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企業文化が不良資産に見えるとき

資産を活かすためのM&A

事業承継やM&Aの目的の一つは、ゼロから事業を立ち上げるより、せっかく既存の事業基盤があるのならそれを活用しようということだと思います。

ゼロから商品・サービスを作り、顧客を開拓し、ブランドを育成し・・というのは時間やお金がかかるだけでなく、手間暇をかけた挙句うまくいかないリスクもあります。
だったら、既存の事業や資産を買って、そこから改善するなり成長させるなりした方が効率的だろうと。
「M&Aで時間を買う」という言い方もされますね。

頭の中では、
「あのアセットを活かしてこうすればうまくいく」
「いいブランドがあるのだから○○を強化すればいいだけ」
と、戦略を描くのは難しくないと思います。とくに中小企業においては、一見して分かりやすい課題がある場合が多く、既存の事業基盤を活かしながら新しい戦略や改善を行うことは効率的に見えるでしょう。

簡単な戦略を実行するのは、簡単ではない

が、簡単に見えた戦略や事業計画を実行するのは、実は非常に難しい。

経験のない人にはなかなか理解されないのですが、戦略という大げさなものでなくとも、例えば、
「ファックスをやめてメールにする」
「資料を読み上げるだけの会議をやめる」
「新しいことを始めるときは、目的と目標を持つ」
「黒字化の見込みのない取り組みをやめる」
「会社への貢献度合いに応じた人事評価をする」

など、一見あたり前で簡単にみえることを実行するのが、意外と難しい。
うまくいかない。

企業文化が不良資産に見える

この実行の難しさは、経営者による企業文化の理解不足や軽視によるところが大きいと感じています。

「やり方さえ変えれば良くなるのが分かったのに、なぜやらないのか・・」
「社長がOK出しているのに、なぜか動いてくれない」
「これなら、話の通じる友人とゼロから創った方が早い」

と、明らかに答えが見えている(と経営者が思っている)場合でも、企業文化との折り合いがうまくつけられず、苦労している中小企業の経営者を見ることは少なくありません。

特にM&Aによってトップについた経営者は、どうしても企業文化への理解が浅く、また軽視しがちでもあり、この課題に直面することが多いようです。

こういった状況にある経営者と話していると、価値ある資産であるはずの企業文化が、不良資産にも見えてしまっているのだなあと感じます。時間を買うため、効率的な事業展開のためのM&Aだったはずが、返って遠回りになってしまうケースは珍しいことではありません。

中小企業M&Aと企業文化

こういった文化の問題は、企業のステージによらない話だとは思いますが、中小企業のM&Aの現場では特にこの問題が表面化することが多い印象があります。

・外部の人材からみると分かりやすい課題があることが多く、これまでのやり方を否定しやすい
・エリートキャリアの新しい経営者が、中小企業を下に見がち
・トップと現場の距離が近いだけに、一見して改革することは難しくないと感じられる
・強みや差別化の要因が、仕組みではなく人に属していることが多い

といったことが要因だと考えています。

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「ボトムアップか、トップダウンか」
「年功序列か、実力主義か」
「合意主義か、責任者主義か」
「体育会系か、文科系か」

企業文化に正解はないと思います。既存の文化を活かすのも、変えるのもアリでしょう。いずれにせよ、成果に結びつけるまでが経営者の仕事です。
組織が動かないのであれば、文化が悪いのではなく、あなたのやり方が悪いのです。いくら戦略が正しくても意味がありません。

M&A前のデューディリジェンスや買収後のPMIでは、戦略や事業計画に頭をひねることも大事ですが、それと同じくらい(もしくはそれ以上に)企業文化や人材といかに向き合うかの方が、よほど難しく、かつ成果に直結すると感じます。

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