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これぞドラマという快感を味わえる『イグアナの娘』
アマゾンプライムで昔から気になっていたイグアナの娘をみた。
生まれてきた娘を愛することができない母親と母親からの愛を求める娘の悲しみと成長を描いた作品。
カルピルの原液かっていうほど、話の密度が濃い。無駄な部分が一切ない。息もつかせないとはまさにこのようなドラマをいうのだろう。常に画面に集中して見入ってしまった。こんなドラマ久しぶりだ。
物語の王道を突き詰めすぎて異次元に
このドラマ、今では信じられないくらいきつい場面が主人のりかを襲う。娘を愛せない母に辛くあたられ、妹も母親と結託するように見下してくる。父親は優しいけれどあてにはならない。そんな境遇で育ったりかは自分を愛せずに、自信がなく、上手に話すこともできえないし、抱えきれない悲しみを壊れそうな心で受け止めてきた。何度涙を流しただろう。思い出しただけでも、よく頑張ったねと声をかけたくなる。
普通だったら辛すぎることが多すぎて見ていられないお話だ。
それでも、もっと先が見たくなるのは常に希望があったから。むしろ、悲しみのシーンが辛くあるほど、光射すような希望の要素がキラキラと輝いていて、その落差があまりに大きいが故に見ている側の快感がすごいのだ。
話としては辛いできことが起きる、けれど友達や思いを寄せる幼馴染の男の子の助けで、また前を向くの繰り返し。朝ドラとかでよく見る山あり、谷ありと言ってしまえばそれまでだけど、それを徹底的にやり尽くしたらこうなるという事例のよう。
脚本が抑えるということを知らないのかというくらい振り切れている。
だって、母親が娘にあなたを殺してしまえばよかったとか正気の沙汰ではないし、一方、親友の女の子がかけてくれる言葉や笑顔は天使のように優しい。
そのギャップが激しければ、激しいほど、むき出しの快感となって見る人を惹きつける。
やばい脚本を俳優さんたちがハイテンションで演じる
この展開は見えないけれど、困難からの解決というドラマの王道を徹底したストーリーを役者の演技が圧倒的なハイテンションで具現化していく。
りかを演じた菅野美穂さんと母親の川島なおみさんの演技は狂気に近いくらいのエネルギーに満ちていて、このドラマにかける情熱を感じる。
つまり、演じる人、脚本家、演出家など制作チームのある種の躁状態で作ったんじゃないかと想像してしまうほど、不思議なエネルギーがこもっている。
とにかくエンジン全開、フルスロットルで作られた作品。重たいシーンも多いけれど、同じくらいの希望があるし、優しさもある。
みんな恋愛に真剣だ
みんな恋愛に真剣なところも良い。
なんか恋愛と言っても、恋愛を超えた愛という感じ。
主人公の幼馴染の岡崎くんの恋愛がまさにそうで、途中まで優柔不断ではあったけれど、恋愛へのスタンスが高校生とは思えない熟練した、大人のスタンスなのだ。
自分自身28歳のアラサーで、恋愛って一緒にいて楽しいというのが大事だと思ってしまうけど、岡崎くんはそんな感じじゃない。
辛い思いをしているりかを俺が救ってやるっていうスタンス。なんて男らしい態度。
岡崎くんがりかさんのお母さんに言い放った一言が衝撃的だった。「りかさんのことは僕に任せてください」。いや高校生にして、もう結婚する時のそれじゃんと言いたくなるほど、愛するものとしての自覚に溢れた発言である。
人が人を支えるって良いなと思わせてくれる
このドラマで一番好きなセリフは親友の女の子の「友達がいれば大抵のことはなんとかなる」だ。
辛い時に誰かがいてくれる。しかも、それが家族ではなく、友達だったりする。それって、すごい奇跡だと思う。だって、誰しも楽しい時を過ごしたい。
なかなか気持ちが落ち込んでいる人のそばにい続けるのって大変だ。相当自分自身が強くないとできないこと。
そう考えると、イグアナに見えてしまうという設定のファンタジー要素を含む作品だけど、辛い時にも寄り添い続けてくれる親友の存在の方がある意味ファンタジーに近い願望と言えるかもしれない。
でも、この作品はそんなファンタジーを信じたくなる、そんな気分にさせてくれる最高のドラマだと思う。
また未視聴の方はぜひ観てみてほしい。