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#4 寝坊で単位と信頼を落とす / 大2

2年の冬。
ドキッとし、目を覚ましました。

時間を確認しようと思い、携帯電話を見ると、70件の着信がありました。その瞬間、「終わった」と思いました。


大学入学前から受講したいと思っていた、
プロの俳優やスタッフと学生が共同で劇場用映画を製作するというプロジェクト。

一年を通じて行われるプロジェクトで、私は2年生の時に携わりました。正確にいうと、フライングして1年の終わりから、監督の側でプロットの話を聞いていました。


雲行きが怪しくなったのは、10月。

キャパオーバーになってしまいました。
プロジェクト以外に、教養・専門、ゼミの撮影がありました。特に私を苦しめたのはゼミの撮影です。

撮影は、10月スタートでした。土日ほぼ撮影で、1ヶ月乗り切ったと思ったら、画の面白みが何もないと先生から指摘され、クランクアップの翌日が、再クランクインになりました。

はっ?
また撮影場所を抑えるの?!

私は制作部で、撮影がスムーズに進むための裏方になります。
ロケハン、撮影の交渉・許可取り、香盤表作成、スケジュール作成など。

ゼミが長引いて両立が難しくなってしまったのです。

私がいないとスタッフがまとまらないと、ゼミの先生からプレッシャーをかけられました。

ゼミの撮影で抜けると、プロジェクトで担当する私の穴埋めだったり、参加できない時にどういうことがあったのか話を聞いたり、いろんな人に負担をかけていました。

しかし、どちらを取るか決めきれませんでした。

内心、プロジェクトをやめたいと思っていました。

同期がみんな熱く、輪に入れなかったからです。ゼミの先生や監督の評判が悪く、その中にいる私も良いように思われていませんでした。
参加が少ない、発言しない、積極的ではない、そんな人を仲間外れにする風潮がありました。必死に食らいつく感じで頑張っていたと思います。

踏ん切りがつかなかった理由としては、少し前にやめた男子が、監督に蹴りをくらい脚にアザができた話をしており、怖すぎたからです。

嫌々ながらプロジェクトに行き、合間でゼミの撮影に励む。
これしか方法がありませんでした。


運命の2月。

プロジェクトの最終打ち合わせが終わり、夜中0時に解散。
荷物などを準備し、3時に大学集合という過密スケジュール。

絶対寝ると思い、私は、映画を見続けました。

しかし、いつの間にか、ベッドで寝ていました。


そして、目を覚ました時は朝でした。
嫌な汗がどんどん出てきました。

監督からも、プロジェクトメンバーからも、着信がありました。折り返しはせず、こたつで丸くなっていると、昼頃、監督から電話がありました。

すみません、頭が痛くて行けませんでした。

嘘をつきました。
短い返事の後、電話が切れました。

泊まり込みの撮影で、期間は約3週間。
後からいける場所でもないので、吹っ切れて学校生活を送っていました。

プロジェクトメンバーと顔を合わせる必要がなく、安堵している自分がいました。顔色をうかがっていたかもしれません。

仲のいい友達はみな、プロジェクトに参加しない子ばかりだったので、居心地がよかったです。


監督が撮影から戻ってきた日、
プロジェクトを降りたいと告げました。

とっても怖かったです。

まだチャンスはあると引き留められましたが、さすがに、断りました。

プロジェクトメンバーに、「あ~、寝坊で単位も信頼も落としちゃったね」と言われましたが、一人置き去りにされながら参加するぐらいなら、辞退したほうがマシと思ってしまいました。

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