『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が改めて教えてくれるマーケティングメッセージの重要性
こんにちは。モダンエイジの映画大好きマーケター栗原です。
先日遂にマット・リーブス監督×ロバート・パティンソンによるバットマンリブート、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が公開されました。
公開初週土日の興行収入は2億47,00万円、動員ランキング初登場3位と、バットマンの映画作品としてはパッとしない出だしにはなっていますが、評価の面では大健闘しています。映画レビューサイト、Yahoo!映画における評価は3.9(5段階)、Filmarksにおける評価は4.0(5段階)といった形で、非常に高評価を得ているのです(3/18現在)。
私自身、首をながーーくして公開を待ちわびていたのですが、公開が近づき国内でもマーケティングが展開されるにつれ、ある不安をずっと抱えながら劇場へ足を運びました。
今回はその不安と、それが実際に本編を観てみてどうなったのか、について書いていきたいと思います。
■『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はミステリー??
「ある不安」とはズバリ、マーケティングメッセージからもたらされたものでした。というのも本作が「ミステリー要素」を前面に押し出し、あらゆるチャネルで訴求をしていたからです。
「世界の《嘘》を暴け。本性を見抜け。」といったキャッチコピーや、印象的に「?」があしらわれたキービジュアル、予告編でも「謎」や「隠された」などのフレーズが多用され、ミステリー要素が徹底して押し出されていました。
〇予告編
〇キービジュアル
本当に失礼なお話なのですが、私は「バットマンがミステリー?そんなはずがないだろう」と思っていました。
私がリアルタイムで追ってきたバットマンは、世代的にクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』シリーズなのですが、そのイメージに引っ張られているのもあり、バットマンといえば社会性を効果的に盛り込んだ「アクション映画」という印象を持っていました。また単独作こそないものの、ザック・スナイダー(ジョス・ウェドン)監督が描くバットマンも、「王道ヒーロー」という印象が強かったです。
そしてあの『猿の惑星』シリーズのリブートを手堅くまとめ上げたマット・リーブス監督が、バットマンという題材を使ってミステリーを撮るイメージが全然湧かなかったというのもあります。(結構私のような方も多かったのではないかなと想像しています)
マーケティングメッセージと映画の本編の乖離が大きいと起こる可能性が高いのが、ネガティブなクチコミの誘発です。
2月に公開された『大怪獣のあとしまつ』では、ネガティブなクチコミが盛り上がり、不幸な形でTwitterのトレンド入りをするという事態に見舞われました。私の見解では、この現象は、怪獣映画や特撮映画を押し出したマーケティングメッセージと、コメディ要素の強い映画本編のギャップがあまりにも大きかったためだと考えています。
〇『大怪獣のあとしまつ』について書いた記事はこちら
もし本作『THE BATMAN-ザ・バットマン-』がミステリー要素をマーケティングメッセージとして打ち出しているにも関わらず、私の想像するように、映画の本編が大きく異なるものだったら、『大怪獣のあとしまつ』の二の舞となり、ミステリーを期待していた観客からのネガティブなクチコミが盛り上がってしまうのでは、という不安があったのです。
■『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は本当にミステリー映画だった!!
そんな不安は、本編を鑑賞し、一気に吹き飛びました。
上のツイートにも書いていますが、本作はあのデヴィッド・フィンチャー監督の傑作『セブン』や『ゾディアック』を彷彿とさせるような、れっきとしたミステリー映画だったのです。(重ね重ね失礼をお詫びします)
猟奇的な連続殺人を繰り返すソシオパスであるリドラーを中心に、バットマンへ送られる暗号をもとに真相に近づいていく展開。陰鬱としたムードに赤と黒を基調とした映像美、効果的に用いられるニルヴァーナの”Something In The Way”、爽快感のない生々しいアクション。すべてがミステリーという主軸のもと収斂され、一本の作品としてまとまっている大傑作でした。
鑑賞前に抱えていた不安は本当に杞憂で、蓋を開けてみればマーケティングメッセージと本編がしっかりと「ミステリー」として統一されていました。
■改めて本編×マーケティングメッセージを考えることは大事だなと
前述したように、バットマンは過去にマスターピースが数多く生まれているからこそ、過去作のイメージに引っ張られている人も多いように思います。
本作『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は完全に新機軸。ガッツリとミステリー映画なので、逆に過去のバットマンの印象を鑑賞前に抱かれてしまうと、それこそギャップが大きくなり、「こんなのバットマンじゃない」と、ネガティブにクチこまれてしまうリスクが大きかったのですね。
本作『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は、マーケティングメッセージの中で、本気で「ミステリー要素」を押し出していたこと、それによって「これは今までとは違うバットマンなのかも?」と観客が事前理解を持つことができていたこと。ここが大きなポイントでした。
マーケティングメッセージによって、観客の期待値と本編の内容を上手く接続することができていたということですね。
これが、かなり攻めた内容にも関わらず、ここまで本作が高評価なクチコミを獲得できている大きな要因なのではないかと考えています。
人を選ぶ作風と昨今の洋画離れの傾向もあり、ノーラン版ほどは伸びないかとは思いますが、このクチコミはじわじわと効き、これからも動員・興収は順当に伸びていくのではと思います。
■蛇足かもしれませんが最後に
最後に、大変恐縮ですが、もう一度『大怪獣のあとしまつ』を引き合いに出させていただきます。つい最近もプチ炎上していました。
記事を読むと、「様々な要素が”伝わらなかった”」として、正直この書き方だと、それは「理解できない観客の方に理由があったのだ」と言っているように捉えられかねません。(※この記事の切り取り方に悪意があることは重々承知です)
ただマーケティングで、「伝える」努力は適切だったのか、それをもう少し考える余地があるのかなと思います。
映画は実際に本編を観てみるまで、どんな映画なのかはわかりません。だから観客の事前の期待値と、鑑賞した際の琴線をブリッジをするために、マーケティングがあるのだと思っています。
本編×マーケティングメッセージによって、観客と映画との幸福な出会いを作り、積極的にクチこんでもらえるような導線を作ること。これが改めて大切なのだということを、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』に教わりました。
ちなみに余談ですが、私が一番好きなバットマン映画は、ジョエル・シューマカー監督の『バットマン フォーエヴァー』です。このポップさが非常に癖になります。(いやさすがにジム・キャリーとポール・ダノで、リドラーの演じ方がここまで違うのはびっくりですが、、w)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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