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サーチファンド#09:日本でのサーチファンド浸透のために

サーチファンドの概要はこちら

アメリカでのサーチファンドのエコシステム

私がサーチファンド活動を行った2014年、「サーチファンドというものがありまして・・・」から説明しないといけない日本で、投資家からのコミットを得るのは難しかった。

一方、30年以上サーチファンドの歴史のあるアメリカでは、サーチファンドに投資をするファンドというのが多数存在する。例えば、
SearchFundPartners: https://searchfunds.net/
Relay Investments: https://www.relayinvestments.com/
Ohana Capital:  https://www.ohanacap.com/
Anacapa Partners:  https://anacapapartners.com/

このようなサーチファンド向けのファンドは、元サーチャーが設立したケースが多い。サーチファンドで成功したサーチャーが、後進のためにサーチファンドに投資するファンドを設立することで、サーチファンドのエコシステムが育成されてきた。
元サーチャーなので、当然サーチファンドのコンセプトは理解しているし、サーチャーが必要としているサポートや、成功のための勘所も熟知している。これから活動を始めるサーチャーにとって、先輩たちが応援してくれる環境があることは非常に心強いと思う。

日本においても、今後このような経験者/理解者によるファンドやサポート組織が生まれてくるとサーチファンドの活動が一気に活性化する可能性もあるだろう。

日本におけるサーチファンド活動のいま

サーチファンドの普及に向けて、日本でも活動を開始した組織もある。
例えば、Japan Search Fund Acceleratorは、山口フィナンシャルグループとともにファンドを設立しサーチファンド活動を促進・支援する活動を開始している。セミナー等も開催し、サーチファンドの普及に向けて精力的に活動している。

またサーチファンドという言葉は使わなくても、個人活動や事業の一環で(時には本人も意識していなくても)、似たような仕組みで動いている人たちは多数存在する。また買収対象とする事業も、普通の中小企業だったり新規事業よりの企業だったりグラデーションがみられる。

M&A仲介サービスの広がりや金融機関の事業承継支援など、中小企業M&Aの機運は高まってきており、サーチファンドという形式でも異なる形でも、個人で中小企業M&Aを推進できる環境はずいぶん整ってきていると感じる。

日本に合った仕組み

個人的には、なんらか名称がつくことで概念が認知され、その概念が活性化していく効果は大きいと思っているので、(思い入れも含めて)「サーチファンド」の名で活動が活性化するとよいなと思う。
一方で、スタンダードなサーチファンドの形式が個人M&Aの最適なかたちかと言われると、もっと効率的・効果的なやり方を工夫できる余地は大きいと思う。

私自身、結局はスタンダードなサーチファンドとは異なる形での企業買収となった経験も踏まえ、工夫の余地があると思われるポイントを挙げてみたい。

サーチ活動は兼業・副業で
フルタイムでサーチ活動を行うのは効率が悪いかもしれない。おそらく、毎日忙しくするほどの案件が出てくるわけでもなく、サーチファンドを目指したい人材が満足するレベルの生活費(サーチフィー)を得て、それに見合う活動ができるかと言われると疑問である。
それより、別の仕事をしながら副業的にサーチ活動を行うくらいがちょうどよいかもしれない。それでも、本気になれば適切な活動ができると思う。また、活動するうちに「やっぱり向いていなかった・・」と思っても、キャリアリスクも避けられるし、別の仕事を持っていることで心理的な安心感も得られるだろう。

サーチャーの伴走者
M&A仲介サービスの広がりや金融機関・投資家の機運など、中小企業M&Aをやりやすい環境は整いつつあると感じる。
その中で、サーチファンド・個人M&A拡大のネックの一つはサーチャー側のすそ野の広さだと感じている。投資先の選定から、投資スキームの検討、買収後の経営まで、サーチファンドに必要な経験・スキルのすべてを一人で完璧に備えるのは簡単ではない。完ぺきなサーチャーの出現を前提とするのではなく、足りない経験を補えるサポーターが伴走してくれる環境が整ってくるとサーチャーとして活躍できる潜在層は大きく広がると思う。

ファンド(組合)という形式にこだわらない
事務的な面では、いわゆる「ファンド(組合)」という形式が最適なのかは検討の余地が大きいと思う。スタンダードなサーチファンド形式・契約を踏襲しようと思うと組合が最適だと思うし、私も投資事業有限責任組合の仕組みを活用した。が、常に組合形式が最適とは限らない。株式会社をSPCとして活用することも可能だし、直接投資家が対象会社のオーナーから株式を買い取ることも可能かもしれない。
もちろん、関係者の求める条件やリテラシー次第ではあるが、スキームの部分でもクリエイティブに考える余地は大きい。

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他にも、個人活動と会社所属の中間のようなチームの組み方もあるかもしれないし、株式を買収するだけでなく株主間契約で代表指名権をもらう/ストックオプションで経済的なリターンを確保するなど、実質的にオーナーシップとリターンを得られる別のスキームもあるかもしれない。
もともとサーチファンド自体が新しい投資スキームの発明だったように、また新しい仕組みが生まれる余地は無限にあるはずである。

一連のnoteで、さんざんスタンダードな仕組みを紹介しておいて身も蓋もないが・・・要は、「個人が中小企業のオーナー経営者として活躍する」ことが目的であり、「サーチファンドだからこうでなくては」という形式にとらわれる必要はない。柔軟な形で、Inspired by Search Fund の活動を模索していってほしいと思う。

最後に

サーチファンドという非常にニッチなテーマのこのnoteですが、思ったよりも反応やご連絡を頂き、戸惑いつつうれしく思っています。
ありがとうございます。

前向きな反応に感化され、改めて自分の経験を振り返る機会にもなり、サーチファンドや中小企業M&Aの活動を再開しようかとも考えています。今度は、一人でというよりは複数のサーチャーに伴走できる形で。
準備でき次第noteやtwitter等で発信していくと思いますので、ご興味のある方はつながっておいていただければ幸いです。

どんなやり方であれば最も価値をだせるか、試行錯誤しながらになると思いますが、何かお役に立てそうな方、一緒に活動してみたい方がいらっしゃれば、よろしくお願いいたします。

伊藤公健

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サーチファンドに関する他のnoteはこちら
01:個人が中小企業をM&Aする新しいアントレプレナーシップのかたち
02:サーチファンドのはじまりと成功事例
03:データでみるサーチファンドの広がり、実績、リターン
04:サーチファンドに必要なバックグラウンド、スキル
05:私の経験(1/4) -きっかけ、投資家まわり
06:私の経験(2/4) -投資対象企業探し
07:私の経験(3/4) -ファンド設立・運用の実務と意味
08:私の経験(4/4) -ヨギーとの出会い、投資実行、経営

追記:
サーチファンド・ジャパンを設立しました

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