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伝統文化検定2級に合格!意識して文化に手を伸ばそう
はじめに
このたび、日本伝統文化検定(伝検)2級に合格しました! 第1回開催ということで過去問がなく、対策が立てづらい状況でしたが、CBT試験を複数回受験するという荒技で、合格に辿り着きました。
今回は、試験の内容や勉強法、複数回受験して分かったこと、そして「日本人なのに日本を知らなすぎる」と痛感した気づきについてお伝えします。
日本伝統文化検定(伝検)とは?
日本伝統文化検定は、2024年にスタートした新しい検定です。「和を知る・和を楽しむ・和を伝える」を目的とし、日本の伝統文化に関する幅広い知識が問われます。2級では、公式テキストから70%、テキスト外から30%出題されます。
◆ 1級(アンバサダー)—— 各分野の深い知識を身につけ、日本文化を広く伝えられるレベル
◆ 2級(マスター) —— 仕事や暮らしに応用できる中級レベルの知識を習得し、和を楽しむレベル
◆ 3級(サポーター)—— 日本の伝統文化についての基礎知識を学び、和を知るレベル
私がこの検定を受験したのは、きもの文化検定で染織に特化した知識を学ぶ一方で、日本の伝統文化全般についても広く知りたいと思ったからです。実際にテキストを開くと「知らなかった!」と思うことばかり、試験では「日本のこと全然知らないんだな」と気付かされました。
2級受験の振り返り
日本伝統文化検定2級は、公式テキストの内容にとどまらず、より広範な知識や教養が問われる試験です。また、テキストの単なる暗記というよりも、「どれだけ文化に触れてきたか」を試されていると感じました。
私は1回では合格できず、試験期間中に複数回受験しました。毎回まったく同じ問題が出るわけではなく、見覚えのあるものもあれば、新しい問題も出題されました。また、フルカラーの画像付き問題もあり、視覚的な知識も求められます。
試験後は、記憶を頼りに出題された問題を書き出し、一つずつ調べながら知識を補強していくことで、テキスト外の知識を掴んでいきました。
テキスト外からの出題例
テキスト外からの出題を感想と共にご紹介します。
・峠の釜めしの器は何焼か?
→ 遠足で食べたことはありましたが、陶器としての視点で見たことはありませんでした。回答できず。(答え:益子焼)
・『神奈川沖浪裏』から着想を得て作曲した作曲家は?
→ ゴッホやクロード・モネのジャポニズムは知っていましたが、音楽にもジャポニズムがあるのは知りませんでした。回答できず。(答え:ドビュッシー)
・病鉢巻の色と結び目の位置は?
→ きもの文化検定で過去に出題されたことがあるので、答えられました!(答え:紫、左側)
・しゃもじの産地として有名な島は?(しゃもじの写真付き)
→ しゃもじに鳥居の絵が描いてあり、消去法と勘で回答。(答え:宮島)
・世阿弥の名言は?
→全く知りませんでした。回答できず。(答え:秘すれば花)
こうした問題を振り返ると、伝検は幅広い分野からの出題があり、雑学クイズで出題されそうなミニ知識から、その分野を突き詰めて知っていなければ回答できないようなものまで、さまざまな問題がありました。
伝検2級を勉強して得られたもの
きもの文化検定でも感じたことですが、試験の合格だけではなく、さまざまな気づきを得ることができました。
まず、日本文化に対する視点が変わりました。公式テキストに載っていない工芸品が数問題が多く出題されたことで、「試験のために勉強する」のではなく、「日常的に文化に触れ、知識を深めることが大切」だと実感しました。何気なく見ていた工芸品や神社仏閣の装飾、お茶や和菓子など、どんな背景や歴史があるのか興味を持つようになりました。
また、学びの楽しさを再認識しました。きもの文化検定が終わってから、しばらく勉強からは離れていましたが、知らなかったことを知る喜び、日本文化の奥深さに触れる面白さは、試験を超えた価値がありました。合格はもちろん嬉しいですが、それ以上のものを
得ることができました。
きもの文化検定との違い
伝検には、きもの文化検定と共通する「染織分野」のカテゴリーがあります(和紙と同カテゴリー)。琉球びんがたのルクジュウ、京友禅と加賀友禅の共通点、結城紬の要件など、きもの文化検定で得た知識が活かせる部分もありました。
しかし、伝検ではさらにコアなトレンドを問う問題も出題されました。例えば、西陣織の出荷金額や、西陣織で作られた製品に関する問題などです。
「甲子園の真紅の旗が何織か?」という問題は、きもの文化検定でも出題されたことがありますが、レクサスの内装やクリスチャン・ディオールの装飾に西陣織が使われたことがある、というところまで知っていないと回答できない問題もあり、より専門的で深い知識が求められると感じました。
今後
4月以降、1級の詳細が公開されるとのことです。
2級の受験を通じて、国の伝統的工芸品だけでは不十分で、都道府県指定の工芸品まで幅広く知る必要があり、災害が起きることで存続が危ぶまれる工芸があることも知りました。また、公式テキストに掲載されていない分野の文化も数多く存在するはずです。例えば、国技(相撲)、宗教(神道や仏教)、書道、華道、茶道、香道、武道、アイヌや琉球文化、文化を育む要因である地理や気候、そこに生息する動植物(天然記念物など)など沢山挙げられます。他の検定(茶道文化検定、神社検定、ご当地検定)との住み分けも考慮されるでしょうが、今後さらに出題分野が広がるのではないかと予想しています。
テキストの増補はもちろん、問題集や参考図書の紹介があると、より学びやすくなるので期待したいところです。
おわりに
日本で生まれ育ち、歴史や美術の授業も受けてきて、浮世絵鑑賞も細々と10年、きもの文化検定を勉強して染織品には馴染みがあるつもりでした。しかし、いざ向き合うと、知らないことだらけで、スルーしてきた分野が沢山あることに気付かされました。「日本人なのに日本のことを知らなすぎる」と痛感しました。
文化は、知っているつもりでは届かない。日常の中に埋もれ、意識しなければ素通りしてしまうものばかりなのだなと思いました。
例えば私。
たまに浮世絵を眺めて、毎週きものを着ている。
けれど、食洗機対応の器や箸を選ぶために陶磁器や漆器コーナーは素通り。手元のスマホばかり見ていて、和紙の手触りは忘れてしまい、建物も気づかないまま通り過ぎているかも。
コンビニでペットボトルのお茶を手に取り、甘いものが苦手で和菓子は食べない。サブスク動画に浸かって、能楽や文楽、歌舞伎は遠い世界。
2級に合格した今日が、文化に触れるスタートである気がします。
文化は、ただそこにあるのではなく、意識して手を伸ばさなければ触れることはできません。
今回の受験を通して、「気づくこと」「知ること」の大切さを改めて実感しました。これを機に、もっと感度を上げ、日本の文化にしっかりとアンテナを張っていきたいと思います。