キムラ ケイ
日常の中に潜む、かけがいのないことを書き留めています。京都在住、奥さんと娘(5歳)との…
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涙はショッピングモールの屋上で流れる
誰一人振り向かなかった。
だって、声がなかったから。
きっと、声のない温かな涙だったんだ。
いつも目にしてるあのショッピングモールのてっぺん、
だだっ広い駐車場の端っこに赤いマフラー巻いた男の子。
ほら、風がナイフみたいにうなりを上げて
そう、そいつが涙の犯人ってわけ。
男の子はぼんやりと空を仰ぐ。
彼がさっきまで手にしていた、
手から離れた風船はたぶん空の涙で、
かすかに空気を揺らしながら青