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サーチファンド#06:私の経験(2/4) -投資先企業探し

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投資先企業探し(ソーシング)

投資家まわり(※こちら)と並行して行っていた、買収対象企業のサーチ、いわゆるソーシングについて。

ソーシングは、どのPEファンドでも苦労しているプロセスである。証券会社や銀行からの紹介、経済界に顔の利くアドバイザーから紹介、オークションへの参加、こちらから提案を持っていく積極営業・・・など、各ファンドがいろいろなアプローチをとっているが、未だにこのやり方が正解というものはないと思う。
毎年一件投資できれば及第点というPEファンドの世界だが、お眼鏡にかなうその一件を見つけるのは非常に難しい。(対象企業のサイズ等によって状況は違うと思うし、最近はだいぶ風向きが変わってきているとも聞くが)

私の活動でも、やったことは変わらず、銀行、税理士、知人やアドバイザー、M&A仲介業者、などにサーチファンドでやろうとしていることを理解してもらい案件の紹介をお願いしていた。

それぞれ、たくさん案件の紹介をいただき、軽いものも含め10社近い企業について投資検討させていただいた。
検討した企業の数が10社程度というのは、一般的な例と比較すると異常に少ないと思う。私の場合は、たまたま早いタイミングで良いご縁に恵まれたが、例えばアメリカの一般的なサーチファンドでは数百社を超える企業を検討することもある(その前の、スクリーニング対象は数千社とも)という。

極端に少ない検討期間からの考察ではあるが、結局スジの良い案件が多かったのは、知人など関係の深い先からの紹介であった。私の仕事のやり方、強み/弱み、性格などを理解してくれている方ほど、客観的な意味でも相性という意味でも良い案件を紹介していただいたと思う。

また、そもそもの「案件探し」「サーチ」という表現も少し誤解があるかもしれない。
成長可能性があり、オーナーは妥当な価格で売却の意向があり、自分が興味を持て、買収にあたっての競合もいない、などといった理想の案件はまずない。
青い鳥を探すだけでなく、自分ならではの成長戦略を考える、オーナーにささる投資条件やスキームをクリエイティブに考える、信頼を得るためのコミュニケーションを工夫する、など、自分で「案件を創る」という意識がないと、なかなか投資実行まで至るのは難しい。

ターゲット業界の選び方

「○○業界の会社をターゲットに考えているんですけど、どう思います?」
「なぜヨガの会社を選んだんですか?」
ターゲット業界の選び方についても、よく質問を受ける。

私の場合、特定の業界に専門性やこだわりがあったわけではないので、特に業界は絞らずに案件探しを行っていた。投資後にハンズオンでコミットするつもりだったので、心情的に受け入れられないビジネス(※ 完全に個人の好みの話)は辛いなと思っていたが、B2BでもB2Cでも、成長産業でも成熟産業でも、戦略的なこだわりは特になし。

強いて言えば、自分が理解できるビジネスモデルであること、という条件は無意識に持っていた。「この会社はバイオテクノロジーのこの部分がキモ」といわれても、私はちゃんと理解もできないし、貢献もできない。

と、私の場合は業界を絞らなかったが、投資後もハンズオンで多くの時間と労力を割きバリューアップを目指すつもりであれば、熱意のある分野(もしくはどうしても興味の持てない分野)を曖昧にせずに明確に意識して活動した方が、あとあと手戻りや後悔がないと思う。その分、対象となる企業の数は当然少なくなるが。

足元の仕事で信頼を得ておくこと

徹夜したからといって新しい案件が出てくるわけでもないのが、ソーシングの難しさの一つだと思う。一方で、「ファンド活動をやっています」と宣言し、ただ待っていてもしょうがない。
縁とタイミング的な要素は小さくないと思うが、それを引き寄せるには、月並みではあるが、日々の仕事を誠実にやり、成果を出し、信頼を得ておくこと、といったことが基本であり大事だと思う。

ヨギー買収後も引き続き案件の紹介をいただけたのも、実績というか少なからず信頼が増えた結果かもしれない。(結局、ハンズオンでコミットしていたため、手がまわらずマイノリティ投資を一件できただけだったが)

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サーチファンドに関する他のnoteはこちら
01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち
02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、スキル
05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり
07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営
09:日本でのサーチファンド浸透のために

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました


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