Unit Economics(ユニットエコノミクス) と インサイドセールス業務の関係について。
| はじめに
早いもので、noteを書き始めてこれが5本目となりました。
これまで書いたnoteは、インサイドセールスの実務寄りのお話が多く、いうなれば虫の目の視点での内容でした。
過去のnoteはこちら
👉https://note.com/kimu2/
本日は鳥の目の視点で書きます。
私が所属しているのはSaaSビジネスですので、ご契約後継続的に課金し続けてもらうことで、最終的な利益の最大化を目指していきます。
そのため、一般的な「利益 = 売上 - コスト」だけで計算してしまうと、最初のうちは「売上 < コスト」つまり赤字になる構造を持っています。
そこでそれぞれのSaaSビジネスの健全性の指標が数多く考えられました。
その中でも「Unit Economics」は、VCなど投資家も重要視する指標の一つです。
今回のnoteではUnit Economicsの説明と、インサイドセールスの業務がどのように影響しているのかを解説してみたいと思います。
| 想定読者
● インサイドセールスチームリーダー(ぜひ、メンバーの方にも読んでもらいたい)
● SaaS業界の営業マネージャー
● スタートアップ企業でこれから営業部門の組織化を考えている方
| Unit Economicsとは
ググれば「Unit Economics = LTV / CAC」という解説記事がたくさん出てきます。
なので、LTVとは何か?CACとは何か?が分からないと前に進みません。
ここからは少し横文字が多く出てきますので、慣れていない方は入ってきづらいかもしれません。
その場合は、1度のみならず複数回(おすすめは1日1回読み込む × 3日間)読んでいただくことで、慣れてくるかと思います。
まずはCACから。
CACとは、「ユーザー獲得単価」のことで、計算式は以下になります。
さらにCACは、別の計算からも求めることができます。
ちょっと聞き慣れない言葉が出てきましたね。
ARPUとは、平均ユーザー単価
会社によってMRR÷ユーザー数だったり、ARR÷ユーザー数だったりします
CAC Payback Period とは、CAC回収期間
【CAC Payback Period = CAC ÷ ARPU】で求めることができます
つまり、CACとARPUが分かればCAC Payback Periodを計算できる、ということになります
ちょっとまとめます。
更に具体例も
このように、CACは顧客獲得効率を見る指標として有効です。
続いて、LTVについて。
LTVとは、「ユーザー生涯価値」と訳されることが多いです。
計算式を見ると結構簡単です。
先ほど出てきたように、ARPUとは、平均ユーザー単価 ですね。
「ユーザーが支払い続けてくれた総額」ということです。
LTVもまた、別の計算式で表すことも可能です。
Churn Rate とは、解約率のこと。
ちょっと分かりづらいので具体例を。
100ユーザーが一斉に契約してくれたとしましょう。
解約率が10%だった場合、
1年目は、100ユーザー が契約
2年目は、100 - (100 * 10%) = 90ユーザー が契約
3年目は、90 - (90 * 10%) = 81ユーザー が契約
といった形で減っていきます。
仮に1ユーザーあたり毎年100万円支払うサービスだった場合、
1年目は、100ユーザー × 100万円 = 1億円 の売上
2年目は、90ユーザー × 100万円 = 9,000万円 の売上
3年目は、81ユーザー × 100万円 = 8,100万円 の売上
となります。
毎年の売上の金額が見えるものの、「では実際に1ユーザーあたりどの程度売上が立ったでしょうか?」という問いに対しては、なかなか見えてきません。
そこで、先ほどの計算式が役立ちます。
このように、1ユーザーあたりどのくらい支払ってくるれるのか、を計算する時にLTVを使います。
おまけ的に言うと、平均継続期間はChurn Rateから算出できます。
まとめます。
いよいよ、計算していきます。
復習ですが、CACとLTVの計算は以下。
これを前提に、以下のような計算式が成り立ちます。
読むだけでなく、実際に紙に書き出しながら理解することをおすすめします。
最終的に、
という計算式が成り立つことがわかります。
| Unit Economics の 健全性の話
SaaSビジネスにおいて、「Unit Economics = LTV/CAC > 3x」というのが一般的に健全とされています。
そこの理由を説明するには、Unit Economicsの分母であるCAC Payback Period の部分から入っていきます。
SaaSビジネスにおいては、CAC Payback Period は 6ヶ月〜18ヶ月が健全というのが定説です。
LTV/CACが3倍ということは、仮にCAC Payback Period が12ヶ月とすると、平均継続期間は36ヶ月となります。
また、SaaSビジネスにおいてはChurn Rateは「3%未満」が望ましいとされています。
仮に、Unit Economics = 3 で CAC Payback Period が12ヶ月とすると
このように、Churn Rateもきれいに3%以内に収まるということがわかります。
こうした計算の元、「Unit Economics = LTV/CAC > 3x」というのが、SaaSビジネスにおいての健全性の指標の一つとなっています。
| 練習問題
ここまでの内容が理解できていると、自分の手元でUnit Economicsが計算できます。
ぜひそれを体感頂きたいので、練習してみましょう。
上記のようなケースだと、Unit Economicsは何になるでしょうか?
と、本当に手元で計算頂こうとしたあなた、最高です。
ただし、みんながみんなあなたのように計算しないので、ショートカットできるようにスプレッドシートを共有しておきます。
上記スプレッドシートをコピーしていただいて、ぜひご自由に使ってください。
| いよいよ本題
ここまでが、Unit Economicsの説明でした。
Unit Economics は 要素分解すると以下のようになります。
それぞれに対して、マーケ / IS / FS / CS の活動がそれぞれどのくらい影響するのかを考えてみました。
(サービスや組織ごとに最適解は違う前提で、あくまで一例です)
あなたの活動がUnit Economicsを改善するという事実
SaaSビジネスでは、「ここぞ!」という時に目先の利益を度外視して、投資アクセルを踏むフェーズもあります。
(顧客獲得によって競争優位を築くなどして加速的に事業を成長させる等)
その場合、一般的には以下のようになります。
そこで低下したUnit Economicsを、少しでも早く改善するためには、マーケ/IS/FSの各担当者の活動が極めて重要になる、という話になります。
| インサイドセールスのあなたへ
インサイドセールスは、日々活動量をコンスタントに積み上げ、アポ獲得効率を上げる工夫をします。
ジェンガの木をちょっとずつ積み上げるがごとく。
それはとてもとても地道。
そのため、陥りやすいのが「今自分の活動は何の意味があるのか?」というマインド。
でも、安心してください。
このようにあなたの活動は、確実にCACとLTVを向上させる活動になり、SaaSビジネスを動かしているのです。
ぜひそのことを頭の片隅に置きつつ、今日も1件でも多く活動していきましょう。
| おわり
いかがでしょうか?
Unit Economicsを意識することで、日々の活動の意味を感じ、モチベーション向上に繋がったらとても嬉しく思います。
ではまたどこかでお会いしましょう。
Twitterやってます。
👉 https://twitter.com/t_twio