【戦略編④】開店半年で予約満席。理想の店づくりへのシナリオ (#12)
こんにちは。
神奈川県三崎でやっていた間借り飲食店『きむら』の店主です。
第12回の今回は【戦略編④】。
戦略編全6回(第9回~第14回)のうちのPart④です。
『きむら』の戦略の全体図(現在地、戦略、理想)の中でも、
【戦略編①】:”理想”=目指す店づくり
【戦略編②】:”現在地”=自分のレベルチェックの場としての間借り飲食店
【戦略編③④】:"戦略"=”理想”の店に近づくための方法
の流れで記しています。
【戦略編④】の今回は、”戦略”の中でも”理想”の店へのシナリオについて。
ターゲットを見据えた上(【戦略編③】)で、どのようなストーリーを描いて、開店半年で予約満席に至ったのか、そんな内容になります。
では今回も宜しくお願いします。
理想の店へのシナリオ
▶まずは、前回の振り返りとなりますが、『きむら』の営業形態(アラカルト・予約制・コース制)について、中長期的なシナリオを見ていきたいと思います。
▶『きむら』の店の変遷を辿ってみると、アラカルトの時期があったり、予約制に切り替えたり、コース制にしたりと色々な時期がありました。
今回はそれぞれの時期について詳しく扱っていきたいと思います。
①アラカルトで入りやすい店に
ゼロの日もありましたが、ゆっくりと店の認知が進む。
▶オープンから2ヶ月半ほどはアラカルトで営業していました。予約制の形も取っておらず、敷居の高さを感じさせない間口の広い店を心がけていました。
▶この時期はお客様が週末2日間の営業を通じてゼロだった週もありました。仕込んだ食材のほとんどはロスになるので、この時期の経営は厳しいものでしたが、損をしてでも認知を広げる時期と捉え、料理の質は落とさず来て頂いたお客様に満足して頂くことを第一としていました。
▶営業を続けていく中で、来店されたお客様がまた次回来てくれたり、他のお客様を連れて来て頂いたりなど、少しずつ認知が広がっていくのを感じていました。
▶一方で、やはり三崎という立地から夜に出歩く人の数自体が非常に少なく、現場での営業のみでは認知の広がり方が非常にゆっくりであったため、この頃からInstagramや食べログのページを作るなどネット上での集客も進めていました。
▼アラカルトの時期のメニュー
②予約制でロス削減
アラカルトから予約制へ。ロス削減へとつながる。
▶オープンして2ヶ月半で予約制に切り替えることとなりました。目的はロスを削減することでした。
▶週末限定の間借り営業では残ってしまった食材のほとんどは翌週に持ち越せないため、どんなに売り上げてもロスによって利益が相殺されてしまうことがほとんどでした。
▶また、「損を出してでも認知を広げる」という方針でしたが予想以上にそのスピードが遅かったため、まずはロスを減らして経営を安定させてゆっくりでもいいから予約制で広げていくという方針に切り替えることとなりました。
▶この時点ではコース制ではなくアラカルトだったため、予約制でも注文されなかった料理はロスになってしまっていましたが、それでもその日に何人のお客様が来店されるかが事前に分かっている状態だったのでロスの量はかなり少なくなっていました。
集客に対する考え方
口コミが基本。一部SNSやグルメサイトも。
▶『きむら』の販促方法は基本的には口コミをベースとしていました。
常連さんが新しいお客様を連れてきてくださり、そこでいらしたお客様が次回また新しいお客様を連れて来て下さるという流れです。ここでいう口コミとは、口頭でのもの以外にも、お客様がインスタで紹介してくださるようなSNS上での口コミも含まれます。
▶ただし、口コミベースだけでは非常に狭い範囲しかアプローチ出来ないため、メインは口コミで抑えつつも、もう少し広い範囲の新規客を求めてSNSとグルメサイトも並行して利用していました。
▼SNSの活用方法については、戦略編⑤をご参照下さい。
ゆっくり伸ばす。
▶『きむら』の集客に対する考え方は“ゆっくり伸ばす”です。
