航西日記(1)
著:渋沢栄一・杉浦譲
訳:大江志乃夫
慶応三年正月十一日(1867年2月15日)
朝七時、武蔵国久良岐郡横浜港より、フランス郵船アルへー号へ乗り組んだ。
送別の友人など、本船まで来た者も多く、ねんごろに、しばらくの別れを告げた。
この港に来住した、諸州の人々の帰省する者もあって、その人々も、しだいに乗り組み、九時に出港した。
これ、一万里外に壮遊する門出であった。
おりしも、天晴れ、風なぎ、海上は穏やかであり、伊豆七島も、うすもやの中に見て過ぎ、遠江、伊勢、志摩なども見えて、夜に入った。
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