![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/174796584/rectangle_large_type_2_d3481d9a59506d92f0da2ef220206055.png?width=1200)
スパイになりたい!憧れに火がついたドラマと名台詞①【憂世草子デジタル】
探偵になろうと思ったことがある。
先日、コピー室で雑談していたときのことだ。
サボっている後ろめたさからサーバーにへばりついていると、同僚が「何してんの?」と不審がった。
「サボってるのバレないようにね。ここ、監視カメラの死角だから。わたし、スパイに憧れて探偵を目指してたこともあるし、こういうの得意なの!」と答えると、「ちょっともう色々おかしい」と笑われた。
なぜ笑うのか。
誰もが一度はスパイや探偵に憧れたことがあるはずだ。
わたしは無職のとき「探偵 求人」と検索して、研修も充実している某探偵事務所に応募しようとした。
さすがにスパイの求人はないだろうと現実的に考えて探偵にしたのだ。
しかし、注意散漫な性格、極端に暑さに弱い身体、おなかを下しやすい体質等を考慮すると尾行など到底できないと的確な判断を下し諦めた。
同僚は「絶対向いてないと思う。たぶんすぐバレるよ」と断言した。
心外である。
わたしは数々の海外ドラマを見まくっているため、知識もあるしイメージトレーニングもばっちりだ。
強い精神力と肉体、大腸及び膀胱さえ手に入れば国際的なスパイになれるだろう。
今日から数回、そんなわたしがドはまりしたスパイドラマについて語ろうと思う。
興奮しすぎてネタバレする可能性もあるため、ネタバレされたくねぇ!という方はそっと閉じていただきたい。
あらすじ
『CHUCK』は2007年から放送され、シーズン5まで続いたスパイドラマである。
家電量販店バイ・モアのPCサポートチーム(通称・オタク軍団)でアルバイトをしているチャック・バトウスキー(ザッカリー・リーヴァイ)の脳にひょんなことから国家機密がダウンロードされ、CIAエージェントのサラ・ウォーカー(イヴォンヌ・ストラホフスキー)とNSAエージェントのジョン・ケイシー(アダム・ボールドウィン)が人間国家機密となってしまったチャックを護衛することからストーリーが始まる。
チャックはバイ・モアでアルバイトを続けながら、脳にダウンロードされた機密データが蘇るとサラやケイシーとともに国家の危機に立ち向かう。
最初はただの軟弱なオタクなのだが、スタンフォード大卒の頭脳と持ち前の機転で数々の修羅場をくぐり抜けるうちに、スパイとしての才能が開花していく。
本格スパイ・アクション…だけど!?
先が読めないストーリーと見応えのあるアクションという本格スパイドラマなのだが、主人公がヘタレのオタクというギャップとコメディ要素満載のセリフがたまらない。
オタクの日常を描く『ビッグバン★セオリー』が大好きなわたしは、開始1分で夢中になった。
『ビッグバン★セオリー』のキャラクターたちもアニメやSF作品、ゲームをこよなく愛し、クリンゴン語を操る。
チャックと親友のモーガン・グライムス(ジョシュア・ゴメス)もコール・オブ・デューティなどのゲームに命を懸けるオタクで、チャックはクリンゴン語も話せる。
また、モーガンがチャックの部屋の窓から勝手に侵入するのが当たり前になっている関係性もお気に入りである。
誰一人まともな人間がいない
このドラマの愛すべきところは、登場人物にまともな人間が一人も存在しないところである。
CIAやNSAという国家機関の職員も、医師であるチャックの姉エリー・バトウスキー(サラ・ランカスター)と同じく医師であるその恋人デヴォン・ウッドコム(ライアン・マクパートリン)など高学歴で立派な職に就いている人間さえ皆おしなべてイカれている。
特にチャックが働いている家電量販店バイ・モアのスタッフたちのぶっ飛び具合は筆舌に尽くしがたい。
チャックと親友のモーガンはさることながら、オタク軍団のジェフ・バーンズ(スコット・クリンスキー)、レスター・パテル(ニク・サハイ)、アンナ・ウー(ジュリア・リン)など、クセ強キャラが勢ぞろいである。
アンナは昼休憩の順番が気に入らないと言って上司を暗殺しようとし、モーガンは勤務中に倉庫の金網の中でケージファイトを開催、ジェフはトゥインキ―を3分以内に90個食べようとし、ジェフとレスターは勤務中に店内でサバゲーで対戦など、もうめちゃくちゃである。
スパイドラマらしく、彼らがバイ・モアを無人爆撃機で攻撃しようとしたり、CIAエージェントたちを完璧に尾行したり、とんでもねぇスキルを披露するのも面白い。
数々の会社に適応できなかったわたしも、バイ・モアでなら働けそう、と思うほどである。
細かすぎて伝わらないこだわり
わたしは作品によって字幕・吹き替えどちらで見るか変えるタイプなのだが、本作は吹き替えのアドリブというか日本語特有の細かい表現が気に入って吹き替えで見ていた。
特に、ケイシーを演じる山野井仁さんとモーガンを演じる粟野志門さんの吹き替えが秀逸である。
山野井さんの唸り声とがなり声、モーガンを「ひげポックル」という独特のあだ名で呼ぶところはよりケイシーらしく、粟野さんの個性的な声はモーガンにぴったりなのだ。
また、サラの元カレで超優秀なCIAエージェントのブライス・ラーキンを演じるのはマット・ボマーである。
彼はわたしの大好きなドラマのひとつである『ホワイトカラー』の主人公ニール・キャフリーも演じている。
ニールは知能犯のためアクションはほぼなかったが、本作品ではアクション満載でワクワクした。
ファイナルシーズンにはピーター・バーク役のティム・ディケイも登場し、ファンは大興奮しただろう。
わたしの心を射止めたセリフ
わたしにはドラマで気に入ったセリフを収集する癖があるのだが、本作で一番お気に入りのセリフはこちらである。
過去なんかどうでもいい。今の君を知ってるから。
――I don't care who you were. I know who you are.
過去の因縁から反逆罪に問われたケイシーをチャックとサラが助けようとするのだが、「君らも反逆罪になるぞ。本名も明かさなかった私のために」とケイシーが協力を拒んだときにチャックが放ったセリフだ。
以前、大人になってからの出会いのリスクについて別れた夫と話題になったことがある。
わたしたちは学生時代から付き合っていたため、借金などの相手に隠して結婚した場合トラブルになりそうな火種がないことを知っていた。
離婚後、もう失敗したくないわたしたちはこれから出会う相手をどう見極めればいいか悩んだ。
相手が過去の〝なにか〟を隠していた場合、どう見抜けばいいか?
しかし、よく考えたら過去に〝なにか〟なくてもわたしたちは離婚したのである。
ということは、相手の過去に〝なにか〟あったとしても結婚生活が続く可能性だってある。
失敗した過去があるからこそ、今のその人があるのだし。
チャックのこのセリフは、相手の人生に100点を求めてしまう完璧主義のわたしに「過去に拘らず、その人の今の姿をしっかり見なさい」と教えてくれたのだ。
今の姿をしっかり見ていたはずが、彼女の存在を隠している男に引っかかるというスパイ失格の失態を演じてしまったのは、また別の話である。