広告掲載されてお客様が急増するような形は望んでいませんでした。そのため開店後3~6ヶ月はトントン、最悪赤字でも構わないので、その間で来てくれたお客様には満足して帰って頂こうと思っていました。
▶このような”ゆっくり伸ばす”という考え方の背景には、「一時的に急増したものは、落ちるのも早い」というふんわりとした感覚がありました。一時的なブームが起きてお客様が集中したとしても、彼らがその後も来店してくれなければ長期的にはあまり意味はありません。
▶むしろ、急に流行りだすと現場のオペレーションがついていかず、慌ただしい中で料理や接客がおろそかになってしまうかもしれません。それにより満足して頂けなければ『きむら』の店づくりの理念とは異なるものになってしまいます。
▶なによりこうした一時的ブームによる新規客の急増は、ときに常連客が離れてしまうことにもつながりかねません。営業に余裕がなくなって接客もおろそかになるだけなく、お客様でごった返すことによって常連客は居心地悪く感じるかもしれません。
③コース制でより良い形に
予約コース制でより良い料理に。そして経営は好循環へ。
▶オープンして3~4か月経ったあたりから、徐々にコース制へと移行していきました。コースでは基本的には仕込んだ料理は全て出すことが出来ます。そのため、「高い食材を仕入れても注文されない」というアラカルトならではのリスクを避けることが出来るため、ロスを恐れずに良い食材を仕入れることが出来るようになりました。
▶これにより自分のやりたい料理や試したい料理を作ることができるようになり、結果としてお客様にもより満足頂ける料理が出せるようになったと思います。それにより「美味しい」という評価や口コミに更につながることとなり、新しいお客様も増えていきました。
▶お客様が増え始めて予約が埋まり始めると、さらにロスが減ります。客数が少ないと中途半端に使う食材が増えるので、予約が増えることでそうした食材も使い切ることができます。
その分経営状況も改善するので一層やりたいことができるようになり、そしてお客様がついてさらに予約が生まれるという好循環です。
ブランドの確立と集客成功への兆し
SNSでの集客が徐々にうまく回りはじめ、お客様が更なるお客様を呼んでくださる流れに。
▶そしてこの頃からInstagramによる集客が徐々に成功し始めました。
▶Instagramで集客することのメリットとして、影響力が広いということももちろんですが、来店されたお客様は当然Instagramを利用しているのでお店に満足すればInstagramに投稿して下さることがあります。
SNSでの口コミは似た嗜好のお客様を呼ぶ質の高い宣伝に。
▶これはお店自身ではなくお客様が広告宣伝を行ってくれることを意味しており、またそうした口コミは信頼性が高いので影響力が強い上、同じような嗜好を持ったお客様が集まりやすいです。
この点はビジネス的な話をすればターゲットに対して説得力の高いアプローチができるという話ですので、非常に重要な点です。
▶また、補足としてInstagramの場合は画像付きの投稿が行われるため、お店のイメージが文面や口頭に比べ伝わりやすい点も魅力的と言えるかと思います。
ブランド確立への兆し
▶お店が繁盛し始めターゲットとなる美味しいもの好きの方々が集まり始めるにつれ、三崎では稀なコースのみの予約制の店ということもあり、主観ですが少しずつ『きむら』という店のブランドが築かれ始めていたように思います(とはいうものの、その最中で卒業となってしまったためブランディングについてはまだでき始め程度でした)。
▶もちろん「コースの予約制なんて取っつきにくい店、生意気な店」などとネガティブな意見もあったのかもしれませんが、そもそもごく少数のターゲットのみに絞った店でしたので不安はありませんでした。
今回はここまでです。
次回はなかなかうまくいかなかった集客の突破口となった『きむら』のInstagramの使い方についての記事です。
では次回もよろしくお願いします。
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