
【本の紹介】対馬の海に沈む ~JAの闇と組織の弱さを描いたノンフィクション~
【あらすじ】
人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………?
職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。

○テーマは「JAの神様」の死が暴いた組織の闇と人間の弱さ
JA対馬の職員が22億円を超える横領を犯し、車もろとも海に飛び込む。
評判の良い人物は、借用口座と借名口座を使いまわし、偽の被害写真で共済金を引き出し、ロンダリングに明け暮れていた。無茶なノルマを達成するために自分や家族が保険に入る、いわゆる「自爆営業」を行う職員が後を絶たないようです。
責任は、主人公一人だけではなかった。
そこには、1000万人以上の組合員を抱えるJAグループという巨大組織が複雑に関わっていた、という内容です。
そして、共犯者はJA幹部、組織だけかと思いきや、実は…
2019年に起きた事件。わりと最近の事件です。
○JA共済の不祥事

○「自爆営業」と呼ばれる無理な目標達成の手法や、監査体制の脆弱さ、不正を許容してしまう組織文化
これって決してJAだけに限らず、古い体質の日本社会、空気に流される会社組織にも通じるところかと思います。
昨今の金融機関の不祥事、詐欺行為も同じ問題だと感じています。
組織内の不正と腐敗
組織内でのガバナンスの欠如や不正行為を許容する体質
自分さえ得すればいいや、少々のことはバレなければいいやという考え方
閉鎖的な村社会と同調圧力
地域社会の密接なつながりが、不正を見逃す原因となり、内部告発や透明性の確保が困難な風土
監査体制の脆弱性
内部監査やガバナンスの不備、不正行為を未然に防ぐ仕組みが未整備な組織
○感想
たった3万人の島、村社会、同調圧力、自分がそこにいた時、正しい判断が出来たのか?Noと言えたのか?
仕事への矜持、どう向き合えばいいのか、考えさせられる本でした。
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