兎にも角にもミステリー
ミステリーの中には全てが詰まっているのだと私は思っている。
ドキドキ、ハラハラする様な冒険譚。
人間同士の金や愛を巡った愛憎。
人を殺すような極限状態にある人間を描くのだから、過剰な感情やらその他様々な感情が、渦巻いている。
それに加えて大抵の犯人は、罪を犯した事を誰にも知られたくはないという人間なのだから、(この限りではない犯人もいるのでミステリーはたまらない)人間の暗い部分が描かれているのは当然である。
殺人を暴くために、登場人物の心の底を知り、考え、探偵役の華麗な推理!
そして度肝を抜く様なトリック!
そんなミステリーが面白くない事無いのだ。
私とミステリー
僭越ながら私とミステリーについて話をさせていただく。
私とミステリーの出会いは小学生の頃。
と言っても、ミステリーだと認識せずに読んでいた、江戸川乱歩の少年探偵シリーズだった。
本当に面白い。
私はただ冒険小説と思って読んでいたが、大人になってから読んでみても、死ぬほど面白い。
江戸川乱歩特有のおどろおどろしい雰囲気。
そしてその人間の仕業とは思えない数々が、人間の企みによるものだと判明した時が爽快だ。
私は図書室にあった少年探偵シリーズを読み漁り、小学校にあった分は全て読んでしまった。
しかし、そこから江戸川乱歩にハマる事はなく(私のいた小学校の図書室には江戸川乱歩は少年探偵シリーズしか無かった)小学校を卒業する。
そして中学生になる。
読書自体は好きだったが、難しい話が苦手なので小学生向けのファンタジーを引き続き読み続けていた。
実は、中学に上がると同時に引っ越しをした為、友達が一人もいない状態での入学だった。
その上中学生になっても小学生向けのファンタジーを教室の隅っこで読んでいる。
人とも話さず。
こんな奴に友達が多い訳ないだろう。
始めは多少できた友達も、日に日に声をかけられる事が減っていき、一人、二人となんとなく仲がいいほどになっていた。
その友人とクラスが離れた中学二年生。
休み時間は誰とも話せず読書をしていた。
その時救ってくれたのがミステリーだった。
家にあるお気に入りの本を読み漁り、次第に飽き始めた頃。
母親に我孫子武丸の8の殺人を勧められた。
そこからミステリーにどっぷりとハマり始める。
8の殺人を読んだ時、「何だこれは!」と思った。
奇妙な8の字型の屋敷、そして全員怪しい容疑者。
そして驚く様な結末。
今になって思うが、本当に良いトリックだった。ミステリーを知れば知るほど、トリックの良さなどが分かってくる。
もちろん知らなくても面白いが、知れば知るほどトリックの面白味が増えていくのも、ミステリーの良さだと思う。
そんな訳で私はミステリーにハマった。
夢中になればなるほど、我を忘れて生活が楽しくなる。
灰色だった中学生活は、ミステリーを読み始めるために設けられた期間だったと言われると、納得できるのである。
ちなみに、一番好きな探偵はエルキュール・ポアロだ。
おすすめのミステリー
さて、長くなってしまったが、ここからおすすめのミステリーを紹介したい。
もう既に散々言われている名作ばかりになってしまったが、それはしょうがない。
面白いのだから!!
面白いのだから名作だし、名作だから紹介したい。
ミステリーを読んだ事無い方向けにミステリーをオススメするという前提で選びました。
十角館の殺人
著 綾辻行人
言わずと知れた名作。
ミステリーハマりたての時に真っ先に読んで死ぬほど衝撃を受けた。
天地がひっくり返る程。
十角形の館という異様な空間。
その中で起きる殺人。
これだけでも既に惹かれるのに、さらに驚くべきトリック!
個人的に衝撃の結末という宣伝文句はその言葉自体がネタバレになる気がしてあまり好きではない文句なのだが、十角館の殺人に関して全く問題が無い。
そんな事を言われてもこんな結末想像できない。
アガサ・クリスティのそして誰もいなくなったのオマージュ作品でもあるので、そちらを読んでからでも楽しい。
メソポタミアの殺人
著 アガサ・クリスティ
ミステリーの女王と名高い、アガサ・クリスティの作品だ。
私はミステリー作家の中で一番アガサ・クリスティが好きだと言っても過言ではない。
私の本棚はハヤカワ文庫のアガサ・クリスティで真っ赤になっている。実はまだ読んでない本も多い。
そんなアガサ・クリスティの話の特徴といえば、洗練されたトリックと、頭を抱える様な人間関係だ。
個人的には人間関係に関しての描写は、ミステリー作家に限らず、どんな作家よりも卓越していると思っている。
名作揃いのアガサの作品だが、その中でもメソポタミアの殺人を選んだのは、この作品の中の人間関係が一番面白いと思ったからだ。
詳しくは読んでいただきたいのだが、一人の女性を巡って渦巻いている登場人間たちの感情が異様な様に思えて、隣人の話を聞いている様な風にも思える。
トリックも秀逸だし、発掘現場という不思議なエネルギーに溢れた場所の話も面白い。
名探偵エルキュール・ポアロの名推理が冴え渡るので、是非読んでいただきたい。
0の殺人
著 我孫子武丸
私がミステリーを好きになるきっかけになった8の殺人の続編になる。
速水三兄妹シリーズ第二弾となるので、8の殺人から読んだ方が楽しめるが、この作品単体でも面白い。
この0の殺人は、冒頭に容疑者リストが書いてある。
初めて見た時は、そんな事を言ってしまっては、犯人が直ぐに分かってしまう!なんて事をするんだ!面白みを削るのか!と思ったのだが、その容疑者リストがある事でより混乱していく。
これ以上いうとネタバレになるかも知れないので控えておく。
いや、ただ本当に面白いんだ。我孫子武丸氏の小説は描写が少し強いので、苦手な方もいるかも知れないが、これは大丈夫だ。かなり読みやすい。安心して読んでほしい。
ミステリーを読んでほしい
ミステリー、推理小説と聞くと難しいイメージを持っている方も多いだろうけれど、今回オススメした三作は、少々乱暴な言い方をすると、
“多少内容が分からなくても最後のトリックが理解できる”
ミステリーを選んだつもりだ。
私は難しい話が本当に苦手で、物理を使ったミステリーを読んだ時はトリック解説のシーンを5回程読んでなんとなく理解した位だった。
海外ミステリーなどは、その国独特の文化や建築を利用しているものもあるので、そういうものは本当に難しい。
もちろん、そういうトリックも魅力的だし、面白いし、大好きなのだが、初めてミステリーを読むとしたら分かりやすい方がいいと思う。
せっかく面白いミステリーに、なんかよく分からない!という部分があっては悲しいから。
ミステリーの魅力は語り尽くせない。
あなたもぜひミステリーの世界に足を踏み入れてはいかがだろうか。