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【『百人一首』と人生と】なぜか、寂しいなあ。赤い夕日を見ると、心が震えてくる(良暹法師)

さびしさに 宿をたち出でて ながむれば
 いずこも同じ 秋の夕暮れ

良暹法師(りょうぜんほうし)

【意訳】
 私は、心静かに暮らしたいと思って、山奥の一軒家に住み始めました。ところが、独りでいると気楽なはずなのに、なぜか「寂しいなあ」という思いがわいてくるのです。
 孤独に耐えきれなくなり、家の外へ出てみると、美しい秋の夕暮れが、目の前に広がっていました。
「誰かいないの?」と周りを眺めても、一人もいません。いるはずがありません。
 どこへ行っても、同じなのです。
 私の心を分かってくれる人など、いるはずがないのです。
 赤い夕日を見ていると、寂しくて、心が震えてきます。

【解説】
 良暹法師は、比叡山の僧でした。どんな人だったか、詳しくは伝わっていません。歌人として活躍し、宮廷にも出入りしていたようです。
 にぎやかな都で暮らしたこともあるはずです。しかし、多くの人で混雑する場所に身を置いても、「自分は、独りだなあ」と感じる時があったでしょう。
 独りがいいと決めて山へ入っても、心の奥底からわいてくる「寂しさ」を、どうすることもできなかったのです。

イラスト・黒澤葵

良暹法師
生没年不詳。
平安時代中期の比叡山の僧侶。

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