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今日のおすすめ/堀静香『がっこうはじごく』

今日のおすすめは、堀静香『がっこうはじごく』です。

こちらのタイトルは、フーコーの『監獄の誕生―監視と処罰』の哲学からきているようで、フーコーは、「学校は地獄、教室は監獄」と言っていたそうな…なんともぞわぞわします。

このフーコーの考えは、常に見られているという意識を植え付けられ自分自身で自発的に監視・服従するようになる、パノプティコンという建築構造の管理システムから生まれたものです。
学校の構造がパノプティコンのようになっていて、監獄のようなシステムを生み、こどもたちを服従させてるのではないか。
学校でなんとなく感じていた窮屈感は、自分が悪いのではなく、その構造に問題があるのでは…。
その構造に対して、冷ややかに鋭く突っ込んでいってくれているのが、こちらの本です。

とくに始まりの「あなたの話」が痛快。
よくある形式的な卒業生代表の挨拶に対して、「悲劇的につまらない」と指摘し、「あなたの話を聞かせてよ」と嘆いています。
著書の堀静香さんは歌人でもあり国語の中高非常勤講師をされています。言葉を使い表現する方だからこそ、わたしだったら特に気にもしない卒業生代表の挨拶に対して、どうしたらいいのか悩まれます。
堀静香さんが、生徒たちがどうしたら自分のことを話してくれるのか、考えてはじめられたのが、「今、ここで」でした。

「元は国語の研究会で知った実践で、とにかくいまここで、思っていること、考えていることを書くというもの。どんな些細なことでも、あるいはどんなに抽象的で、大きなことでもいい。学校のこと、家族のこと、勉強、部活、好 きなこと、嫌いなこと、悩んでいること、週末あったこと、とにかく何でもかまいません。書 いてくれたものを読むのはわたしだけ、名前は無記名でも本名でもペンネームでもいいです。それではゆっくり考えて、書いてみてください。 そう言って、B6の小さな用紙を配る。生徒たちは不思議そうな、けれど嫌なことが始まる のではなさそうだな、という表情をおおむねこちらに向けてくれる。配る用紙は、印刷室に置 かれた反故と決めている。まっさらな紙は使わない。少しでも書くハードルを下げたかった。」

堀静香『がっこうはじごく』p8より

生徒さんたちの書かれた文章が少し紹介されていたのですが、素晴らしいのです。やはり、こどもたちは輝くものを持っているのだなあと思うお話です。

学校は地獄、教室は監獄だけど、その中で自分自身の言葉を持ち、自由を獲得する力を得るために、どんな気づき方があるんだろう?こちらの本でたくさんのヒントを手にしていただきたいです。

(いわい)

#堀静香
#がっこうはじごく
#kimamabooks

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