赤ずきん
2020年7月23日
母にお使いを頼まれた。
祖母の家になんやらかんやら持っていくらしい。
赤い頭巾を被って、重たいバスケットを持たされて獣道をのそのそ歩く。
なんだってこんな森の中を歩かなきゃ行けない。
私が行けばおばあちゃんも喜ぶから、なんて言われたけれど、厄介払いなだけだろう。
母もこの獣道を歩きたくないだけなのだ。
歩き続けていると、ひょっこり狼が出てきた。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。1人で大変そうじゃないか」
「まぁね、おばあちゃんに持っていくものがあるの。そこをどいてくれない?お話してる暇ないの」
「まぁまぁ、いいことを教えてあげよう。この道を1本右に曲がったところに、綺麗なお花畑がある。そこで花かんむりでも作っておばあちゃんに渡せば……」
「いや、いいよ。別におばあちゃんこれ持っていくだけで喜ぶし」
「あ、そうなのか……」
「うん、どいてください」
「はい……」
狼はそう言うと黙ってその場を離れた。
狼は前々から考えていた計画を実行しようとしていたのだが、今更になって笑えてくるほど無駄なものだと気がついてきた。
美味しそうだと思っていた赤ずきん。食べたくてしょうがなかったが、母親の目があっては難しい。
そこで思いついたのが、赤ずきんの祖母を食べて、祖母になり変わろうと言うものだったのだ。しかし、今になって気がついた。先程赤ずきんと会った時に食べてしまえば良かった。おれは、余りにもいいアイデアを思いついたものだから、それを実行してやろうと悦に入っていた。
おれは大バカ者だ。その祖母など、病気なのだから、赤ずきんを堪能した後に食べてしまえばいいのに。
何をしているんだ。
狼は、そんなことを思いながら、赤ずきんの祖母の家にたどり着いた。
もうこうなったらヤケだ。実行するしかない。
狼は、唸り声をあげて、赤ずきんの祖母に襲いかかった。
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