人の波
2020年6月26日
溢れかえるばかりの人の波。
呑まれて消えていくにはこざかしい。
この波はどこから来て、どこに消えるのだろうか。
波の一つ一つの泡粒はバラバラに散り散り消えていく。
それぞれの持ち場へと腰を据える。
波が散れば静かな波打ち際に。
砂浜にやたらと残る足跡を蹴散らして、靴に入る砂も厭わず。
足跡など全て消して私の足跡をゴシゴシ付けていく。
私が、ここにいる証明を。私が、毎日苦労してここに来る苦しみを。
ここに刻み付けたところで誰も知らない誰も見ていない。
また明日、やってくる人の波。いや、今日の夕方やってくる人の波に押しやられて消されてしまう。
けれど、たとえ数時間の命の証明だとしても、私はその短い時間に誰かがその目の隅に足跡を認める可能性があるのならば、私は救われる。
そうだと信じていたい。
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