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「大江大河~大いなる夢への挑戦~」を見た衝撃

 私は中国の歴史の中で、どの時代に一番興味があるかといえば、文化大革命前後の時代が好きです。
 
 それを知っている夫は、ついに文化大革命後のドラマを勧めてきました。

 それが、『大江大河~大いなる夢への挑戦~』です。


この三人の男性を中心に物語が進む

 

 このドラマは、「みるアジア」という動画アプリで独占配信しています。
 この動画アプリは、日中の字幕がつくので、中国語を学習する上では非常に役立ちます。ところが、2025年3月31日にサービス終了するそうです。残念。


あらすじ

 文化大革命以降の1970年代を舞台に、改革解放の波に乗り、激動の時代を生きた三人の男性の人生を中心に描く。

宋运辉(写真中央)


 漢方医の父を持つため、文革時は身分が低く、不当な扱いを受けていた。よって、文革が終わったあとも、優秀な成績で大学に合格しても、なかなか進学を許してもらえない。結局、一緒に合格した姉が辞退した代わりに、弟の宋运辉が進学することになる。
 大学ではトップの成績を修め、金州の工場に技術者として働くことになる。
 大企業で働く人、代表。

 王凯という俳優さんが演じていますが、王凯といえば『琅琊榜』の靖王。髪型も身なりも全く違うので、最初は気づきませんでした。何せ、はじめはボロを着ていましたし、短髪で眼鏡をかけていましたから。

 靖王も宋運輝も、堅実で真面目な性格です。そういう役が多いのかもしれませんね。
 それにしても、精悍な皇子から、ガチ理系技術者まで、いろいろな役を演じきれる王凯はすごい俳優さんです。興味をもちました。

優秀な弟と弟のために頑張る姉といえば

 宋運輝は高校に通えず、独学で大学にトップの成績で合格したという秀才。そして、そんな彼を支えているのは姉の運萍。運萍も優秀ですが、弟のために大学に行くのを辞退します。とにかく弟思いなお姉さん。弟の姉に対する愛情も深く、いつも何かと気にかけています。『スパイファミリー』のヨルとユーリを彷彿とさせました。

 ということは、後に事故死した運萍をめぐって、義兄の雷东宝と対立するのは想像がつきます。

开顔との関係が不安

 後に妻となる开顔という女性がいます。
 しかし、第二部で離婚してしまいます(娘いるのに)。

 第一部ですでに離婚に至る不安要素がポツリポツリと出てきます。たとえば、宋運輝が元教え子のアメリカ留学生と文通している姿を見て开顔が拗ねていたり、宋運輝と違って开顔はあまり勉強熱心でないなどです。

 そもそも、はじめは开顔が自ら進んで宋運輝の弁当を作って持っていくのですが、これはダメです。私にはわかります。

 私も昔、頼まれてもいないのに自分から好きな人のためにあれやこれや家政婦のようにお世話して、失敗したことがあります。

 ドラマ見ながら、「そんなに尽くしたらダメだよ!「宋運輝と釣り合うように、ちゃんと勉強して!」と何度心のなかで叫んだことか。

 スペックの高い人と上手くいきたかったら、自分もスペック高くなれるように努力しなければならないということがよくわかります。

雷东宝(写真左側)


 
復員兵復員後は、自分の村を豊かにするために、村の仲間たちと一緒に「小雷家」という名前でレンガ工場、電線工場、兎毛養殖、養魚、養豚など様々な事業を始める。
 宋运辉の姉、运萍と結婚するが、妊娠中の运萍を事故で亡くす。
 荒っぽくて学はない、が頭は切れる。妻运萍への愛がとても深い。

运萍への愛が深すぎて辛い

 見た目も荒っぽいし、起業家として頭も切れるのに、運萍の前ではデレデレなのが彼の可愛いところ。ところが、運萍が亡くなって、部屋に引きこもってしまったり、立ち直ったあとも彼女のお墓の前で思い出して泣くシーンは見ていてとても可哀想になります。

村の貧しさに驚く


 东宝は、貧しい村を豊かにするために奮起しますが、当時本当にそういう人が何人もいたのだろうなあと思います。

 村のセットもかなり作り込まれています。小雷家が発展するまでは、家も着ている服もみんなボロボロです。夜になると、豆電球にちょっと毛が生えたような明かりしかありません。大正時代?と思いました。しかし、よく考えたら1970年代です。日本だったら、もっと明るい電灯があったはず、と思いました。つまり、それだけ文化大革命の時期に何も生産していなかったし、発展もなかったということなのでしょう。

 ちなみに、運萍との結婚式では、花嫁衣装らしきものは赤いジャケットと赤いハイヒールだけでした。これは、この時代あるあるのようです。私の義理の両親の結婚式もそんな感じだったそうです。(『大江大河』の主人公たちは、義理の両親たちと同世代のようです)

杨巡(写真右側)


 
文革時に宋运辉と兄弟のように一緒に暮らしていたことがある。
 弟や妹を学校へ行かせるために。十代半ばから働き、失敗や成功を繰り返して最終的には起業家になる。

三人のなかで一番応援したくなる人物

 貧しいので進学を諦め、家族を助けるために一生懸命働く姿は応援したくなります。
 口達者なので、自分は商売に向いていると言ってあちこちで商売を始めますが、すんなり上手くはいきません。いろんな所からお金を借りたり、人に騙されたり騙したりしながらいろいろなことを試みます。
 彼のいいところは、笑顔を絶やさず、人に弱みを見せないところです。そして、学がないなりに努力している(これ、生徒だったら絶対に応援したくなります)。

 はじめは住む場所がなくて、商売道具を保管している倉庫の中で寝起きしています。そして、移動手段はリヤカーに自転車をくっつけたようなもの。
 少し前の中国って、こういう人がたくさんいたような気がします。きっと当時こうやって頑張ってきた人たちが、今成功しているんだろうなあと思ったりします。

中国の改革解放政策が具体的にわかる

 とにかく改革解放政策の中で、人々がどうやって生きたかがわかる作品だと思います。

 それにしても、文革後は想像する以上に貧しかったのだなあと思います。

 中国時代劇を見ていると、脚色はあると思いますが、みんな小綺麗で、衣装は綺麗だったのに、近代になってなぜこんなに貧乏になったのかと思ってしまいます。(もしかしたら、華流時代劇って小綺麗に演出しすぎなのでは…?)

 一昔前の中国といえば、ザ・発展途上国といった感じで、自転車に乗ってる人で道は大渋滞するし、街の中はごちゃごちゃしてるし、怪しい出店は多いし…という混沌とした印象がありますが、まさにあの時代が舞台なのだとわかります。
 
 そんな時代にコツコツひたむきに勉強する苦学生は宋运辉であり、田舎の工場を仕切るおじさんは雷东宝であり、リアカーを引きながら商売をしている若者は杨巡だったのだなあと思います。

 発展する中国を支えてきた人々を代表するかのような三人の物語といった感じです。

 第二部、第三部もあるので、配信が終わる前に見きろうと思います。

 



 


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