伊勢物語を原文でさらに読み進めた(3)
伊勢物語、二四 梓弓」まで来たよ。
ふむふむ、案外、読めるなあ。
男と女の、互いの思う心の入れ違い。どちらへも同情してしまう。
片田舎から仕事で京へ行って三年留守にしてた間に、女は別の男に求婚されて、なんとなくオッケーしてしまったんだねえ。あることよね。
そこへ男が帰ってきたんよね。男は、辛かったけど、女のことを思って、あきらめたんよね。最後に一言、さよなら、幸せにね、と言って立ち去ったんよね。
そしたら、女は、男への今までたまってた思いがあふれて出してきて、男を追いかけたんよね。
あひ思はで 離(か)れぬる人を とどめかね わが身は今ぞ 消えはてぬめる
本心は、お互い、思い合ってたのに、
女は「あひ思はで」って、思ってしまって、別の男に許してしまったんんね。
「離れぬる」って言うけど、男は女の幸せを思って、離れていったんよね。
「とどめかね」。男は後ろ髪引かれながら、それでも、女に追い付かれないように、きっと、泣きながら、後ろも振り向かず、走りつづけたんよね。
「消えはてぬめり」。女は体力尽き果てて、清水の涌くところに倒れて、死んだわけじゃなくて、「ぬめり」、死ぬかと思うほど、悲しくて、泣き続けたんよね。本には「むなしくなってしまった」ってあるけど、私は、死んではないなあ、と読んだ。
伊勢は、悪戦苦闘した源氏とは違うよ。
源氏物語は、多くの登場人物が複雑に絡み合うから、系図といつもにらめっこ。
主語が誰なのか、言葉遣いから判断しないといけない。
さらに、引歌表現が次から次へと出てくる。これこそが源氏物語の奥深さなんだけど、読み手には非常に手強い。引歌そのものを読み落とすことすらしばしば。
伊勢物語は、それに比べて、シンプルだ。
昔、男がいた。そして、女がいた。
「昔」って、昔のことよね。いつの頃かはよくわからないけど、とにかく、むかーし、のことよね。
「男」って、とにかく、男のことよね。在原業平のことなんか、無視してもいいよね。男って、大なり小なり、おんなじ習性をもってるもの。
そして、「女」がいるんよね。男がいて、そして、女がいたら、昔も、今も、ただでは済まないよね。なんか、事件が発生するもんよね。
男がいて、そして女がいて、と言われたら、それだけで、次に展開する話を期待してしまうもの。
伊勢物語、意外に読めて、面白いなあ。