【エッセイ】ものすごく落ち込んだ時の一冊
数日前、ショックな出来事があった。
他人に言われた一言で心を完全に乱してしまったのである。
ここ数年で一番のパンチだった。
あまりにも不快な言葉だった上に、その人の目には憎悪というか怨念というか、とにかく私に対する敵対心が思いっきり込められていて、逃げ場がなく、もろに受け取ってしまった。
その場を一旦離れたものの、恐怖で涙が止まらなかった。
そして、まだ私は引きずっている。
なかなか明るく優しい気持ちになれず、家の中でも気分の浮き沈みがあって、イヤホンをつけ、大音量の音楽で耳を塞いでいる。
ここまで気持ちが乱れると、毎回ひらく本がある。
太宰治の「人間失格」だ。
こういうと理解してくれる人が少ないのだが、私は、ものすごく落ち込んだ時に人間失格を読むと希望を見出して立ち直れる。
この本のはしがきに出てくる三葉の写真の説明を読み、太宰治のたくみな表現力に感激し、主人公の葉蔵に思いを馳せる。
自分と似ているのだ。
あいにく美貌は持ち合わせていないのだが、それ以外の醜さがまさに自分と似ている。
初めて読んだ時、世の中には自分とよく似た人がいるんだなと嬉しく感じた。
この嬉しく明るくなる感情は今でも変わらない。
私は醜さ、弱さのある人間だが、それすらも私だ。
この事実を受け入れて、また一歩踏み出そうと思う。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。執筆の励みになります。これからも日々精進してまいります。