中国短期留学④自己主張しないと生きていくのが難しい
北京で生活していて、一番のカルチャーショックは「ここでは、自己主張しないと誰も相手にしてくれない」ということだった。
大学の食堂での出来事
北京大学の食堂でご飯を食べようと思い、カウンターの近くで並んで待っていた。
しかし、いくら待っても店員さんに「次の方、どうぞ」と言われない。
それどころか、店員さんはこっちを見てくれさえしない。
さらに、並んでいた私を無視して、前から後ろから、いろんな学生が私を追い抜いてカウンターで注文していく。
ここでようやく私は悟った。
中国では列に並ばないと言われていたけど、そういうことかと思った。
先に言った者勝ちなのだ。もたもたしていたら、追い抜かれてしまうし誰も相手にしてくれない。
思いきって、私は拙い中国語で「これ、ください」と言ってメニューの中から料理を一つ注文した。
そこでようやく店員さんに認識してもらえ、無事に昼食にありつけることができた。
円明園はチケットの取り合い
北京に円明園があることを知って、友達と行くことにした。高校の教科書に載っていたあの円明園に行けるなんて!とワクワクした気持ちでいっぱいだった。
しかし、話によると円明園は昔めちゃくちゃに壊されたので、あまり見ごたえのあるものは残っていないとのこと。
それでも、教科書に載っていた施設なのだから行ってみたかった。
そんなに人気なさそうな雰囲気を感じたので、空いているかと思ったけれど、行ってみるとチケット売場の混んでいること!
日本のような混み具合とは少し違う。
列を作って大人しく並んでいないのだ。
チケット売場で片言の中国語と英語を駆使してなんとかチケットを買おうとしたが、売場のおばさんが言っている言葉がわからない。
もたもたしていると、後ろから違う客の手がにゅっと伸びてきて、チケットを買っていった。
呆然としていると、どんどん後ろから他のお客さんたちの手が伸びてきてチケットを買っていく。
チケット売場のおばさんは、後ろから来る客を叱ることなく、当然のように手際よくチケットを売っていく。
ボーッとしている私は明らかに邪魔になり、その場から追い出された。
追い出された後、チケット売場を見るとチケット売場窓口に人が殺到している。誰も並んでいる人はいなかった。
思いきってもう一度大きな声で「大人二枚ください」と中国語で言った気がする。そしたら、なんとかチケットを買うことができた。
この国では、「もじもじ、もたもた」は置いていかれる。「大きな声で、はきはき」、これが生きる術なのだと身をもって感じた。
日本では自己主張が過ぎると「自己中」と言われて嫌われるが、中国ではちょっとやりすぎかな、くらいが普通のようだった。(もちろん、今は少し変わってきていて列に並ぶ人が増えているそうです。)
おまけ 諦めないおじさん
たまたま元北京オリンピックの会場の近くまで来たことがある。
中に入りたかったのだが、もう夕方だったので、施設はもうすぐ閉園という時間帯だった。
チケット売場もどんどんシャッターを降ろし始めている。
すると、シャッターを閉めたチケット売場で、いつまでも粘っているおじさんがいた。
中国語で何か叫んで、シャッターを下から覗き込み、カウンターを手で叩いている。
「あの人、どうしたんだろう?」
と私が言うと、一緒にいた友達が
「遠くからはるばるやってきたんだから、閉園時間過ぎたってちょっとくらいいいだろ!って言ってるんじゃない?」
と、推測した。
真相は不明だが、あのおじさんは北京オリンピックの会場に無事に入ることができたのだろうか。