Netflix『浅草キッド』の「世界観拡張マーケティング」
こんにちは。モダンエイジで映画マーケティングを研究している栗原です。
年末年始の長期休暇、いかがお過ごしだったでしょうか?私はほとんど家でダラダラしながら、映画を観て過ごしていました(笑)
そんな年末年始の休暇中、最も多く観られた映画の一つが、Netflixオリジナル映画『浅草キッド』でしょう。
ビートたけしさんの自叙伝「浅草キッド」を原作に、柳楽優弥さんが若き日のタケシ役、大泉洋さんがその師匠となる深見千三郎を演じ、ビートたけしさんの原点に迫りながら、「師弟愛/継承」や「夢を追うことの尊さ」をテーマに描いた作品でした。監督は劇団ひとりさんですね。
本作は、2021年12月9日の配信開始時点から、1か月近く経った現在(1月8日)まで、Netflixの人気映画でTOP10に入り続けるなど多くのユーザーに視聴されています。さらには様々な芸人たちからも絶賛の声が上がっているなど、多方面から注目を集め、「2020年を代表する作品の一本となった」、と言っても過言ではないでしょう。
そんな『浅草キッド』を語るうえで欠かせない要素が、「世界観」の構築です。舞台は昭和40年代の浅草ですが、主要な舞台となる「浅草フランス座」をはじめとした当時の浅草六区周辺の「世界観」が瑞々しく再現されており、それだけでも見応え抜群でした。
本作(Netflix)はこの劇中の「昭和の世界観」を「拡張」した素晴らしいプロモーションを行っていたので、今回はそうした事例をご紹介していければと思います。
■現実世界に「昭和の世界観」を拡張したプロモーション
〇主要路線トレインジャック
まず見ていきたいのがこちらの事例です。
12月1日から、東京メトロ銀座線やJR山手線の車両内を、『浅草キッド』の広告で埋め尽くしたトレインジャックが順次行われていました。
特に銀座線は圧巻で、「壊れた家電は叩いて直す」、「給料は手渡し」、「借金してでも後輩におごる」など、『浅草キッド』×昭和のあるあるを表現したフレーズを宙づり広告を一面に掲載しています。
銀座線の元々のレトロな内装も相まって、昭和の熱気がありありと伝わってくるプロモーションだと思います。
〇「浅草フランス座」の再現@渋谷
続いては渋谷の中心部、スクランブル交差点付近のビル(ZeroBase渋谷)に、本作の主要な舞台となる「浅草フランス座」が外観が再現されたプロモーションです。こちらはなんと10m超の書割とのこと、、!(凄すぎますね、、)
中にも入れるようになっていて、そこでは「カラーテレビ」や「ロケット鉛筆」など、『浅草キッド』×昭和40年代にちなんだ景品が当たる福引イベントが開催されています。
実は私も期間中にお邪魔させていただいたのですが、外観はもちろんのこと、スタッフさんの服装や、内部の紅白幕に至るまで、「昭和の世界観」構築が細部まで徹底されており、まさに昭和にタイムスリップをしたかのような感覚を味わいました。
トレインジャックも、「浅草フランス座」の再現のいずれも、『浅草キッド』の舞台となる「昭和の世界観」を、見事に現代の現実世界に「拡張」したプロモーション事例だったと思います。これらに遭遇したり、実際に体験したりして、「昭和の世界観」を味わってしまったら、その世界観が見事に構築されている映画本編を観たくなってしまうのは必然ですよね。
■仮想現実に「昭和の世界観」を拡張したプロモーション
『浅草キッド』の世界観の拡張は現実世界にとどまりません。仮想現実(メタバース)にまで、その世界観を「拡張」しています。
こちらはファッションブランドのBEAMSが例年開催している、メタバース内でショッピングができる「バーチャルマーケット2021」と『浅草キッド』がコラボレーションし、メタバース上に昭和40年代の浅草が再現された「バーチャル浅草」のプロモーションです。
タケシたちが活躍した「浅草フランス座」でタップダンスができるなんて、非常に胸熱ですよね!
上記のように『浅草キッド』の要素が満載で、一度VRゴーグルを装着すれば、『浅草キッド』が映画で構築してきた「昭和の世界観」に文字通りダイブし、どっぷりと浸かることができます。
現実世界では、どうしても場所の制限やお金の制限があり、世界観の拡張はハードルが高くなってしまう場合も大いにあると思います(ビル一面をジャックするなんて中々できないですよね)。そんな中、近年急速に発展しているメタバースは、こうした制限がある程度取り払われているので、より「世界観の拡張」にチャレンジがしやすいかもしれません。
■「世界観拡張マーケティング」
以上、『浅草キッド』の「昭和の世界観」を拡張したプロモーション事例を見てきました。
最近は80年代リバイバルが流行っていたりと、何かと過去を現代に蘇らせるような作品が増えていますが、それはその時代(「世界観」)を実際に生きてきた人にとっては深い郷愁にもなるし、まだその時代に生まれていなかった若い世代にとっては、現代とはギャップがある新鮮な世界として映ります。
通常であれば作品の「世界観」によってもたらされる感情は、「余韻」として鑑賞後に残るものですが、作品の世界観をプロモーションによって「拡張」し、観客のそうした感情を鑑賞前に揺り動かすことができたなら、観客の「観たい」という意欲を、効果的に高めることができるのではないでしょうか。
『浅草キッド』のように過去を蘇らせた作品だけでなく、ファンタジーやSFなど、「世界観」が前面に出てくる映画作品であれば、こうした「世界観拡張マーケティング」が有効な可能性があるかと存じます。
前述したメタバースの発展も踏まえると、こうしたプロモーション手法が今後もっとメジャーになってくることがあるかもしれませんね。何かの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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