「Loretta」の持つ引力
※この記事には「Loretta」のネタバレが含まれています。
「Loretta」をプレイした感想です。
PS5版をプレイしました。
Ginger Rootのキラーチューンと同じタイトルというきっかけで興味を持ち、なんとなく勢いで購入しましたが、とても良い体験になりました。
良質な翻訳
全編通して日本語訳に問題が無く…というかかなり良質な部類だと思う。
ほんの一部、文字化けや発言者とセリフ合ってなくない?という箇所もありましたが。
プレイする上ではほとんど問題なかった(そもそも表示上の問題ってだけで、翻訳自体のミスではなさそう)。
物語が主体となっているゲームなので、日本語訳のクオリティは本当に重要。
そういった意味で、最大限の言語サポートを提供してくれていると感じました。
映画や文学作品のような語り口
演出やセリフ回しなど、ゲームのそれを超えて映画を観ているような、あるいは小説を読んでいるような感覚に陥ることがままあった。
ドットを基調としたグラフィックからは想像しにくいかもしれないが、プレイしてみるとそんな気分になると思う。
実際には映画も小説も楽しまなくなって久しい自分だが(なんか触れるのがタルい)、ゲームを通してそういったものに触れた気になるのが不思議だ。
あらすじ
1940年代のアメリカが舞台。
主人公ロレッタは転落人生の最中、夫の不貞、そして夫が秘密裏に契約する大口生命保険の存在に気付く。
その日を境にロレッタの運命は大きく狂っていき…といった具合だ。
かつては華やかなニューヨークに住んでいたロレッタだが、夫の仕事やギャンブルに振り回され、物語の開始時点で南部の田舎に転居を余儀なくされている。
そんな彼女の過去のトラウマや周囲へのコンプレックス、そして募りに募った不満を解き明かしながら、ノンストップで転がる悲劇の連続を体験していく…そんなアドベンチャーゲームだ。
ロレッタへの共感
本項以降はゲームの内容にガンガン触れていくので注意。
夫ウォルターの殺害をきっかけにタガが外れ、出会う人すべてに殺害チャンスを見出してしまうロレッタだが、プレイヤーが共感を持つことの出来ない完全にやべーキャラクター…とも言い切れない。
あらすじに書いた通り、ロレッタは転落人生の最中にいる。
ウォルターに人生を振り回されてしまっているのは(彼女視点の語り口というのもあり)ひしひしと伝わってくるし、男尊女卑が横行する時代背景だったり、冒頭から割とロレッタに感情移入してしまう。
本人の努力次第でもっとマシな人生になった…かどうかは正直怪しいと思う(ロレッタはそのあたり後悔してるようなフシもあったかと記憶しているが)。
何より、ロレッタがイカれたシリアルキラーになるかどうかはプレイヤー次第。
ロレッタのロールプレイをする過程で、「プレイヤーの納得のいく殺人」が行われるかどうかで、ロレッタへの共感度合いも変化していくと思う。
サイコホラー的演出がめっちゃ怖い
ロレッタの精神は全編通して不安定である。
かと思えば武器を手にしたら相手に一直線、という強い側面もあるわけだが…。
そんな彼女の精神世界や、殺人事件がテーマとして扱われていることもあり作品の雰囲気はずっと不穏。
いつ何が飛び出してくるか、恐怖と戦いながらプレイすることになると思う。
ヘッドホンをつけてプレイしたが、音響による不穏さの演出に完全にやられてしまった。
それでも、物語やロレッタというキャラクターが魅力的で、ゲームにひきつけられてしまう。
1周クリアするのに3時間程度のボリュームなので、人によってはプレイ開始から一気にクリアまでいってしまうだろう。
1周目のルート
書いてある項目が分岐点かどうかはわかりません。
チャンバースを毒殺しない
(ここで殺害したら色々変わりそう)
↓
保安官を襲わない
↓
バーでマッチボックスに書かれた番号に電話する
↓
(土地の境界について聞く orの選択肢)
偶然に任せる
(ここの選択は重要そう)
↓
ケリーを殺害しない
↓
チャンバースを殺害しない
(このあと死んじゃうけど)
↓
フィッツジェラルドを殺害しない
↓
見知らぬ男を殺害する
(ロレッタ宅に侵入した人。悪人ってわけではなさそうではあった)
↓
マーガレットを殺害する
↓
独房へ
といった具合にプレイした。
ロレッタの当初の目的、保険金を手に入れる為に行動し、それの障害になりそうな人間は殺害するというスタンス。
ハッピーエンドは無い、というのが分かっていたので、状況を好転させたい…というよりはロレッタだったらどうするのかなと想像を働かせながら、楽しくプレイ出来た。
他のエンディングも見てみたい一方で、試してない選択肢を選ぶ、というプレイは作業感を伴いそうだ。
感情移入して、ロレッタに引き寄せられるようにプレイするという体験は1周目が最初で最後な気がする。
好きなシーン
見知らぬ男に襲われ、煙突に手錠で繋がれてしまうロレッタ。
手錠を解錠し、見知らぬ男のもとへと向かうシーンが好き。
ここは「この女強え〜」となる面白シーンでもあるが、作品を象徴するシーンでもあると思う。
「自分の人生」を台無しにされ、クソ田舎に縛りつけられる地獄のような日々を送ってきたロレッタの、心からの叫び。
保険金を手にして高飛びという計画を、ロレッタ本人がどの程度実現可能だと思っていたかは分からないが、そこに至るまでに起こした一連の行動には「彼女の自由」があったと思う。
おわりに
普段やらないジャンルのゲームということもあり、勢いで買った割に色々…個人的にはチャレンジな部分が多かったですが、プレイして良かったです。
プレイ時間に依らず心に爪痕を残してくれたゲーム体験でした。
今回の記事は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。