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『思い出洗い』

ある日、白シャツが憎きカレーに汚されたり、お気に入りの靴が間違って水たまりに飛び込んで、汚れて帰ってきたりする。毎日生活していくうちに、ものは汚れていく。
〈毎日〉も、人と気持ちとで汚れて黒ずんでいく。よごれは頑固で、汚れ落としに割く時間なんてない。たまに部屋を整理するように、心のタンスの中をまさぐると、汚れた〈毎日〉は化石化して汚れた〈思い出〉になって、あっちからこっちから。

そんな時には五百円玉を握りしめ、外に出る。
きっとどの町にもある、どうやって、誰が、何のために使うかわからない扉があるから、そこを3回ノックする。
いっかい、にかい、さんかい。
次に目を開ければ扉はよくある古いガラス戸に代わっていて、それ越しに真っ白い洗濯機と目が合う。

さあ、扉を開けて洗濯機しかない空間に入り込むと、いつの間にかお気に入りの、しかもものすごく汚れた自分の服が手の中にある。
もう片方の手にある五百円を洗濯機のわきの精算機に入れれば、あとは服を洗濯機に放り投げるだけ。
漂白剤、柔軟剤はお好みで。
香りも無香料からフローラルブーケにシャボンにムスク。

ふと見上げると、洗濯は自己責任で、の文字。



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