2022/11/12(土) ちょっと一回ほどけよう
衣装を合わせる日。髪の毛や下着についても細かな意見が交わされる。この日も、いい風が入ってくるとても日差しの気持ちいい稽古場だった。
インスタレーションではなく今回はパフォーマンスなので、「見た感」を出さないといけない。それは私のしごとなのかなと思う。と中屋敷南さんが言っていた。
話を単純化してしまうようだが、なんとなく稽古を見ながら「見た感とは、その一つが動作の初速なのかもしれない」ということを思って言ってみた。初速の速い動きは、等速のゆっくりな動きよりも、ダンス感がある。つまりおそらく、注目して見てしまうし刺激が強いのだ。今日はその刺激の波形を調整するような作業が多く見られた。
そして休憩中、実験をまだまだ続けているような稽古場の平和な空気の中、振付感について彼女について聞いたところ、「今までは、一度振付を作り切ってしまって、こうトップダウンで私のコピーを沢山つくる感じだった。だけど、今はみんなでやってみて色んなことが起きていてそれをピックアップする感じ」と。
以前に、ワークショップに参加した時も「振付ってこう踊るっていうのが明確に決められてしまう、ある意味暴力的なものだけど(云々)」ということも言っていた人なので、振付とルールを持って即興的に動くことの境界に敏感なんだろうなと想像する。私も入らせてもらって即興の実験をやったり、やっていることの軸は全くぶれていないが、まだまだ構成は変化していきそうだ。
「ちょっと一回ほどけよう」
今日はこの言葉を何回も聞く。そしてちょっと笑ってしまう。普段あまりに言わない言葉だけど、稽古をしていると3人で常に触れていたり絡まり合っている状況に対して、とても適切な言葉だから尚更。
改めて、とてもむぎゅっとしていて立体感のある身体の塊が蠢いていて面白い瞬間が沢山ある。翻って、バレエとか、ダンスって呼んでいるものって、本当に平面的であり絵画的なんだなと思った。
この様相をそのまま舞台に乗せても面白くないし、真俯瞰の視点もリアルタイムで楽しめる作品だからこそ、こういった身体の使い方が映える作品となっていて、まさに鶏たまご。
「皮膚が浮き出てくるんですよね、南さんの作品って。視覚とかに頼っちゃいけないんだろうなって、稽古を重ねるとようやく掴めるような、触覚をメインにした感覚ができてくるんですけど、慣れるのが大変で。他のダンス作品出演の時には全くない感覚です」と帰り道にダンサーが内観を教えてくれた。