不器用

2020年8月21日

芝生の上に朝露が溜まっていた。ポタリ、と大きな水玉が私の頭に落ちてきて、全身ずぶ濡れになってしまう。
「あ!またバカみたいに濡れてる!」
君は果物をいっぱいに詰めたバスケットを抱えて笑った。歯が抜けそうなくらい笑った。
「うるさいなぁ、しょうがないだろ、避けようが無いんだから」
「避けられないことないだろ、注意力散漫なだけだよ」
君は私を鼻で笑った。
「そんな事ないはずなのに……」
昔からうまく露を避けることができなかった。
本能や勘が驚くほど働かないとでも言うのだろうな。
私はそれを指摘される度に、世界から隔離された気分になる。私が死んで悲しむ人は居るかもしれないが、こんな不器用な私がこの世から消えたところで世界は淀みなく回る。

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