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きもの文化検定1級合格までの道のりとこれから


はじめに

2023年、きもの文化検定2級に合格しました。それをきっかけに、「次は1級に挑戦してみよう」と思い立ったのですが、1級の合格率は毎年10%程度。合格者の多くが50代60代のベテランの方々です。
きもの歴5年・着付師3年目・30代の私にとって、それはとても高い壁のように感じました。それでも「今、身近で挑戦できる『1級』はきもの文化検定しかない」と思い、挑戦を決意しました。
「落ちても仕方ない」という気持ちと「年齢は関係ない、挑戦することに意味がある」という気持ちを胸に、申込開始日にすぐ、受験申し込みを行いました。


勉強開始までのステップ

これまでの試験勉強は、4級ではテキストを眺めるだけ、3級では苦手分野のみノートにまとめ、2級では全ジャンルのノート作り+問題集2周。テキストと過去問さえあれば対策できる試験でした。

1 級はきものに関する全ての範囲から出題されます。テキストと過去問だけでは対策しきれないだろうと思いました。「合格」「80点以上」を目標に、4月末から図書館に通い始め、ゴールデンウィークには関連書籍を読み漁る日々。覚えたい内容を紙に書き出す作業は効率的ではありませんでしたが、「自分の手で書く」ことで記憶が深まったように感じます。特に、染織や文様の書籍には美しい写真や図解が多く、学ぶ楽しさを再確認しました。


過去問を解いて打ちひしがれる

6月から過去問に取り組み始めました。しかし、過去数年分を解いた時点で、自分の勉強が到底足りていないことを痛感しました。「見てもさっぱりわからない」問題が多く、頻出の傾向も見えにくい上、どの年度も新しい問題が含まれていました。「どれだけの範囲を覚えればいいの?」と途方に暮れたのを覚えています。

最終的に、過去問は3周解きました。1週目は正答率16〜43%、2週目は38〜64%、3週目は49〜76%とバラツキがあり、少しずつ正答率が上がっていることは実感していましたが、7割を超えたのは3週目の後半であったこと、まとめようと思っていたけど間に合わず手付かずのジャンルが多数あったこともあり、「勉強が間に合わなかった…」という思いを抱えながら試験日を迎えました。


まとめノートでどこでも勉強

当初は「美しくまとまったノート」を作りたかったのですが、そんな余裕はなく、見開きのページにテーマを決め、解いた問題を正誤に関係なく、どんどん書き殴るスタイルに変更しました。この方法で作ったノートは、まるで「逆引き辞典」のようになり、後から役立つものとなりました。
テーマの例
・単位
・別名
・人物名
・慣用句

これとは別で、テキストや借りてきた本を見ながら、別の切り口でまとめも行いました。
・伝産&人間国宝
・歌舞伎
・草木染
・文様
・産地
・源氏物語出題範囲 など

自分でイメージしやすい、関連付けて覚えやすい方法でまとめていきました。例えば、産地は一般的な地方区分ではなく、「五畿七道(ごきしちどう)」に分けて学ぶことで、産業や気候との関連性を意識しました。

社会人の学びでの大きな壁は「時間」です。この時間をどう生みだすかですが、定時上がりのために仕事を効率アップしたり、残業帰りでも飲み会帰りでも勉強する意思を強く持ちました。就寝が深夜になることもありましたし、仕事で疲れ切って勉強できずに寝てしまう日もありました。ノートは必ず写真に撮り、移動時間やスキマ時間に見返すなど、いつでもどこでも勉強できるように活用しました。

これまで、合格対策セミナーに参加したり、受験者同士のコミュニティに入ったことはありません。1人で独自に試験勉強を進めました。図書館通いは継続し、過去の合格者様がブログに残してくださったお薦め本はもちろん、それらに限らず染織やきものに関する本は様々読みました。パラパラ眺めた本もあれば、延長を重ねてひと夏借り続けた本もあります。図書館通いの送迎をしてくれた夫にはとても感謝しています。


