短編小説「拝む街びと」 -前編-
この街では、猫だけは飼ってはいけない。
猫だけは、野良猫にして待ち人全員で育てるルールがある。
この街との出会いは至って普通だ。
和と洋が混ざる独特の雰囲気の町をネットで見かけ週末に観光がてら行ってみることにした。
街の入り口では大きな門があり、門前の看板には「ペトラスへようこそ」と書かれている。
ペトラスでは、猫を神聖な神々しい神聖な動物として讃えるようだ。そして、それに従う者のみが住居人として認められている。
猫が道路を通り過ぎると、歩行者は立ち止まり、車も運転速度を静め、人々は一礼二拝をする。
私も「ローマに行ってはローマに従え」と言わんばかり意味もわからず一礼と二拝をしっかりする。猫は頷き、街を通り過ぎ門を曲がり姿をくらます。
この街に住む猫は、頭を凛と上に向けて、ゆっくりと品のある歩みで辺りをうろつく。自分自身で称えられる者としての自覚があるのだ。
街並みはと言うと新鮮なものだ。外壁は煉瓦造りだが、窓は和紙でできていて円形の窓で統一されている。
土地の広さがないためか、住宅街は連なっているが、公衆トイレも全て和式で、トイレ前には男女のマークだけでなく猫のロゴも掲げてある。
電車やバスの優先席も猫を始めとしたロゴが催されている。なんとも異空間で興味が湧いてくる。
どんな歴史がある街なんだろうか。歴史サイトで検索した時に出てきた情報によると、
その昔、この街と隣接する街では領土争いの戦争が100年続いていた。
両国ともに兵力を失ってもう誰のための戦争かわからない状態に陥っていた。最後の99年目には、動物までもが最前線で戦いの武器として扱われた。
その中でラファエルいう中の猫戦士がいた。ラファエルはどの人間、動物よりも素早く、隣国の情報を聞き出しては彼なりの伝え方で情報を漏えいした。伝書鳩よりも早く、戦闘では大活躍だった彼はある日一言を口にした。
「ニャー、ニャニャ」
猫語専門家は彼の伝えたいことを訳した。
「お腹が空いては戦はできない。みんなお腹が空いている」
大佐は驚いた。そういうことか。これまで何千人ともいう兵士を前線に送り、戦略を練っては破れていた戦い。敵国としては、空腹な兵士が増えれば、戦いも有利になる。
「でかしたぞ、ラファエル」
大佐は猫の頭を撫で、新たな戦略を立てた。その戦略とは敵国に偽装した戦士を送り全ての食料を奪うことだった。
敵国の兵力を下げ、奪った食料は自国の兵士や民に配るり、国力を上げることが目的だった。
そして戦いの日がやってきた。
後編へ続く...
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