下水があふれる!?
梅雨、台風、秋の長雨に、近頃は「線状降水帯」という言葉を耳にする機会も増えたように思いますが、都市部では集中豪雨によりマンホールから水が噴き出して浸水する内水氾濫が増えているようです。
河川の氾濫とは区別して、下水道(下水道扱いの小水路を含む)の水が溢れる現象は「内水氾濫」と呼ばれます。
都市化と道路の舗装、庭をコンクリで固めて駐車場などにする住宅の増加、さらに気候変動により集中豪雨が増えていることも手伝って、雨水が地中に浸透せずにいっきに下水に流れ込んで溢れる内水氾濫が増えているようです。
(冒頭画像は東京都下水道局Webサイトからの引用です)
浸水している道路等には近づかない
道路などが浸水している場合、下水道が「合流式」の地域では雨水のみならず汚水が混入していることもあります。感染症などのおそれもありますので、浸水している場所には不用意に近づかないようにしましょう。
気候変動を悪化させない
根本的な対策としては、まずもって気候変動を食い止め、豪雨を悪化させない必要があります。
各自治体では雨水貯留設備を設けるなどして、適応策も実施されています。でも気候変動を放置すれば対策費や被害はますます激甚化しますので、気候変動適応策のみならず緩和策にもしっかり取り組む必要があります。
また、都市部では下水道の整備方法が2種類あるので、自分の住んでいる地域がどちらの方式なのかを知っておきましょう。
「合流式」と「分流式」
都市部の下水道の整備方法(排除方式)には、「合流式」と「分流式」があります。
例えば東京都23区は、足立区・世田谷区・練馬区の各一部と臨海部を除いてほぼ合流式。
多摩地域では、中央本線沿線の立川以東が合流式、南多摩・西多摩は分流式です。
川崎市では、概ね中原区以南が合流式、高津区以北が分流式です。
住んでいる地域が「合流式」か「分流式」かは、【自治体名 下水 排除方式】などで検索すると出てきます。
下水が整備され始めた昭和中期には整備費用が安くて早い「合流式」でまず整備されました。しかし大雨が降るなどして処理場の能力を超える水量が流入すると、雨水混じりの汚水が処理されないまま川や海に放出される欠点があります。
近年は都市化に気候変動の影響も加わって豪雨が増えていることもあって、下水処理能力を大きく超え、下水処理場に行きつくより手前で溢れてしまうこともあり、そうなるとマンホールのフタ(大きい物は120kgくらいある)を押し破って内水氾濫が起こります。
こうした問題があるため、1970年に水質汚濁防止法等が整備され、以降に下水道が整備された地域では雨水と汚水を分ける「分流式」で整備されています。
下水道利用の注意点
新築住宅では専門の業者が適正に整備しているとは思いますが、改築時や普段の使い方に注意しましょう。
雨水を汚水管に流さない
「分流式」の地域では、屋根などに降った雨水の排水を下水管に接続するのはNG。雨水ますに接続するか、雨水浸透ますを設置しましょう。
洪水対策で、雨水浸透ますの設置に補助を出している自治体もあります。
雨水浸透ますに溜まったゴミを取り除く
すでに雨水浸透ますを設置済みの住宅等では、定期的な清掃(混入した落ち葉等のゴミを取り除く)を実施しましょう。
汚水を側溝や雨水管に流さない
道路などで洗車して洗剤混じりの汚水を側溝に流している人がいますが、川を汚すのでNG。洗車は専門の業者に出しましょう。
灯油や有機溶剤を下水に流さない
二輪車のチェーン等の洗浄に灯油などを使って下水に捨てるのもNG。産業廃棄物として適正に処理するか、生分解性の洗浄剤を使いましょう。
天ぷら油を下水に流さない
油の処理は負担が大きく、下水処理場で適正処理されずに川や海を汚す原因にもなります。販売店や自治体・町内会などで使用済み天ぷら油を回収している場合は回収に出しましょう。
近くに回収拠点が無い場合は、天ぷら油を固めてから燃えるごみとして処理するなど、適正に処理しましょう。
下水(汚水)は処理施設で高度処理されて、きれいな水に再生されてから放流されています。正しく処理できるようにしたいですね。