2021/07/19

密林 髭 祭り

 髭面のガイドを連れて密林の奥へと入っていく。ここには幻と呼ばれる民族が住んでいるらしい。私は民族学者として、その民族にどうしても会わねばならない。そうしなければ、現世に悔いが残る。それだけは避けたい。
 ガイドによれば、この辺りにいるという噂が絶えないらしい。そう簡単に見つかる訳は無いが、とりあえずその辺りを探す事にした。
 密林を探す事三十分、太鼓の音が聞こえた。
 まさかと思い音の聞こえる方へ行くと何人かが火を囲んで踊っているのが見えた。祭りだろうか。
 しかしこんなに簡単に見つかるとは思わなかった。今までなぜ見つからなかったのだろう。
 肩を掴まれる。振り向くとガイドが強く肩を掴んでいた。
 あっ、という声を出す間も無く、私は倒れていた。身体に力が入らない。
 髭面は私を祭りの中心の炎へと運んでいく。
 炎の中には食べかけの人間。食人族。
 そうか、私は飛んで火にいる夏の虫。

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