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『君、花海棠の紅にあらず』観終わりました
『君、花海棠の紅にあらず』を観終わりました。
年末から年明けにかけて、夫と一気見しました。李姉妹チャンネルで以前人気ランキングにランクインしていて、ずっと気になっていたので今回視聴できて大満足です。
あらすじ
1930年代の北平(今の北京)を舞台に、天才的な才能を持つ反面、頑固で子どもっぽい一面をもつ京劇役者・商細蕊と、北平一の豪商でありながら軍の司令官の義弟である・程鳳台との絆を描いた物語。財力と権力をもつ程鳳台が商細蕊の舞台に惚れ込み、財神(パトロン)となって様々な事件に巻き込まれていくといったもの。
登場人物がとにかく個性的
芸術家の話だからか、とにかく癖強な登場人物しかいないので、すぐに覚えられます。そして、悪役も含めて全員魅力的で、どこか憎めません。
そういえば、主人公の黄暁明は『琅琊榜〈弐〉〜風雲来る長林軍〜』の主人公のお兄さんもやっていたはず。「頼れる兄貴」的な役が多いのでしょうか。たしかに、そういう顔立ちしてるかも!
商細蕊を演じていた尹 正(イン・ジェン)という俳優さんは、あまりにも京劇の隈取りが似合っていたのではじめは京劇役者なのかと思いましたが、違うようです。歌手もやっているようなので、歌は上手そう(内モンゴル出身だし)。ヤマハに所属しているロードレーサーでもあるようです。
商細蕊の成長っぷりに感動
商細蕊は小さい頃から役者として育てられてきたので、役者以外の世界を殆ど知りません。そのせいか、非常に頑固で良く言えば純粋、悪く言えば世間知らず(子どもっぽい)な一面があります。
よって、はじめの頃は我を通し過ぎるあまり、周囲に敵を作っていることもありました。
しかし、程鳳台をはじめとして様々な人に出会い、友情や信頼、裏切りや悲しみ、苦難を乗り越え、人としてもかなり大きく成長していきます。ずっと許せなかった師姉を、最後は「憎いのは、(師姉ではなく)永遠の別れです」といって許す場面はとても胸熱です。
商細蕊の他にも、役者嫌いの程鳳台の妻・范湘児や、遊び好きのトラブルメーカーの義弟・范漣にも最後はちょっとした変化があります。主人公以外のキャラクターにもちょっとした成長が見られるのが、このドラマの面白いところだと思います。
商細蕊と程鳳台の絆が熱い
商細蕊と程鳳台はいわゆる芸術家とパトロンという関係です。しかし、ただの出資者芸術家という関係ではなく、お互いを信頼し合い、時には支え合い、まるで家族のような関係です。ドラマのなかで、お互いのことを「知音」と表現していましたが、まさにその通りです。
商細蕊は感情的で、突っ走ってしまうタイプの芸術家で、程鳳台は冷静で戦略的という、全く違うタイプの組み合わせです。しかし、根底には二人とも義理人情を大切にするという思いがあります。同じようなタイプよりも、このように正反対とも思えるタイプのほうが、案外仲良くなれるのかもしれません。この二人に至っては、お互いに自分がもっていないものを互いに補い、尊重しているようにも見えます。とても理想的な組み合わせです。
日本軍の描かれ方に、唸ってしまった
前半は京劇の世界や中国国内の内部争いで、後半は外敵・日本軍との戦いです。私は外国のドラマや映画で日本人が描かれるのを見ることはあまりありません(ラスト・サムライで一度見たくらい?)。だから、今回とても新鮮でした。
まず、日本語は不思議な日本語が多かったです。それはそれで興味深く、「中国ではそういう風に聞こえているんだな」とか「そんな風に解釈されているんだな」と思いながら見ていました。
日本語の使い方や発音はそれくらいでいいのですが、意外だったのが日本軍を完璧な悪者として描かなかったところです。
日本軍が北平へやってきて中国人をひどい目に逢わせているという話は、予想できましたけれど、一人だけ味方になってくれる人物が登場し、重要人物として活躍していました。さらに、商細蕊と程鳳台のやりとりでもこのようなものがありました。(うろ覚えですが、たしかこんな感じだったはず)
商「日本にもいいやつがいるんですね」
程「そんなに甘いものではない。戦争では、個人の考えは優先されないのだ」
どちらの国が良い、悪いという台詞を言わせていない辺りに、このドラマの脚本家の深みを感じました。
ただし、中国の「京劇」に対して日本は「歌舞伎」という考えが強すぎるせいか、日本人男性が化粧をして女性の着物を着、歌舞伎を披露して見せるというシーンがあります。
これだけは無理があるのではないかと思います。歌舞伎は歌舞伎の家の人か弟子入りした人がやるものなので、そう簡単にできるものではありません。
日本舞踊なら、お稽古として習っている人はいたと思いますが、いたとしても女性でしょう。男性が化粧して女の着物を着て人前で披露できる人がいたら、かなり奇異の目で見られたのではないでしょうか…。
中華民国の闇の部分がちらつく
以前も記事にしましたが、清の時代が終わってまだ十数年しか経っていない時代の話です。だから、みんないまだに西太后の話をするし、アヘンを吸っている人はいるし、商細蕊は文字も満足に読めないし、身売り制度はあるし、医者よりもまじない師を信じてる奥様いるし、という感じです。
日本はとっくに近代化しているのに、この辺りに中国が発展しきれていなかった闇の部分がちらついているような気がしました。
そして、後半になると共産党の話もチラッチラッと出てきます。ドラマを見ていると、「だから共産党への支持が集まったのか」となんとなくわかってきます。近代中国をもう一度勉強し直してみたいと思いました。
まとめ
話はとてもわかりやすいので個人的にはとても好きです。たぶん、今までいろいろな中国ドラマを見てきましたがこれが一番好きかもしれません。
主人公を中心とした人物が成長する点と、人間の心の機微を丁寧に描いているという点がこのドラマの魅力だと思います。「成長物語」というのは、物語を考える上では必要な要素ですけど、それがかなりわかりやすく、はっきり描かれているのがこのドラマをさらに面白くしていると思います。人間の心の機微を描くのは、中国ドラマはお得意なのではないでしょうか。
今までいろいろとドラマを見てきましたが、やはり物語の作りやパターンをちゃんと踏まえて作っているな、とわかるものはやっぱり面白いです!それプラス人間模様や時代考証となると、やっぱり無知なだけでは物語を紡ぐことは難しい。
一から設定を自由に作ることができるファンタジーの世界設定にしてしまうことのほうが、簡単かもしれません。
しかし、やはりたくさん勉強しないと、本当に面白い話は書けないなあと改めて思いました。