばかり考えてしまうから、ゲームに没頭している」
つまり、家でゲームばかりしているのも「楽している」わけではなく、恐怖や不安から逃れる手段だったりするのです。
★親が意外に感じるかもしれない本音
「学校サボってゲーム三昧」は怠惰ではなく、
「怖い外の世界から身を守るため」「何もしていないと不安に襲われるから」。
罪悪感や葛藤を抱えながらの行動なので、本当は“わがまま”ではないということです。
3. 学び方の希望:子どもたちはどう学びたいと思っているか
不登校=「勉強嫌い」ではありません。実は多くの子が自分なりの学び方や環境を探していることが見えてきました。
フリースクールへの関心
不登校児を持つ親の約20.7%がフリースクールの利用を検討し、実際に通わせた親の約7割は「不登校傾向が改善した」と感じたという調査結果もあります。
子どもたち自身からも「学校よりフリースクールの方が安心できる」「自分のペースで通える場所がほしい」という声が多数。
Oさんも、小学生で不登校になった1年後に地元のフリースクールへ行き、中学卒業まで過ごした結果、「学校とは違う居心地の良さ」を実感。
別の男子生徒も早い段階でフリースクールに通い始めたことで「生活リズムが整い、朝きちんと起きられるようになった」と言います。フリースクールに行くようになると親もホッとして余裕が生まれ、家族関係が改善する好循環が生まれたとのこと。
オンライン学習や在宅での勉強
今の子どもたちはインターネットやデジタル教材に慣れ親しんでおり、オンライン学習を活用するケースも少なくありません。
自宅で通信教育や動画教材を使う、好きな分野(プログラミングや語学など)をYouTubeで学ぶ、といった子が増えています。
2023年にはTikTok上で不登校経験者による動画コンテスト「#不登校生動画甲子園」も始まり、SNSを活用して互いの挑戦を発信しあう文化も。
東京都板橋区がオンライン復学支援サービスと連携するニュース(「不登校ビジネス」問題)も話題になりましたが、SNS上では「オンラインで救われる子もいるはず」「学校以外の学びの選択肢を増やして」といった肯定的な声も多数見られました。
通信制・定時制高校への理解
中学生以上になると、「全日制の高校に無理して行かなくても、自分に合った通信制や定時制を選びたい」という希望も増えます。
ある不登校経験者は「通信制高校をおすすめしたい」と後輩たちに語り、実際に先輩からの情報を頼りに定時制高校へ進んだOさんも「一人ひとりに合わせた対応がある学校で、すごく満足だった」と話しています。
高校3年生のときにはイベント企画の会社を起業し、「この子は好きにやったらいい」と見守っていた両親も安心したそうです。
「全日制に行けなければ将来終わり」という固定観念は子どもたちの間では薄く、むしろ「自分に合う環境で力を伸ばしたい」と前向きに考える子が少なくありません。
「好きなこと」で学ぶ意欲
学校の勉強そのものよりも、「自分の好きな分野に打ち込みたい」という子どもたちの声もたくさんありました。
不登校中にポーカー動画にハマり、「プロのポーカープレイヤーを目指す!」と本気で考え始めた男子生徒も。その後、高校進学後に大会に出場するなど夢を形にしています。
絵に没頭するうちにデザインを学ぶため通信制高校へ行き、将来はイラストレーターを目指すという子も。
「何か好きなことをさせてあげて、それを一緒に楽しんでほしい」という不登校経験者からのアドバイスもあり、子どもに好きな分野のオンライン講座や教室を紹介すると「これなら頑張れる」と意欲が戻る例が多いそうです。
★親が意外に感じるかもしれない本音
不登校の子どもが「家で何もせずボーッとしている」わけではなく、自分なりに学びを求めていることも多い。
「学校以外でも成長できる」「別の道がある」と感じ始めた子どもたちは、案外前向きに次のステップへ進んでいきます。
4. 将来への不安:子どもたちは未来をどう捉えているのか
「このままでは将来が心配…」と大人は思いがち。しかし当事者の声を丁寧に拾うと、不安と希望が入り混じった繊細な心情が見えてきます。
今は将来を考える余裕がない
不登校の子たちは、今の苦しさで頭がいっぱいのことが多いのです。
小学生に「このままだと将来困るよ」などと説いても、理解が追いつかず、逆に脅されているように感じるケースがほとんど。
「将来のことを言われるとプレッシャーが増してつらい」「今がしんどいから先のことなんか考えられない」という声も多いです。
