極私的2021年、年間ベスト映画ランキングTOP10
こんにちは。映画好きマーケター栗原健也です。
2021年も間もなく終わろうとしています。2021年はコロナの影響が根深く残り、まだまだ絶好調だった2019年ほどの観客は戻ってきてはいませんが、昨年に比べると多くの映画が公開し、徐々に映画産業が活気を取り戻してきた一年だったのではないでしょうか。
私自身もおかげさまで足繫く映画館に通わせてもらい、沢山の傑作に出会うことができました。今回は僭越ながら、2021年度に劇場公開された映画、もしくは配信開始された映画の中から、極私的なベスト10を選出し、ご紹介できればと思っています。
ぜひ年末年始ゆっくり休みながらお付き合いください。それでは行きましょう。
■第10位『ロード・オブ・カオス』
これ、自分も鑑賞後に調べて驚いたのですが、まさかの"ほぼ実話"です。
物凄く精神をすり減らす"地獄の青春映画"ですが、思想と音楽の影響力を描いた映画でもあります。
ブラックメタル興隆の立役者となったユーロニモスは、ある種の思想家として信者たちを煽動していくが、それが様々な解釈をされていくと、発端となった人物の手すらも離れて、思想のみが独り歩きしていく。そうした誰もコントロールできない"思想"が過激化すると、どんなに恐ろしいことが起こりうるのか。
思想がムーブメントを起こしうる音楽の力を借りてしまうと、かつての"We Are The World"のようにそれがポジティブに作用することもあれば、本作のように非常に危険になることもありますね。
生々しい自傷シーンや殺人シーンがあるので、それが大丈夫な人は必見です。
■第9位『ザ・スイッチ』
王道ホラージャンルを再構築してみせた「ハッピー・デス・デイ」のクリストファー・ランドン監督の面目躍如で、ホラーの王道を貫きつつも上手く崩しに行くバランス感覚が絶妙。
キャラクターたちも個性豊かで楽しいし、何よりもヴィンス・ヴォーンの可愛さが異次元(同じく主演の美少女、キャスリン・ニュートンを超えている)。
「入れ替わり」系のあるあるネタの差し込みが的確過ぎて、本作が今年一番劇場で爆笑した映画だったかもしれません。
ちゃんと怖さもあって、大笑いできる、まさに最高のエンターテインメントです。ホラーが苦手な人の入門編としてもオススメ。
■第8位『すばらしき世界』
まっすぐで不器用な”元犯罪者の男”を描いた映画です。あまりにも生きづらい……。
この人の生き様を見ていて感じたのは、自分を含めて、いわゆる”普通の人”って、平和な暮らしを維持してくために、日々何か大切な感情を殺しながら生きているんじゃないかなということ。
その事実にすら気が付かないくらいに、どこか少し、我々の方が歪んでしまっているのではないか、とも。
それでもなお、「世界は素晴らしい」と言い切れるのか。強く試されているような映画でした。
■第7位『プロミシング・ヤング・ウーマン』
今まで当然のごとく行われてきた男の”罪”を痛烈に告発した映画です。
「ジェンダー差別だなんて、しているわけがない」、そうリベラルぶっていた自分がいかに甘いのかを思い知らされました。
「これくらいなら大丈夫だろう」という浅はかな言葉・行動が誰かを傷つけ、そしてこうした浅はかさがエスカレートした果てに悲劇が起きる。
上記のような重々しいテーマを、ポップに毒々しく、そして何よりもカッコよく、エンタメ性を担保しながら作り上げているのが非常に上手いです。
誰もが自分の言動を内省する、その行動変容を促すレベルにパワーのある作品。
■第6位『孤狼の血 LEVEL2』
血沸き肉躍る”悪者たちのアベンジャーズ”。
往年の任侠映画を復刻した前作から、さらにエンタメ要素が加わり、現代の観客に向けてアップデートがされているのがポイント。特に"猟奇性"が凄かったですね。そしてそれを一手に担う鈴木亮平の熱演……。
虐待や貧困、在日問題など、様々な方面から物語に厚みが加わっていたのも良かったですね。
悪いやつらが怒鳴り散らして、殴り合って、撃ち合って、殺しあって…、という展開に、なぜかアドレナリンがドバドバ溢れて止まらない。こってり濃厚な中毒性のある映画です。
■第5位『ノマドランド』
「ホームレスじゃなくて、ハウスレス」
”Home”って、場所に限らず、人であったりモノであったり、きっとその人にとって一番拠り所になる存在を表現する概念なんだと思います。ファーンにとっては、愛する夫との記憶が残る、あのキャンピングカーがそれであって……
