ビールの苦味・食べ物の苦味【食べ物のことについて毎日考えてみた】
金曜日。もうビール飲んだって人も多いんじゃないでしょうか?
ビールは喉越し!と言う方もいれば、苦味がいいんだよ〜いやいや華やかな香りのがいいんでしょ〜なんて、ビールの楽しみ方は人それぞれですね。
僕は苦ーいビール好きなんですが、ビールってなんで苦いんでしょう?
ビールの苦味成分
あのビールの苦味はホップに含まれる苦味成分によるものなんです。
ホップの毬花(雌花)に存在するルプリンと呼ばれる黄色の粒子に含まれるフムロン(α酸)が、ビール醸造中に煮沸されてイソフムロン(イソα酸)へと異性化される。イソα酸こそがビールの苦味を感じさせる成分なんです。
このイソα酸は、泡の安定性にも関与しているので、ホップを使わないで醸造したビールの安定性は極端に低下するそうです。
さてここで、イソα酸と泡が仲良しと聞いて何か思い当たることがありませんか?
思いつかないなぁと言う人はちょっとイメージしてもらいましょう。今あなたの目の前に冷えた「インドの青鬼」があったとしましょう。
缶をプシュッと開け、そのまま口をつけてごくりと飲んでみます。うぉ苦い!と叫ぶほどの苦みを感じます。缶を開けた勢いで一口飲んじゃいましたが、いややはりグラスに注いで色も楽しみながら飲んでみようと今度はグラスに泡を立てながら注いで飲んでみます。
するとどうでしょう?缶から直接飲んだときよりも苦味がマイルドになっている気がします。
これは泡を立てて注ぐことで苦味成分のイソα酸が泡の中に多く含まれるようになるので、液体から感じる苦味が減ったためです。飲み進めていくうちに泡が消えていき、苦味成分が液体の方にも移行することで、注いだ当初とは苦味の感じた方も変わります。
この苦味の変化を楽しむビールの注ぎ方があって「三度注ぎ」というそうです。
泡をしっかり立ててあげることで、最初はマイルドな苦みを感じ、飲みすすめていくうちに段々と味の変化も楽しめるビールの注ぎ方なんですね。
美味しく飲める三度注ぎは僕も実践します。一方で苦みを感じたいなぁと言う時には缶から飲むこともあります。苦味の感じ方を知ることで、ビールの楽しみ方も増えるんじゃないでしょうか?
ビール以外の食品の苦味成分
苦味成分は毒性を示すことが多いので、本能的に警戒できるように動物では極めて低い値で感じることができるようになっているといいます。ただし、ビールのように適度な苦味は食品の「味」を構成する上で重要にもなるので、苦味成分を含む食品は案外身の回りにたくさんあります。
コーヒーに含まれるカフェイン、柑橘類に含まれるフラボノイドのナリンギン、リモノイドのリモニン・ノミリン、キュウリに含まれるククルビタシンも苦味を感じる物質です。そのほかロイシンやイソロイシンなど苦いアミノ酸もあります。
味の相互作用「相殺効果」
味には「相殺効果」という味の異なる物質が一緒に存在することで、一方の味が他方の味を弱める現象があります。苦味は甘味によって弱められるので、コーヒーに砂糖を入れると苦味がマイルドになるんですねぇ。
最後に
ビールの泡に続いて、コーヒーの苦味もマイルドにするお話に最後はなりましたが、今日はビールや食品に含まれる苦味のお話でした。以前埼玉県毛呂山町の桂木ゆずのお話をしました。
「桂木ゆず」も含めて、柚子の種子には苦味成分のリモノイドがたくさん含まれています。城西大学薬学部医療栄養学科では、柚子を種子も果皮も丸ごとペーストにして、リモノイドによる苦味を存分に感じてもらう商品をたくさん開発しています。
商品に関する詳しいお話はまた今度。
ぜひ皆さんもビールの苦味、食品の苦味楽しんでみて下さい。
【参考文献】
蛸井 潔 ビールの泡 日本醸造協会誌 111巻4号 p195-203, 2016年
食品学ー食品成分と機能性ー 久保田紀久枝・森光康次郎 東京化学同人
エッセンシャル食品化学 中村宜督・榊原啓之・室田 佳恵子 講談社