PJW20 炎の子供たち
出入り口のない産小屋(うぶごや)を建てた、木花開耶姫(このはなのさくやひめ)(以下、サクヤ)。
一体、どうするつもりなのか、固唾を飲んで見守る瓊瓊杵尊(ににぎ・のみこと)(以下、ニニギ)
すると「サクヤ」は、中に籠って火を放ち、燃え盛る炎の中で出産を始めた。
ニニギ「なっ!? 正気かっ?!」
サクヤ「これではっきりするでしょ!」
火が盛んに燃え立つとき、第一子が誕生。
サクヤ「燃え立つときに生まれたから、火照命(ほでり・のみこと)よ!」
火が弱くなったとき、第二子が誕生。
サクヤ「火が弱くなったときに生まれたから、火須勢理命(ほすせり・のみこと)よ!」
火が消えたとき、第三子が誕生。
サクヤ「火が消えたときに生まれたから、火遠理命(ほおり・のみこと)よ!」
こうして「サクヤ」は自らの貞操を証明したのであった。
ニニギ「サクヤ・・・すまなかった。そして、よく分かった。汝(いまし:あなたの意)が安産と火消しの神となっている理由が、これでよく分かったぞ!」
サクヤ「それだけじゃないわ。富士山の頂上から、桜の花びらをまいて、国中に桜を広めたという伝説から、桜の神にもなってるのよ!」
ニニギ「ところでサクヤよ。『古事記(こじき)』と『日本書紀(にほんしょき)』では、子供の名前が違うぞ。」
サクヤ「仕方ないわね。下記をごらんください。」
『古事記』
第一子:火照命
第二子:火須勢理命
第三子:火遠理命
『日本書紀』
第一子:火闌降命(ほすそり・のみこと)
第二子:彦火火出見尊(ひこほほでみ・のみこと)
第三子:火明命(ほあかり・のみこと)
ニニギ「どうする? サクヤよ?」
サクヤ「なに情けないこと言ってるのよっ! あんた、父親でしょ!? あんたが決めなさいっ!」
ニニギ「い・・・いや、我というか・・・作者が決めることで・・・。」
サクヤ「さっさと決めなさい!」
ニニギ「よし『古事記』の方を採用する!」
こうして、三兄弟(三つ子)が生まれたのであった。
いつしか時は流れ「ニニギ」も「サクヤ」も鬼籍に入り、子供たちの時代となった。
スクスクと成長した子供たち。
そのうち、第一子の火照命(ほでり・のみこと)は、海で魚を釣って暮らしたので「海幸彦(うみさちひこ)」と呼ばれるようになった。
今後は「ウーミン」と呼びたい。
また、第三子の火遠理命(ほおり・のみこと)は、山で獣を獲って暮らしたので「山幸彦(やまさちひこ)」と呼ばれるようになった。
今後は「ヤマピー」と呼びたい。
第二子の火須勢理命(ほすせり・のみこと)は、今後、一切登場しない。
名のみの登場という、なんとも可哀そうな神様なのであった。
次回、海幸彦(ウーミン)と山幸彦(ヤマピー)の物語となる。