オンラインで購入するとき「一緒に探してくれる人」「背中を押してくれる人」はいますか?
こんにちは、オールユアーズというアパレルブランドを運営している木村まさしです。日経新聞のCOMEMOで書く機会をいただきました。
これから日経新聞の記事を元に、世の中のことを色々と考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
今回はこちらの記事。
百貨店の伊勢丹新宿店がオンライン接客を始めるというニュースがありました。わたしたちも今年の4月からオンライン接客を細々とやっていましたので、この経験も踏まえてオンライン接客についていくつか考察してみたいと思います。
オンライン接客は結果よりもプロセスが重要?
4月からの緊急事態宣言期間中に、オンラインで購買せざるをえない経験をしました。小売業を営む者として、常に実店舗を開けていることが「あたりまえ」ではなくなりました。新型コロナウィルスの第二波が来ているいま、影響は一過性のものではないという認識で、継続して考えていかなかればいけない事象です。
生活必需品はインターネットで簡単に買えることができるのは非常に便利でありがたいわけですが、消費社会が飽和した状態を経験しているわたしたちは、ただ単に「モノが欲しい」という欲求を満たすだけでは満足しきれません。「満足する」というのはその製品を手に入れた「結果」だけではなく、「プロセス」の方が重要になってくることが多いのではないでしょうか?
安いものは「失敗してもいいや」という気持ちで気軽に購買して試してみることはできますが、上代の高い嗜好品に関しては「失敗したらどうしよう…」など心理的・金銭的なダメージが大きく、特に調べずに簡単に「ポチッと」するには、やはり勇気がいります。
実際わたし自身の購入プロセスを検討してみると、ブランド自身が発信する質の高いコンテンツを読みこみ、レビューやユーザーのブログを検索し、親しい友人に使っている人がいれば聞きたくなる。そして、その商品を手に入れた後にどんなシーンで使用するか?など想像したり…色々とその商品に関することや周辺情報を調べている時間が、実は楽しい時間だったりします。
手に入れたあとよりも、手に入れてしまう前の方が楽しいなんて、実に人間の心理は難しい…!
今後存在感が増すかもしれない「背中を押してくれる人」
実店舗に来店する方も今やオンラインでかなりの時間を使って検索してから来店します。目的は「実物を確認」することといわれていますが、わたしは実店舗がある意味は「実物を確認」することが全てではないと考えています。それは、わたしが18歳の頃から販売員をしていた経験から思うことでもあります。
その現場で販売員の大きな役割を教えてもらいました。それはこんなことでした。
「大切なのは売ろうとしないこと。話を聞いて一緒に探すこと。ぴったりのものが見つかったら背中を押してあげることだよ。」
先ほど検討した購入プロセスは、オンラインで購入する時に誰しも通過するプロセスだと思いますが、ここには実店舗と違い、なにかを購入する際に「一緒に探してくれる人」や「背中を押してくれる人」が存在しません。自分にとって少し高価な買い物をするときにこのプロセスが重要だとするならば、「その商品の購入後に満足できるか?」という問いに対して、意外とこのポイントが今のオンラインストアには欠けているのではないか?と考えています。
ここが価値になり得るならば、今後、様々な形態で実店舗以外で販売員が活躍することができることになり、オンラインストアへ事業自体がシフトしていくなかで、そのお店、ブランドの特別な体験が提供できる貴重な人材になっていくのではないかと期待しています。