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惣辺奥瀬風力発電事業、十和田市や青森県が「難しい」との見方示す(八甲田・十和田の風力発電計画)

1.惣辺奥瀬風力発電事業について、ついに十和田市が見解を示す

9月10日の十和田市議会で、竹島直樹議員の質問に対し小山田市長は

・惣辺牧場は現在牛の放牧用途として使用していることから、市といたしましては風力発電事業余地とする事はふさわしくないと考えております
・(事業計画区域に含まれている)保安林は・・・(中略)・・・県の有識者会議で示されたゾーニング案では保全地域として区分されました。・・・(中略)・・・ (保全区域は)原則的に事業計画は認められない地域とはなりますが、関係法令等に基づく市町村の事業認定を受けた場合に限り事業が可能となっております。このような保全地域内に計画されている(仮称)惣辺奥瀬風力発電事業の実施に関わる住民の合意形成は、自然環境や景観等への影響を懸念する行為が大きい中、現時点ではハードルが高い、このように考えております。

9月10日 十和田市議会

と答弁し、十和田市は「事業は困難」との立場を表明しました。

続けて、9月30日の青森県議会一般質問でも
宮下知事は惣辺奥瀬風力発電事業について「再生可能エネルギーとの共生条例=青森県による再エネゾーニング」がが制定されれば「事業は困難」と、市の立場に同調しました。


※惣辺奥瀬風力発電事業の問題点は以下をご参照ください。


2.青森県による再エネゾーニングとは

 惣辺奥瀬風力発電事業が実施が難しい流れになったことには、もちろん多くの方々によるこの計画の問題点の周知活動が大きな影響を及ぼしていると考えます。


 八甲田・奥入瀬・十和田の豊かな自然文化を愛する皆さまの、多大なご尽力に心から敬意を表します。

また、もう一つ大きな影響を及ぼしたのが、

「青森県のゾーニングによる再エネ規制」

であることが、十和田市長の答弁からもわかります。

 青森県では「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度検討有識者会議」を開催し、ゾーニングを軸とした再エネ規制の在り方を検討し、2024年度中に条例を制定することを目指しています。

令和6年10月3日の時点で、4回の会議が開かれています。

3.再エネ規制ゾーニングの方向性

 現時点で県は、「保護地域」「保全区域」「調整区域」「共生区域」の4区分でゾーニングを実施する案を提示をしています。


青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度検討有識者会議資料より


 この4区分は、既存の法規制(国立・国定公園や保安林など)に基づいて決定する方針です。
 また「調整区域」では、再エネ事業の実施にあたって県が認定・不認定を判断するとされています。

 この案のままゾーニングがなされた場合、今後、青森県内で一定規模以上の陸上風力発電事業や太陽光発電事業を実施する際には、

①保護地域→禁止
②保全区域→市町村の合意が必要(原則禁止で、市町村の認定を受けた場合のみ事業実施可能)
③調整区域→県の認定または市町村の合意が必要(共生区域に移行して事業実施する場合)
④共生区域→市町村が設置する協議会で協議する
※現在の検討段階では共生区域とされている箇所はない

 という流れになり、この形でゾーニングが為されると、県内のどんな場所であっても(現在法規制がないため「調整区域」とゾーニングされた場所であっても)民間事業者による風力発電や太陽光発電にの実施に対して市町村または県が関与して一定の責任を持つことになります。
 これは、現在の再エネにおける「地域住民が知らない間に事業が進む」「反対する住民がいても意向が反映されない」仕組みの解消になります。

 また、保全区域に保安林だけでなく「地域計画対象森林」(法規制のない森林)も含まれており、森林の保全を強く意識した案が提示されていると考えます。

 なお、このゾーニングによる新しい仕組みは、条例施行時に、環境影響評価(環境アセスメント)実施中のものに関しても適応する方向で検討が進んでいます。
 このことが、すでに計画が進行していた惣辺奥瀬風力発電事業についても、大きな影響を及ぼしたものと推測されます。

4.八甲田・十和田地域の他の風力発電事業はどうなるのか

 八甲田・十和田地域には、惣辺奥瀬風力発電事業の他にも
①大中台風力発電
②深持風力発電
③十和田深持風力発電
の計画があります。
 いずれの計画も詳しい風車設置位置屋、取付道路が明らかになっていないため、詳細は不明です。
 しかし、使用中の牧場や保安林・森林区域が含まれる可能性が高いことから、今回の惣辺奥瀬風力発電事業に関する県や十和田市の動きは、事業者に大きな衝撃を与えたものと考えられます。

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