まずは「今はそっとしておく」ことが、実は大切だったりします。
それでも内心では不安を抱えている
表向きには将来の話題を避ける子どもたちも、「自分のままでいいの?」という思いを根底に持っています。
「勉強しない=できない自分」に向き合うのが怖い
周りと違うことを不安に感じている
10代後半になると「高卒認定どうしよう」「就職は?」と一人で悩む子も多く、一人で抱えがちです。
「将来の話はしないで」の裏側
不登校経験者へのアンケートには「将来について話さないでほしい」「アドバイスもしないでほしい」「普通に接してほしい」という声がいくつもありました。
一見すると楽観的にも聞こえますが、裏を返せば「将来の話をされると追い詰められる」「親の不安を痛いほど感じてるし、自分だって不安。でも今は答えられない」という思いが隠れています。
「お願いだから信じて待ってて。自分なりに考えているから」というメッセージとして受け取るのがいいのかもしれません。
周囲の大人への訴え:「脅かさないで」
将来の不安につながる言葉で子どもを追い詰めてしまう大人もいます。
「このままじゃロクな大人になれない」「将来ひきこもりになるよ」などは、子どもの心に大きなダメージを与えます。
「頭の中がキャパオーバー状態の子に、さらに将来を考えさせるのは逆効果」という指摘をする不登校経験者も。
子ども自身、「そんなに将来のことを言われても困る」「焦りは自分が一番感じているのに…」という本音を抱えています。
希望:不登校は将来の絶望ではない
一方で、不登校を乗り越えて大きな自信や夢を得る子どもたちも少なくありません。
元不登校生へのインタビューでは、環境が合う場所へ進んだ後は「将来○○になりたい!」「こんな仕事をしてみたい!」と目を輝かせる姿が印象的だといいます。
Oさんは不登校期間中にプログラミングや起業に興味を持ち、高校生で会社を起こしました。「不登校は不幸じゃない」というメッセージを発信しています。
別の不登校経験者も「目の前の不登校ばかりにとらわれがちだけど、長い人生で見れば大したことじゃない」と語ります。
文部科学省の追跡調査でも、中学時代不登校だった多くの生徒が何らかの形で高校・社会へ進んでいるデータがあります。
★普段表に出にくい本音
将来の話に黙り込む子どもも、実は「自分だって不安」「でも今はそれどころじゃない」と感じています。
不安や焦りと戦いながらも、自分なりのペースで未来へ踏み出そうとしている。
「不登校期間はムダじゃなかった。遠回りしたけど、自分のペースで成長できた」という前向きな声もあるのです。
おわりに:子どもたちの本音に耳を傾ける大切さ
2025年2月現在の日本において、不登校の子どもたちは決して怠けや甘えではなく、それぞれが苦しい思いを抱えながら、なんとか踏ん張っています。
学校に行きたくないのには必ず理由があり、日々揺れ動く感情と戦っているのです。
そんな子どもたちが大人に望んでいるのは「責めずに見守って」「普通に接して」「信じて待ってて」という、シンプルだけれど難しいお願い。
同時に、不登校の子どもたちは新しい居場所や学び方を見つけ、再び笑顔を取り戻したり、夢中になれるものに打ち込んでいるケースもたくさんあります。
「不登校は不幸じゃない」「学校以外にも道はある」というメッセージが、彼らのリアルな本音から伝わってきます。
今、私たち大人に求められているのは、子どもたちの“表には出にくい声”を想像し、どうすれば安心できるのか、どんな学び方ならその子らしくいられるかを一緒に考えること。
不登校を選んだ子も含め、それぞれのペースで成長できる多様性を認め合う社会は、きっと子どもたちの未来を明るくしてくれるはずです。
以上、2025年2月時点における日本の不登校児童・生徒のリアルな本音に関する調査報告でした。
参考資料
不登校の子どもの本音と建て前(ペアレンツキャンプ)
日本財団「#学校ムリかも」キャンペーン関連記事
不登校経験者インタビュー(きずなネットよみものWeb)
不登校なんでも相談室(経験者110名のアンケート)
東京新聞「不登校は不幸じゃない」記事
サイボウズ社調査 不登校の親1,000名アンケート結果
文部科学省「令和5年度問題行動・不登校調査」(不登校児童生徒数) など
執筆・監修
不登校の親御さんから届く “ありがとうございます” の声、国内最大級の実績
SIA PROJECT ホームページ : https://www.futoukou24.jp/