試験当日

試験当日、何の参考書を持っていくか悩みましたが、最終的に自分のまとめノートを持っていきました。最後は自分がやってきたことを信じてみようと思ったのです。

東京会場は昭和女子大学。前回(2級受験時)、実は遅刻してしまい、回答用紙の記入説明の途中で息を切らしながら(しかも空腹で)入室する羽目になった経験があります。
そのため、今回は説明の始まる30分前に到着するようにし、屋外で軽食を食べながらノートを眺め、説明開始の5分前に会場へ入室しました。外で過ごしたのには理由があり、一斉入室の慌ただしい雰囲気や静まり返った雰囲気に飲み込まれるのを避けるためでした。5分前に入室しましたが、ほぼ全員が着席済で、ぱっと見渡した限り自分より年上の諸先輩方であることは明らかでした。

試験は全て記述のため、まずは問題用紙に思いつく回答を殴り書きしていきました。過去問で見たことのある問題がいくつかあったのは救いでした。わからない問題を飛ばしていきましたが、思い出したり閃いたものに戻ったりして、30分ほどで一度解き終わりました。
いったん見直しを行い、落ち着いてから、丁寧に楷書で回答用紙に清書していきました。記述問題は文章構成に悩みましたが、話が飛ばない程度に知る限りのことを記載しました。

試験では途中退席できる時間帯もあります。2級では途中退席した記憶があります。(遅刻して途中退席するなんて、さぞやる気がないように見えたことでしょう…!)
今回は「絶対知っているけど思い出せそうで思い出せないというものがあり、粘って粘って、試験終了5分前くらいに思い出すことができ、諦めなくてよかったと思いました(そこで貴重な1点を獲得)。

解答速報〜結果通知まで

解答速報が出る前、試験当日に自分でテキストや資料を見ながら独自に自己採点を行いました。試験後はけっこう手応えを感じていたものの、独自の自己採点では64点、解答速報の採点では62点(記述は各2点換算)と、どちらも1級合格ラインには届きませんでした。8点以上覆り1級合格ラインに到達するには、記述がほぼ満点であること、解答速報の内容と同義で解答したことが認められることが必要でした。
とはいえ、8点も覆ることなんて無いだろうと思い、「また1年頑張ろう、まだ30代だもの」と思っていました。

結果が来るまでとても長く感じられ、半年以上勉強していたので「忘れて待とう」という気持ちにもなれず、少しの充電期間をおいて日本伝統文化検定に挑戦したり、着付技術向上に励んでみたり、気を紛らわせながら結果を待っていました(伝検については別の記事をご覧ください)。

ポストに届いた封筒を開けると、顔写真付きの1級合格証がはいっていました。得点は75点。自己採点を大きく上回る結果に「ミラクルだ!」と思いました。自己採点を13点も上回る点数となり、やや驚いています。
記述が満点だったとしても72点にしかならないため、残り3点をどこかで「拾った」ことになります。心当たりがあるとすれば、萱草色の説明が認められたり、解答速報「締機」と自己回答「機締め」が、同義として正解扱いになったことでしょうか。何はともあれ、合格して嬉しく思います。


おわりに

合格という結果はもちろん嬉しいものですが、それ以上に、読書で得た知識や過去問に諦めず取り組んだ努力が報われたことが何よりの喜びです。この道のりそのものが、自分の学び方や積み重ねを肯定してくれたように感じています。

きもの文化検定を通じて、着物が単なる衣服ではなく、歴史と技術が息づく「生きた文化」であることを改めて実感しました。1級に合格したからといって、着付の仕事が増えるわけでも、収入が上がるわけでもありません。それでも、学んだことが自分の知識となり、心の豊かさや自己成長へとつながっています。まだまだ駆け出しの着付師ではありますが、今回の合格は自信の1つとなりそうです。

試験は一区切りを迎えましたが、手をつけられなかった分野や中途半端に終わったテーマもまだたくさんあります。これからも学びを続け、きものの世界をさらに深く知りたいと思います。また、きものを楽しむきっかけを一緒に作ったり、これから受験される方々をサポートする立場にも挑戦していきたいです。

図書館通いをサポートしてくれたり、家事手抜きでサポートしてくれた夫にはとても感謝しています。
(しかし、夫は全然きものに関心がない…ちょっと残念…笑)


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