その”Home”にしがみつくことは弱さかもしれないけれど、喪失感や孤独を抱えながら、その”Home”と共に生きていくことも良いじゃないかと、様々な人生を肯定するようなテーマ性に凄く感動しました。
寒空の下、荒涼とした大地の元で、押しつけがましくない優しさが、ぽかぽかと温かい、そんな映画です。
■第4位『エターナルズ』
5位の『ノマドランド』と同じく、クロエ・ジャオ監督の映画です。
この監督が描き続けている「人間賛歌」的テーマと、エターナルズたちの物語が見事に重なり、個人的にはMCU(Marvel Cinematic Universe)で最もエモーショナルな作品でした。
何かに宿命づけられた人生なんてものはなくて、愛する人のために人生を選択することができるのが人間の強さ。人間を庇護する立場のエターナルズが、人間たちの強さに感化されていく過程が感動的です。
そうして”セレスティアル”という神のような存在に与えられた宿命から、エターナルズたちが逃れ、自らの人生を輝かせて行こうとする物語です。
ある程度ストーリーや設定は独立しているので、MCUを追えてない人にもオススメの作品です。
■第3位『空白』
現実でも実際にどこかで起きていそうな、生々しさのある傑作。
この映画のテーマは、相手の話を聞こうとしない、相手の意思を無視する、自分の言いたいことだけを言う、自分の主張を曲げようとしない、といった”一方的なコミュニケーションの怖さ”だと思います。
劇中ではある程度誇張されて描かれていますが、現実の我々も知らず知らずのうちに一方的なコミュニケーションを行い、誰かを追い詰めてしまっているかもしれません。
こうした負の連鎖を断ち切ることができるのは、”赦し”であると、言葉にすれば当たり前ですが、物凄い説得力をもって迫ってくるのが本作です。
本当にずっしりと心に刺さる映画なので、まだ観てない方は体力のある時にぜひご覧ください。
■第2位『マリグナント 狂暴な悪夢』
現代のホラー帝王、ジェームズ・ワンが原点回帰した傑作ホラーエンターテインメント。
ホラーって聞いてどんな映画を思い浮かべますでしょうか?最近はホラー内でも本当にいろいろなジャンルがあって、特にここ10年くらいは「ミッドサマー」みたいな、アーティスティックで”考えさせられる”ような作品が増えてきたなと思います。
それももちろん面白いのですが……、お化け屋敷に人生の教訓を得ようとして入りますか??ただ怖がりに行きませんか??
といった形で、この映画には本当に深いテーマ性なんてものはありません。ただ怖くて、びっくりして、わくわくして、超興奮して、とにかくとにかく楽しい。ホラー映画が元来持つ”恐怖の喜び”を思い出させてくれる映画です。
ジェットコースターのようなスリルを味わいたい方には超オススメのホラー映画です。圧倒的な面白さを保証します。
■第1位『ビーチ・バム まじめに不真面目』
「人生は楽しんだもの勝ち」
この主人公ムーンドッグの辿る道筋は、資産の差し押さえ、裁判、更生施設送り、指名手配etc…、とかなり文字に起こしていくと過酷なのですが、意外にもずっと軽快でふざけたトーンのコメディ映画なんです。
それはムーンドッグが、この状況をかき回し、自分自身で楽しくさせてしまうからに他なりません。
この人を見ていて思うのは、「人生って楽しくあるべきものだよな」ということです。
ごく当たり前のことのように思いますが、日々の生活に追われていると、何か人生が苦行のように思えてくる瞬間がありますよね(僕はたまにあります)。
ムーンドッグのように、人生の様々な場面を、自分が楽しいと思えるように捉えなおして、肯定してあげると、もっともっと”豊か”に生きていけるのかなーなんてことを思いました。
正確には「人生は楽しいと”思い込んだもの勝ち”」かもしれません。
凄く多幸感に満ち溢れ、明日も頑張ろうと思える映画なので、もしかしたら新年一発目に観ると最高かもしれません!
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長々とここまで読んでいただきありがとうございました。
今年も映画のおかげで自分の価値観が育んだり、色々な登場人物に出会って成長できたりと、本当に映画は「人生にポジティブな影響を与えてくれる」ということを再確認できました。
来年もたくさんの映画を観られること、そしてそれによって自分の人生がさらに豊かになることが、楽しみで楽しみで仕方がありません。
それでは良いお年をお過ごしください!来年もよろしくお願い致します。