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ちょっと黙っててくれませんか?


ピロン。


LINEが来た音が鳴った。

今日も息子が理不尽な目に遭ったことを伝えてくる内容だろう。


私が占い師だと知っているママ友がいる。


彼女から「占って!(できたら無料で)」と頼まれたことはない。だけれど、占い師だからこそ辛いときは話を聞いてもらえる、聞いてほしいと思う彼女から、心の内をLINEでつらつらと書いた長文のメッセージが送られてくる。

それもけっこう頻繁に、だ。

内容としては、「子どもが嫌な目にあった」というのが一番多い。

クラスメイトから、学校の先生から、クラブ活動のメンバーから、友達だと思ってた子から。

相手はまあいろいろ出てくる。

そのたびに、「ねえ、聞いて!」とLINEで長々と状況説明から始まって、「どんな気持ちになったか」を吐き出してきては、私に何かを求めてくる。

それは、「大変だったね」だったり、「ひどいね!」だったり。優しい声掛けを求めているのは分かる。


だけれど、


「ちょっと黙ってて」


そんな思いが頭をよぎるのは、LINEが鳴ってメッセージが彼女からだとわかった数秒のこと。

もちろんそんなことを口に出すことはない。

ママ友は悩んでいる。

子どもの問題に真摯に向き合おうとしているのは分かる。


だから私は、「そうなんだ。それは大変だったね。」スマホに指を乗せ、メッセージを打ち込む。

その返答に対して、「聞いてくれてありがとう」という返信が必ずあるわけでもないのに。


聞いてあげること、ただそれ自体が彼女の心を救うのかもしれない。そう思うと、この小さな返信でも意味があるのだろう。

ただ、占い師の仕事として人の話を聞くことと、ママ友の話を聞くことは同じではない。占い師では仕事としてお話を聞かせてもらう姿勢なのに対して、ママ友のは私個人の感情が入ってしまう。
だから、頻繁にLINEが続くとさすがに「いい加減にしてくれ」となってしまう。わかってくれたらありがたい。


「私も疲れているんだけどな」

心の中で小さくつぶやきながらも、無視することはしない。子どもの問題に真剣に向き合おうとしている彼女の気持ちはよくわかるから。それに対して、「返事が億劫」と思う自分も冷たいとは思わない。

聞いてあげるだけじゃ彼女の問題は解決しないことも、わかってはいるけど彼女に伝えても意味がないのも知っている。

そんな風に思いつつ、次に送るべきメッセージの文面を考え始める。
今日はやめた。明日返事しよう。


そうだな、メッセージはこれにしよう。

「まあ、落ち着こうか」



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